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5話 痴話喧嘩

 遅れました!!すみません!!

「天堂普!!」

「め、メネ!?」


 街中で大きな声を出して人の名前を呼んだら勿論ザワザワするに決まっている。エコバックの中からぽろっとメネのおやつが落っこちた。買い物終わりだということに気がついた普だったがそんなことどうでも良い。


「な、なんで街中に!?」

「そっちだってまさかこんなところにいるなんて思わないわよ!!」

「だからって大声で人の名前叫びますぅ!?」

「しょうがないでしょう!びっくりしたんだから!!」


 何メートルか距離の離れた喧嘩が街中で勃発した。周りの人たちはスマホのカメラを開いて、二人の様子を撮影し始めたが、これで一番迷惑なのは、どう考えても普といた友人だろう。


「ちょっと普!誰なんだよ、あの変な髪色の女!!」

「はぁ!?ちょっとそこのあんぽんたん青二才!どこが変ですってぇ!?言ってみなさいよ!!」

「んだよへんちくりん低身長女!!どこをみてどうあんぽんたんだってぇ?ほら、言ってみろよ!!」

「口が悪いわね!誰に向かってきいているのかしら!」

「口が悪いのはお互い様だろうが!!」


 さっきまで普と喧嘩をしていたのにいつの間にか喧嘩は普の友人VSメネになっていた。街中でスマホを構える人たちは面白くてたまらないのか、全く微動だにしない。友人がメネと喧嘩を始めて、普はオロオロと混乱している。


こんな時、ウォルがいたら・・・


 ふと、そう普が思う。

 そして、ここから図書館までそう遠くないことを思い出し、喧嘩を見ている輪からサッと抜け出して、メネの図書館に向かった。


 カランと勢いよく開かれた木造りのドア。その音にカウンターを掃除していたウォルが驚き、小さな箒を構える。


「ウォル!!」

「て、天堂普!?」


 急いでやってきた普は、ウォルに状況を隅から隅まで話した。普から話を聞いたウォルはプルプルと震え出し、怒った表情のまま、ぽんっと人間の姿に化けた。


 初めて見た普は驚いたが、ウォルの怖い表情を見て、すぐに喧嘩の輪へウォルを案内した。


 着いてみると、先ほどよりも大きな輪ができていて、遠くても二人の喧嘩の声が聞こえる。警察沙汰になるんじゃないかと普は心配だったが、そんな心配、ウォルの前では愚問だ。


 勇ましく輪の中に入っていったウォル。そんなウォルに気づく様子もなく、二人は喧嘩を続けていた。

 しかし、そんな喧嘩もすぐに収まる。怖い怖い、リスの神使によって。


「メネ!!」

「はいぃ!!」


 いつものことすぎて、いつも通りにメネが返事をする。メネを呼んだのが誰かのか、メネは返事をした後に気づくことになった。


「はっ・・・!うぉ、ウォルぅー・・・」


 怒った冷たい表情でメネを見つめてくるウォルにメネは体が震えた。まるで母親に叱られた子供のようだ。


「こぉんな街中で、何やってるの!!人様の迷惑かけるようなことはしないでって何度言えばわかるの!?」

「ご、ごめんなさい・・・」


 しおしおと縮こまるメネ。普の目にはやはりメネが神には見えなかった。しおしおの神とガミガミのリス。普はその異常っぷりに面白さを堪えることできず、大勢の人たちの中で声を出さずに大笑いをしていた。


 そして、その異常っぷりを見て唖然と立ち尽くしているのは、普の友人、椰子馬幸(やしば こう)だった。自分の友人が知る女子二人が彼女らを全く知らない自分の前で説教を始めたのだ。勿論のこと、意味がわからない。事情を聞こうにも、友人が大笑いしていて何も聞けない。


「それに!こんなにお菓子買って!!あなたも太るんだから!!健康第一!」

「ごめんなさい・・・」


 メネは集前の前で、ウォルにほぼ土下座の態勢を見せた。ウォルは一応、メネが反省しているとわかると、可愛いため息をついてくるっと幸の方に向かって歩いてきた。


 幸の前に来ると、ウォルは幸に頭を下げた。


「ウチの馬鹿がすみません。ご迷惑をおかけしました」

「あ・・・いやぁ・・・」


 小さな少女の顔が上がる。幸とウォルの目がバチっと合った。幸の三分の二くらいの身長で、頑張って見上げてくれている。その際から、幸はウォルから目が離せなくなっていた。


「ほら、メネ。帰るよ!」

「はーい」


 メネを立ち上がらせ、普と幸に一礼して、そそくさと二人で去っていった。それと同時に、周りで閲覧していた観衆達もスマホを見ながら帰っていった。


 しかし、幸だけは動かなかった。


「幸、どうしたの?帰ろうよ」


 普が幸の顔を覗き込む。すると、突如、幸が普の肩をガッと掴んで大声で言った。


「あまねっち!さっきのちっちゃい女子、誰だよ!!」

「えっ!?ウォルのこと?」

「やっぱ外国人か〜!なぁ、俺にも紹介しろよ!!」

「は!?」


 どうやら幸はウォルのことが気になるらしい。メネでは無く。この友人はメネに一切興味が無いらしい。こう思うと、メネがちょっと可哀想になってくる。


 しかし、幸のウォルへの深々な興味は異常である。これはもしや、興味という概念を超えているのかもしれない。


「な!いいだろ?な、な!!」

「うぐぅぅぅ・・・」


 大好きで大事な友人だ。友人のお願いを一切聞かないわけにはいかないが、少し、心配である。

 友人がロリコンになりそうで。



 暑い暑い友人の熱意に押され、普は仕方なく幸をメネの図書館まで案内することにした。



 

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