第1章-13
父はいつもよりかなり遅く帰って来た
普段は日が暮れて間もなくという頃に帰ってくるが
今日はすっかり外が暗くなっていた
それに酷く疲れた様子だし
表情もさらに悪くなったように思える
そして忘れてはならないのが
「おかえり、お母さんは一緒じゃないの?」
そう
母の姿が見えないことだ
今朝は「連れて帰ってくる」と言って出て行ったが
まだ母は帰れない状況にあるのだろうか?
不思議な気持ちが段々と不安な気持ちに変わって来たころに父が
「ごめんな、お母さん連れて帰って来られなかった」
そう言って悲しそうな表情のままにっこり笑顔を作って頭を撫でて来た
何か訳があるんだろう
こういう時こそ実年齢離れした聞き分けの良さを発揮しないでどうする
「お母さん、早く帰って来られると良いね!」
見上げた父に出来る限りの笑顔を作って見せた
父は少し驚いたような顔をして
さっきよりは幾分かマシな表情で笑ってくれた
それから遅めの夕食を摂り
寝床に着くまではあまり時間がかからなかったが
俺はその間に思い出していた
母は一度帰ってきてなかったか?
俺がスキルの練習をしていて気絶する寸前
「ただいま」と言って家のドアを閉めた音を聞いた気がする
極度の集中状態に
聞き慣れたいつもの音や文言
いちいち頭に残っていなかったんだがそう言えばそうだった気がする
母は一度帰ってきて
俺の状態も確認せずにまた出て行ったんだろうか?
少し考え辛い
父が、俺が気絶している間に母と会ってるような感じではなかった
言質を取ったわけではないが
知らなそうな雰囲気であった
だとすれば帰って来たにも拘らず
すぐ出て行ったと考えるのが普通だ
あまり詳細には思い出せないが
ただいま、と言う声に焦りだったりの
急いでいる風な声色は含まれていなかったような気がするんだが
俺の勘違いでなければ母は一度帰っている
だから明日、父に一応聞いておこう
職場で母はその日、帰宅したのかを
いや
あえて話してないのか
俺に
そんなことは当然まず聞くはずだ
だから母はいつもの様に職場を定時に終わり
家に帰りついた
そしてその後が消息不明なのだ
父は今日
かなり疲れた様子だった
恐らくだが周辺を探して走り回っていたのではないだろうか?
暗くなってきてこれ以上の捜索はあまりにも効率が悪いし
俺も家でずっと待たせているから切り上げて帰って来た
そう考えるのが一番辻褄が合う
では母はどこへ行ったのだろうか?




