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4話 お使い

 久しぶりに書きました。めっちゃ忘れてます・・・

 普という男子高校生がやってきてから数日後、メネは図書館の本の整理をしていた。


「私は芸術の神様でもあるから美的センスも完璧なのよ!」

「はいはい。いいから早く整理してよ」

「じゃあウォルも手伝ってよ。人の姿になれるんだし」

「どうしてこうも貴方は私に頼りっぱなの?」


 仕方がないとため息をついたウォルはみるみるうちに可愛らしいリスの姿から中学生くらいの女の子に変身した。


「メネ、後でクルミくれるよね?」

「はーい、いくらでもあげますよ〜」


 そう言ってウォルは渋々クルミのためにメネの手伝いを始めた。


「あ、メネ!その本中国のでしょ!そっちは韓国!!」

「え?あ、ほんとだ・・・」

「まったく・・・」


 いつもメネの世話をしているようなものなのでウォルも疲れ気味だ。

 それに、メネは神様の力として本が整理しやすいような力を持っている。手に届かない本や大量の本を移動したりするときのために浮遊中が使える。どこにどんな本があって誰の作品かという情報も記憶力の良いメネはしっかり覚えているがどういうことかランとアートの日記のありかだけは覚えていないのだ。

 そんなメネとは裏腹にウォルは人間の姿になれるというだけの能力しか持っていない。メネに比べて本の整理は遅くなってしまう。


「ねぇ、メネ」

「なに?」

「あの男の子のことなんだけど・・・」

「普って子?」

「そう」


 突然やってきた人間の天堂普(てんどうあまね)。彼にメネが神であることとウォルが喋れることがバレてしまっている。それは結構やばいことなのだ。

 第一、神は敬われる存在であり、「私は神です」なんて言って、引かれるような存在では断じてない。頭はいいがどこか抜けているメネは簡単にいえば第ピンチなのである。


「もし、あの普君がメネと私のこと言いふらしてたらどうする?」

「どうするって?」

「いやだから・・・ほら、ここにいれなくなるでしょ?」

「うん、そうね。・・・それはまずいわ!!」


 突然理解したのか、メネが声を荒げた。広い広い図書館の端から端、上から下に跳ね返って響き渡るほどのうるさい声だ。ウォルは小さな手で耳を塞いだ。


「どどどどどうしよう!!ウォル〜!!日本にいられなくなったら今度こそ私、どこいけばいいのよ!!」

「知らないわよ!!あなたの責任でしょう!?私はメネの神使(しんし)なんだから!」

「ひどい!!」


 「神使」とは、神に仕える忠実に(しもべ)である。そして、忠実な僕であるからこそ、仕える神に逆らってはならない。ウォルだけではない。どんな神にも神使はいる。


 例えば、かの有名な「天照大御神」にも、使いがいたと言われている。その名も「八咫烏(やたがらす)」。天照はこの八咫烏を神武天皇(じんむてんのう)の道案内に遣わしたと記されている。

 日本外でいえば、「ヘルメース」が有名である。日本と違い、人の形をしており、神々の伝令使、ゼウスの使いと言われている。


 日本の神使は結構多く、有名なもので「大黒様のネズミ」や「天神様のうし」、「お稲荷さんのキツネ」、「弁才天のヘビ」など、数多くいる。つまり、神使というのは魔法界での「使い魔」などと呼ばれているものに値する。


「それにしてもどう〜しよぉ〜!!はっ!いっそ脅すか!?」

「こら、やめなさい」


 確かに、口止めに脅すのも一種の方法だが、神が自分の不手際を脅しで解決するなんて格好が悪いやありゃしない。


 二人は、考えてもしょうがないと諦め、考えることを諦めた。




 数時間が経ち、学生たちの下校ラッシュが慌ただしくスタートする時間帯となった。しかし、路地裏にいる二人には何の関係も無いことだった。


「ウォル〜、キャビア食べてみた〜い」

「贅沢ゆうな!」

「痛い!!」


 カ行の百科事典を顎を机に付けて開いているメネにサ行の百科事典で頭を叩いたウォルはご機嫌斜めである。その理由はクルミの在庫が切れていたからである。数日前に切らしていたのにメネは忘れていたのである。


「悪かったわよ、今から買いに行くから」


 リスの代名詞のようにぷっくりと頬を膨らませているウォルのご機嫌を取り返そうとクルミを買いにメネは立ち上がった。自分の部屋に行くと、日本のお金が入っている箱を取り出し鞄に入れて、買い物に出かけた。


(髪の色変えれないからあまり外を歩きたくなのよねぇ・・・)


 メネの髪の色はオレンジ色に近い色をしている。目も紫で日本人ぽくない。外国人でもいないだろうが。


 トコトコと一人で路地裏から出てスーパーへ向かう。行き交う日本人を見ながら真顔で通り過ぎていく。


(今の時代、なにが神様になってるのかわからないわね。お客様は神様だとか優しい人なだけで神だとか。あなたたちにとって、電子機器も神様なんでしょうが)


 イライラとしながら車の行き交う道を歩いていく。街行く人はチラチラとメネを見ては侵害お構いなしに写真を撮る。それにメネが気づかないわけがなかった。


(あの顔、覚えたわよ。またどこかで会ったらその機械、壊してあげるわ)


 この恐ろしい小さな女が神だなんて人々は思いもしないだろう。


 メネはすぐ近くのスーパーに入るとお菓子コーナーからいつものクルミを三袋とメネのおやつをカゴに入れ、あとは今日の夕飯の支度である。

 カゴをレジに出し、スーパーのカードなど持ってもいないのでお金だけ出してすぐにスーパーから出て行った。


「買いすぎちゃった・・・。ウォルに怒られる!」


 いつものことながらメネは誘惑には勝てず、ついお菓子を買いすぎてしまうのである。


「あ〜あ、機嫌治す為に買いに来たのにもっと機嫌悪くなりそうで怖いわ・・・」


 ぶつぶつと言いながら帰り道を歩いていると聞いたことのある声を聞いた。


「だから、あるって、二人の日記は」

「え〜?フェイクじゃない?嘘クセェし」


 メネが下を向いていた顔を上げると前を歩く男子高校生二人を見つけた。一人は寝癖のつい良い悪ガキのような感じだったがその隣にいたのは清潔感丸出しの純情少年のような男子だった。記憶力の良いメネはすぐにその人物がわかった。


「天堂普!!」

「!!」


 ついメネは大声でその名を叫んでしまった。自分の名前を呼ばれた男はパッと振り返り、オレンジの髪と紫の瞳を見て目を見開いた。


「め、メネ!?」



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