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3話ランとアートの日記

「私がその日記を無くしちゃったからよ」


冷房の効いた図書館が冬のように冷えた。


「な、無くしたぁ!?」

「そ」


上の空でいけしゃあしゃあと話すメネを見ながら普は呆然と立ち尽くしていた。

ウォルは申し訳なさそうに下を向いている。


「な、何で無くしちゃったんですか!?」

「いつの間にか無くなってたのよ」

「いつの間にかって・・・」


文献を閉じた普は困ったように頭をかいた。


「あ、でも、さっき印刷も偽造もないって・・・」

「そうよ」


思い出したように普が口を開いた。


「そんな日記をどうして持っていたんですか?」


世界にたった一冊ずつの日記。それを持っている確率は恐ろしく低い。

普は本をメネが無くしたということに疑問を抱いた。


「世界に二冊だけの日記です。それにこの文献によるとランとアートはヨーロッパで生まれた双子です。日本にあるわけないでしょう!」


大抵、たった一つのものというのは生まれた場所のその場に保管されているかどこかで展示されているはずだ。普はそれを思って印刷か偽造されたものを探しに来た。


「ランとアートの日記は世界中の学者や芸術家の目に留まるほどの大作です。今の今まで世界中の多くの人が二人の日記を目撃しています。世界的な科学者アインシュタインやニュートン、数学者タレスやピタゴラス、ブラーマグプタ、画家ゴッホ、ダ・ヴィンチ、モネ、ピカソ、ヨハネス、作曲家バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン。彼ら全てに影響を与えた。そんな本が印刷も偽造もなくあなただけが持っているなんて─────」

「だから言ったでしょ?私は神だって」

「!!」


 普の口が止まる。


力が抜けたように普は一旦落ち着きを取り戻した。


「私の名前はメネ。こう見えても学術と芸術を司るれっきとした神様よ」

「学術と芸術・・・見えないんですけど」

「はぁ!?」


見えないと言われてもおかしくはない。メネの姿は大人ではなく中学生に近い高校生のような姿をしている。身長も普より低く、なんの威厳も感じ取れない。

 

「それに日本人(こちとら)学問の神様といえば菅原道真ですけど・・・」

「その人は神様じゃないでしょ!?それに私は芸術も兼ね備えている本物の神!受験生は私のところへ参拝すべきだわ!」

「メネ、日本に張り合っちゃだめよ」


菅原道真に対抗心を燃やすメネを子どもをあやすようにウォルが抑える。


「そうやって神様として祀られている人に対抗心燃やして私は神〜とか言ってたら余計厨二病感増してきますよ」

「五月蝿いわね!!だから厨二病じゃないわよ!!」


信じなさいと喚くメネが面倒くさくなったのか普はメネに質問をした。


「もし仮に貴方が神様だとして」

「仮ってなによ」

「どうしてランとアートの日記を持ってたんですか?あなたが言うのが正しければその日記は二冊しか世界にありませんけど」


癇癪を起こして喚いていたメネはそれを聞いてスッと元に戻った。


「この図書館には世界中で見つかっている本、全てがあるのよ。本物から印刷、偽造書までもね」

「じゃあ、世界で本物が見つかっていないっていう本がいくつかあると思いますけどその本はここにあるんですか?」

「そういうことになるわね」


そう言われてみればそうだ。

恐ろしく広く高い図書館。見上げる天井は普通の図書館のそれではない。

学校に置かれている本、教科書や絵本。百科事典、知らない語で書かれた大量の本。日本語を見つけるのでさえ大変な代物だった。


「でも、外から見たら普通に学校の体育館くらいの大きさで・・・こんな見えない天井ぐらいの高さじゃ・・・」

「そりゃそうでしょ。世界中の本を置いているのよ。いくら広さと高さがあっても収まらないわ」


普は錯覚でも見ているのかと何度も目をこすり見ての繰り返しだった。


「何でこんなに外と中じゃ大きさが違うんです・・・?」

「ここは私が創り出した建設物。外から見えない異次元なんて容易いわ」

「・・・これが神の力なんですか?」

「そうよ」


こんなことを聞き、見ておいて人間の仕業だとは流石に思えなかった普は頬をつねったが普通に痛かった。


それでもなかなか信じることができない。


「わかりました。プラスで十%神だということ信じます」

「まだ十五%!?ひどすぎじゃない!?ウォル〜、この男ひっぱたいてよ!」

「いーや」

「なんでぇ!?」


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