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ヲタッキーズ182 地下ヒロイン

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第182話「地下ヒロイン」。さて、今回は地底超特急に勤める鳥類の心を読むバードテレパスが殺されます。


捜査線上に浮かぶ、地底超特急のトンネル躯体に潜む様々な人生。地下世界の中に、凶悪な殺人犯が潜んでいるのか?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 アサシン隼


真夜中の東秋葉原。和泉パーク。


夜のモペット(電動バイク)乗りが流行ってる。真っ暗なオフロードをヘルメットのヘッドライトを頼りに突っ走る。


「抜くぞ!」

「くそっ」

「俺の勝ちだ!」


モペット同士で競うようにスピードを増し暗闇の中を疾駆、公園内を乗り回しジャンプ…1台がコケるw


「おい!大丈夫か」

「痛っ!何かにつまずいた?」

「…死体だぞ?」


マジかょw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地が良くて常連が沈殿。売上げは急降下…

で、カウンターの上のケージではネズミが回し車をクルクル回している。コレはもう世も末って感じw


「おいおい。御屋敷の中で何の実験を始めたの?」

「シュリのペットのセドア。昨日から預かってる」

「やあセドア。働いてるかい」


ボーイフレンドからペットを預けられてスピアは鼻高々。カウンターの中ではミユリさんも聞き耳だ。


「ねぇネズミの寿命は普通2〜3年だけど、この子は5才なの。でも、誰かにに預けるのは初めてナンだって」

「シュリに信頼されてルンだね。2人は上手くいってるみたいだ」

「まぁね」


得意そうなスピア。今まで何人もの女子がセドアを預かって来たのだろうが、みんなこんな感じかな?


「セドアは、もっと運動しないと。テリィ様、この子の小さな目が実は苦手で」

「え。ミユリさん、何言ってんのネズミだぜ?どのネズミだって目は小さいさ」

「テリィたん、ダメ!それセドアの。食べる分量が決まってるんだからね!」


スナックだと思ったらエサらしい。でも美味い←


「ベンじゃあるまいし、セドアは怒らないさ。じゃ今から和泉パークでスーパーヒロインの死体を見て来るょ」

「ベンって?誰?」

「殺人ネズミょ。古い映画なの」


ミユリさんの解説にスピアは溜め息。


「いつの時代ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原の和泉パーク。林の中の殺人現場は黄色い規制テープで区切られてる。規制線を潜り現場へ。


「蛇や蜘蛛ならわかるが、ネズミだぜ?普通、ネズミをペットに飼うか?」

「ゴキブリをペットにしてる子もいるわ」

「ラギィが今まで飼った中で1番珍しいペットは?」


万世橋警察署の女警部は微笑。彼女との付き合いは彼女が前の職場で"新橋鮫"と呼ばれてた頃から。


「ソレは…テリィたんね」


僕は、黙ってビニール手袋(ビニ手)をスル。


「ルイナ。ひき逃げ事件か?」

「確かに、通報はモペットで死体を轢いた、だった。でも、死因は音波銃で撃たれたから。銃槍は1発が前から胸に。後ろから背中に2発撃たれてる」

「あら。ホントだわ」


ラニが死体を起こすと背中に2発を打たれた痕。


「前後から撃たれたの?」

「犯人は、スーパーヒロインを挟み撃ちにして、音波銃で十字砲火を浴びせたのか」

「さぁね。早く彼女をラボに連れて来て」


ルイナの"リモート鑑識"だ。車椅子の超天才ルイナは、気まぐれに捜査を手伝ってくれる時がアル。


「IDは持ってた?」

「名前はレニィ・デビド。神田練塀町在住。"blood type BLUE"。スーパーヒロイン法の登録では弱い(β類の)テレパス。なお、財布も鍵も何も盗まれてナイ」

「あら。強盗じゃナイの」


アキバに突然開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子のスーパーヒロインへの"覚醒"が相次ぐ。

特別区(アキバD.A.)は、スーパーヒロイン基本法を制定、覚醒状況の掌握とヒロイン人権の保護に乗り出してる。


僕は、胸ポッケに挿さってた羽根を抜く。


「もっとタチの悪い犯罪だな。この羽根、模様と色からすると…」


羽根を指で摘み匂いをかぎ…舐める。ラギィと僕のタブレットをハッキング中のルイナは顔を(しかめ)る。


「そこら辺にいる鳩ではない。猛禽類の羽根だ」

「あーら。もう犯人がわかった?つまり、犯人は鳥で音波銃でスーパーヒロインを射殺したワケね?」

「…この羽根には意味がある。殺人鬼は、犯行後に名刺がわりに羽根を残すンだ。その名も"アサシン隼"だ」


ドン引きスル女子達。何でアサシン?


「ゴメンね、テリィたん。でも、その羽根、撃たれる前に拾ったンじゃナイの?」

「そんなんだから、ラギィはベストセラー作家になれないんだ。面白みがない」

「私は、警部で満足してるわ。ルイナ、thank you。死体、あとでラボに送るね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「お待たせ。被害者について調べてきた。地底超特急の運営会社の職員だった。グランド末広町ステーション勤務」

「末広町駅から和泉パークまでは距離がある。なぜ彼女はパークにいたの?」

「東秋葉原だからドラッグか買春かと思ったけど…彼女、そーゆー過去は一切ナシ」


ヲタッキーズのマリレは真面目な人生を語るが彼女が何らかの犯罪に巻き込まれたコトは間違いナイ。


あ、マリレはメイド服だ。ココはアキバだからねw


「ご家族は?」

「両親は他界。結婚もしてない。子供もナシ」

「殺すには格好のターゲットだ。真面目に働いてる地底超特急の職員。スーパーヒロインとしてはオトナしい彼女を真夜中のパークに誘い込み、隼のスピードで殺す…」


僕の妄想は絶好調だが、首を振るラギィ。


「アサシン隼は無視して。ヲタッキーズは、被害者のアパートを調べて来て」

「ROG」

「テリィたん。"アサシン隼"も"覚醒"したスーパーヒロインなの?」


出がけに僕に聞くマリレ。マリレとは気が合うな。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"から来る脅威に対抗スルための秘密結社。

僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社(PMC)だ。


アキバで発生するスーパーヒロイン絡みの事件は警察とSATO、多くの場合ウチとの合同捜査となる。


「死斑や体温から死亡時刻は午後5時から7時。あと手首が折れてるけど…コレは単にモペットが轢いた時に折れた可能性もアルわ」

「銃槍は?」

「3発とも同じ45Hz口径で撃たれてる。恐らく撃ったのは1人ね」


万世橋(アキバポリス)の検視局で、ルイナのラボから回送されて来た遺体を見る。折れた手首をつかむとブラブラだw


「ルイナ。正面から撃った後、今度は背後から撃ってるのょ?何で?」

「ラギィ、ソレょソレ。何か引っかかるのょね?だから、ちょっと調べてみた。そしたら、銃槍の深さがかなり違ってたの。胸の傷は浅く、そこそこ遠距離から撃たれてる」

「遠距離ってどのくらい?」


さっきまで、検視局のモニターにはルイナが映ってたが音波痕がメリ込んだレントゲン写真に代わる。


「ざっと約45mってトコロ」

「遠いな。かなり上手くないと当たらないぜ」

「犯人は"音波狙撃"の経験があるみたい」


音波狙撃手(ソニックスナイパー)


「背中の方は至近距離から撃たれてる。2mぐらいかな?」

「被害者は、先ず遠くから胸を撃たれて、必死に逃げようとした?」

「ところが、犯人は彼女を追いかけ、後ろから2発喰らわせた」


僕の妄想は膨らむ。


「つまり、追いかけてトドメを刺したのね」

「どうしてソンなコトを?」

「さぁ?アサシンの熱心な仕事ぶりって奴?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


疑似科学の実験室?


スチームパンクのガジェットと見紛うが、良く出来た電子工作だ。工具も器具も全てモノホンっぽい。

壁には、地底超特急の路線図。赤丸がつけられた写真。→は路線図や首都圏地下鉄のアチコチを指す。


「コレ何?彼女は地下鉄ヲタクなの?」

「わからないわ。"地下鉄娘"の公式コスプレイヤーに応募してるとか?でも、フィギュアがナイし…コレは?」

「何かの集計かしら?200万?」


ヲタッキーズのメイド2人が、殺されたレニィ・デビドのアパートに踏み込むとソコはスチーム世界(レトロフューチャー)w


「何かを数えてたのね」

「何を?賽の河原?」

「きっと良くないコトね…あら?赤外線暗視装置、高性能望遠鏡、パラボラ集音マイク。どれもハイテクで性能の良いモノばかりだわ。地底超特急の職員がココでいったい何を…スパイごっこ?」


肩をスボめるエアリ。一方の壁には、和泉パークの地図が張ってあり色とりどりのピンが差してアル。


「さぁね。でも、どうやら和泉パークで何かやってたみたい。ほら、ココは彼女の遺体があった場所でしょ?」

「付箋に"5時26分"とアルわ。死亡時刻にヤタラ近いけど」

「同じ付箋には"BHS"だって。ヒトだかモノだかわからないモノを追跡してたみたいね」


うなるエアリ。


「逆に追跡を気づかれて殺されたとか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


グランド末広町ステーション。地下リニア新幹線網のハブ駅。仙台行きがホームギリギリに入線スル。


地下ホームの雑踏をかき分ける僕とラギィ。


「プロのスナイパー、人を監視するスパイ道具、時刻の書かれた地図、そして地底超特急。"サブウェイパニック"って映画を思い出すな。いや"マネートレイン"の世界かな。この雑踏の何処かに共犯者が隠れてる。雑踏の中では誰もが主人公だからな」

「そーゆートコロが、テリィたんと私の違うトコロょね。テリィたんにとっては、地下鉄は小説のネタ集めの場所。でも、私にとっては移動するために使う交通手段でしかないわ」

「アキバに通う腐女子のナンパの場でもアルぞ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


駅務室で青いツナギの年配女子と向き合う。


「じゃ"電球レンジャー"は殺されたのね?」

「"電球レンジャー"?」

「レニィは、グランド末広町ステーションやトンネルの電球交換をしてた。末広町駅にリニアの始発になる前から地下駅構内に22年勤めてるけど、彼女が欠勤なんて珍しいと思ってたら…」


年配女子リベラは大きな溜め息。


「リベラさん。レニィは、撃たれて亡くなったンです。彼女が和泉パークで何をしていたか、御存知ですか?」

「おまわりさん。"電球交換"は、決して社交的な仕事じゃナイ。私は12年間、彼女の上司でした。でも、その間personal questionをしたコトは1度もナイの。でも、彼女と仲の良い人もいたわ」

「誰ですか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リニア線路に降り、ヘルメットに赤い作業ベストで"電球交換"をしている初老のスーパーヒロイン。


「サソンさん!すみません…アーサー!」


ラギィがホームから大声で呼ぶと地下トンネルの中で赤いヘルメットがゆっくりと振り向いて微笑む。


僕は、暗闇に向かって大きく手を振る。


第2章 最後の目撃者


同じくグランド末広町ステーション駅務室。今度は正面は初老の女子。聞けば"blood type BLUE"。


かなり初期に"覚醒"した老スーパーヒロインw


「レニィが死ぬなんて。どうして、あの子が殺されなきゃイケナイの?」

「何か知りませんか?やはり超能力絡みでしょうか?弱いテレパスだと聞きましたが」

「あの子は…スーパーヒロインである前に、秋葉原の知られざる"地下ヒロイン"だった。多くの人の命を救ったのょ」


"地下ヒロイン"?地下アイドルみたいな?


「失礼ですが、レニィの仕事は、リアルでは"電球交換"だったと聞いてますが」

「地底の暗闇は危険極まりないわ。リニア新幹線自体は、最新のハイテクシステムだけど、そのシステムを収める首都圏のトンネルや地下の駆体は、ハッキリ言って白熱電球と真空管の世界なの。その交換作業には、常に危険が潜む。でも、彼女は1度電球が切れれば、残業してでも交換に出掛けた。"上野広小路の悲劇"が繰り返されないようにね」

「"上野広小路の悲劇"?ソレ何?アキバ検定とかに出る?」


率直に"聞かぬは1生の恥"の精神で聞いたけど、老ヒロインは心底驚いた風情で教えてくれる。


「1989年に起きた事件ょ!作業員が電球交換中に感電して小指を挫いたの。コレは、その時の教訓から生まれた回路安全装置ょ」


ボックスの蓋を開ける。スイッチを切ると火花が散り、辺りの色んな赤信号が一斉に青信号に変わる。


「コレでトンネル内の電気が止まり、私達は、全員安全にメンテナンス作業が出来るわ。ホントのヒロインは、アイドル通りじゃなくて、地下にいる。そう、常に真実は地下にアルの。アイドルもヒロインも」


老ヒロインは、満足げにうなずき、再びスイッチを投入スルと見渡す限り全ての青ランプが赤く点灯。


「またの名をレニィボックスって呼ばれてる。彼女がコレを設計して、地底超特急全線の駅に設置するよう会社にかけ合ったのょ」

「…(集中スイッチ?トンでもないローテクだわw)レニィは、仕事で暗視装置やパラボラ集音マイクなどのハイテク機器を使うコトもありましたか?」

「いいえ」


即座に否定する。お次は僕から。


「じゃ彼女はBHSという人かモノかわからないけど、記録をつけてたんだけど、何かな?」

「さぁ…バスト、ヒップ、ソックスのサイズ?もう私達はウェストってナイから。ぎゃはは」


突然愛すべき大阪のオバちゃんキャラが炸裂したが瞬時に元に戻る。さすがヒロイン、変身が早いw


「知らないわ。レニィが記録してたのは、自分が交換した電球の数だけょ」

「誰かに恨まれていませんでしたか?」


悲しげに首を振るアーサ。


「何かを変えようとスル変革者は、常に嫌われるモノょ。レニィが訴えを起こし、ハイテクリニアの影に隠れていたトンネル側の白熱電球からLEDランプへの転換作業がやっと始まった。LEDに置き換われば不要な白熱電球が大量に出る。白熱電球の会社で、スーツを着て売っている奴等から見れば、それは当然不満だ。俺だったら、先ず白熱電球の会社の奴等を探すね。そいつらがレニィを殺したんだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ホワイトボード前にヲタッキーズ集合。因みにエアリもマリレもメイド服。ココは…以下略


「レニィボックス?被害者は発明家だったの?」

「アンダーグラウンドに潜むヒロイン、そして、隠れた変革者でもあった」

「ソレで、あの部屋はスチームパンクなのに、中がハイテクなスパイ道具一式である謎も納得ね。ガジェットがゴロゴロしてたわ」


僕も妄想を膨らます。


「君達が部屋で見た謎の数字は、きっと交換した電球の数に違いない」


驚くメイド達。


「マジで100万コ以上の電球を変えたの?マジ、神じゃん」

「そして、電球会社の陰謀で殺された地下のヒロインさ」

「え。電球会社の陰謀?何ソレ?」


マリレは、陰謀論が大好物なので身を乗り出す。


「モチロン"影の政府"が絡んでる」

「テリィたん、ヤメて。マリレもレニィのお友達の妄想を真に受けないで。電球会社に殺されたなんて、老ヒロインの妄想でしかナイわ」

「ソンなコト、どーだかワカラナイじゃない?」


何とラギィが割り込んで来る。


「レニィの通話記録を調べてみたら、特別区(アキバD.A.)の労働相談窓口に電話してた。彼女は仲間を密告(ラットアウト)してたの」

「何かを密告したってコト?ラットと逝えば、僕のストリートネームはトブルクのネズ…」


話を遮るメイド達。


「密告って?」

「不要になった白熱電球を上司が盗んで闇で売ってるって訴えたそうょ」

「ソレって、マリオ・リベラか?」


あのヲバさん、なかなかヤルなw


「あぁ発覚すれば、失業するだけじゃなく、年金ももらえなくなる。あとリベラは、8年間、水陸機動団にいて、優秀スナイパーとして表彰されたコトもアル」


げ。軍人上がりかょw

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。マリオ・リベラ元軍曹を招聘。


「昨夜5時から7時の間はどこにいましたか?」

「職場ょ」

「4時34分に退勤してますが」


僕がラギィに補足。


「その後、地下鉄で急行に乗れば10分で59丁目に行ってレニィを殺すコトが出来るね」

「あらあら何の話?私には動機がナイわ」

「アンタが半島でやってる闇商売がバレる。彼女は貴女の犯罪に気づき、地底超特急の警務に通報した」

 

とりあえず、スッとボケるリベラ。


「何を言ってるのか、さっぱりワカラナイわ」

「コレは、貴女が半島の協力者に送ったメールでしょ?」

「あら!私信を勝手に見るなんて!」


マジで怒るリベラ。会社のメールは会社の財産ナンだが、ソレを私信と勘違いしている最後の世代だw


「あのね。会社のメールシステムが貴女の私物のハズがナイでしょ?会社メールにプライバシーはナイの」

「休みをとって旅行しようと思ってたの」

「ソレは良いわね。お酒を飲んだり、海で遊んだり、中古の白熱電球を売ったりスルのね!」


アッサリ斬り込むラギィ。


「地底超特急のトンネル構内で、使われなくなった大量の白熱電球が置きっぱなしになっているのを見て、貴女は、半島の闇業者に1個20円で売るコトを思いついた。今までに、既に2000万円儲けてる」

「だが、残念ながら、その闇ビジネスは"電球レンジャー"に気づかれた。会社に密告されたらクビになる上に、積み立てた年金もパー。だから、口封じのために殺したのね?」

「私は、誰も殺しちゃナイわ」


頑なに否定スル。


「じゃその時間、軍曹は何をしてたの?この世界は、アリバイがなければ殺人犯と疑われても仕方が無いンだけど」

「現場にいたわ。良い?あの電球は、どうせ捨てられる運命だった。ソレを私が片付けてあげたの。感謝して欲しいぐらいょ。だって、誰も損はしてナイでしょ?」

「レニィが死んだわ」


畳み掛けるラギィ。


「もう白状して?貴女、アリバイはないンでしょ?」

「…昨夜、仕事が終わった後、私は"グランドコンコース"で白熱電球240コを半島に向けて発送してた。構内カメラで確認して。ソコにいたから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。スマホを切ったエアリから報告。


「リベラはシロだ。レニィの密告で、リベラは地底超特急の警務にズッと監視されてた。お陰で、同業者からしっかりアリバイの裏が取れたわ」

「白熱電球の半島への横流しの件は、コレで解決。地底超特急の警務には1件落着と教えてあげて」

「ウチも頑張ってレニィ殺しの犯人を挙げよう。しかし、何で殺されたのかな。地図にメモしてあった時間に殺されたのは、単なる偶然じゃなさそうだ。でも、そーなると"BHS"が何の略かが問題だな。ホントにバスト、ヒップ、ソックスの略なのかな?…ベーコンホットサンドは?」


誰も笑わない。ソコへレニィの部屋にあったパラボラ付き集音マイクを手にマリレが駆け込んで来る。


「バイロ・H・シンガだった!パラボラマイクのメーカーに問い合わせたら、何と購入者がリストされてた。買ったのはレニィじゃなかった。保険数理士のバロンHシンガだったんだ」

「BHS!」

「うわっ!」


集音マイクのヘッドホンをつけ遊んでた僕は、ラギィの"BHS!"の叫び声に鼓膜が破れそうになるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のラウンジ。現れたシンガは超マジメ女子w


「シンガさん。わざわざスミマセン」

「大事な話って?」

「レニィ・デビドをご存知ですか?」


途端に顔を曇らせる。


「あのお馬鹿さんが何か言ったの?」

「いいえ。何も言っていません」

「良かったわ。アイツは嘘つきょ。私を見下して、常に自分が1番だと勘違いしてる。私は、アイツが信じなくても絶対に見たの」


え。何を?UFO?


「何を見たんですか?」

「公園で仲良さそうにイチャついてるトコロょ。レニィは、あり得ないと言って認めなかったけど、私がソンなウソをつく必要がアル?」

「も少し具体的に話していただけませんか?貴女は何を見たの?」


座り直し、語り始めるシンガ。


「この目で見て驚いたわ。あそこまで親密な様子を見るナンて。そもそも彼等がいるとは、夢にも思わなかったワケ。だから、直ぐレニィに報告したの」

「伝えた時のレンの反応は?」

「モチロンひどく怒って嫉妬してたわ。いつどこで彼等が出没するか、詳しくレニィに教えてあげた。監視できるように機材まで貸してあげたの」


得意そうなシンガ。


「ソレで、レニィは公園に確認に行ったのかな?」

「そして、現場を押さえられ、問い詰められた2人がレニィを殺したのね?」

「え。今なんて?」


ココに来て初めて怪訝な顔になるシンガ。


「ねぇ浮気した恋人達が彼を殺したンだろ?浮気現場を押さえられて」

「待って。何の話?」

「そっちこそ何の話?」


僕とラギィは異口同音だw 嫌な予感。


「シンガさん。公園で誰を見たんですか?」

「アカオノスリ。ソレもツガイで。ねぇ巣を作ったのは、この40年で恐らく初めてなの!」

「鳥の話だったんですか?!」


目の前がグルグル回る。シンガの力説は上の空w


「だから、タダの鳥じゃないの。貴重なアカオノスリょ?私が目撃したコトは、正式に和泉パークの探鳥記録にも残されてるわ。ソレなのに、レニィは、私をウソつき呼ばわりした。いかに自分が鳥類の心が読めるバードテレパスだからって…とにかく、そんなに信じられないなら、自分で行って見て来いと言ったの。夕方に行けば巣にいるからって」

「じゃ昨日の17〜19時は公園にいたんですか?」

「ソレが…大抵ならいるンだけど、昨日は残業で行けなかったの」


心底悔しそうなシンガ。


「同僚の方がソレを証明出来ますか?」

「モチロン。同僚どころか上司も部下も併せて100人ぐらいで大残業大会だったから…でもね、確かに昨夜は見てないけど、アカオノスリを初めて見たのが私だってコトは、公式記録にシッカリ残して欲しいの。正式記録にょ。私がイカサマするナンてあり得ないから。ホントょ。目撃したのは、私が最初」

「わかりました。今回の警察調書にも正式に記録を残しておきます。御協力ありがとうございました」


レニィ。悲しきバードテレパス。君は、地下から高い空を飛ぶ鳥を見上げ、その心を読んでいたのか。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


探鳥女子バロン・H・シンガさんに丁重にお引き取りを願い、おもむろに顔を見合わせる僕とラギィ。


「やっと暗視装置も公園にいた理由も、羽根もBHSも全部説明がついたわね」

「なぜレニィが殺されたか以外はな」

「アサシン隼の線も消えたし」


なぜかドヤ顔のラギィw

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼けが摩天楼を染める頃。早起きして御帰宅スルと、ミユリさんがガラステーブルの上に立ってるw


「おはよう。どうしてミユリさんは、テーブルの上に立ってるのかな?」

「逃げちゃったの!」

「セドアがか?」

 

そりゃヤバい。


「エサを入れた時、ケージがキチンと閉まってなかったの。シュリに知られたら私、嫌われちゃう」

「大丈夫さ」

「ダメょ。私は信用を失った」


絶望するスピア。


「大丈夫だって。自分の部屋を見たのか?」

「見たわ」

「スピア。もし私の部屋にいたら、ベッドと服を全部新調スルから」


テーブルの上からミユリさん。激ヲコ?珍しいなw


「あぁ!何処へ行っちゃったのかしら。もし御屋敷(メイドバー)の外に出てたら?」


スピアは、真面目で責任感が旺盛なのだ。要は真面目。実は余り性格的にハッカーには向いていない。


「じゃスピア。セドアと同じ齧歯類になりきって考えてみないか?」


大きく腹式呼吸。目を瞑る。


「僕達はセドアだ。何が欲しい?」

「エサ?」

「ソレは、もう十分もらってる」


スピアは(スイカ級の巨乳を揺らしてw)深呼吸。


「暖かくて安全な場所ょ」

「静かで、居心地が良くて、誰にも踏まれないような場所だと思うけどな」

「クローゼットだわ!」


ダッシュ!エネルギッシュにクローゼットOpen!


「いた?」

「…ダメ。ココにはいないわ」

「え。ココにはいない?…見当たらない?」


呪文のように唱える僕。スピアは驚き僕のコトを凝視してたが、やがて諦めたようにゆっくり微笑む。


「なぁに?…ヒラメいたのね?行けば?」

「でも、スピアの手伝いは?」

「ソレは私の仕事。私が決めたコトだから多分1人でも平気…ミユリ姉様!"ムーンライトセレナーダーに変身ょ!」


出来た元カノだ。黙って彼女の肩を叩く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕の推しミユリさんは、アキバが萌え出す前から池袋でメイドをやってた猛者だ。アキバに来てから"覚醒"し、超能力を得てスーパーヒロインとなる。


「テリィ様。降ります」


彼女は"電撃使い"。いわゆるエレクトロキネシスで、発達した発電器官から超々高電圧を生み出す。

今も超天才ルイナ発明のイオンクラフト搭載"ロケットパンツ"で空を飛び和泉パークに舞い降りる。


着地。僕は朝から出てるコーヒーの屋台でベンティカップ2つを購入。1つをスーパーヒロインに提供。


「ムーンライトセレナーダー。最初の手がかりは、夜中に吠えなかったコトさ」

「テリィ様、戌年ですモノね。あ、どーも」

「リストレット・ベンティ・2%ラテ」


コーヒーを差し出す。


「ホームズの白銀号事件さ。ホームズは、足りないモノに注目スル。つまり、犬が吠えなかったから、顔見知りの犯行だと推理したのさ」

「その話、思い出したわ」

「現場にないモノが重要な場合がアル。シンガによると、レニィは、アカオノスリを見に来てた。見たと言う証拠を残すために…」


僕は、傍らのミユリさんを…あれ?両手でベンティカップを持ってスターボックス飲んでる。萌えるw


「つまり、探鳥記録の証拠を残すために、カメラを持ってたカモですね?」

「YES。そして、そのカメラは、未だ現場から回収されて無いンだ」

「とゆーコトは、現場にカメラが残っていて、そのカメラには何かが写っているカモですか?」


やっぱりミユリさんとは波長が合うな。今日も"推しとの早朝デート権"ゲットでmake my dayだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


和泉パークの1角は、今でも"do not cross police line"と描かれた黄色いテープで区切られている。


「レニィは、ココで2発撃たれた」

「逃げてる途中を背中から撃たれたのですょね」

「確か手首は折れてたって、ルイナが逝ってた」


パークを流れる小川。川辺の芝生の上を歩く。


「ソレはモペットに轢かれたカラね」

「うーんソレとも木から落ちたのカモ。テリィ様、ココを見て。芝生に凹みがありマス」

「ホントだ。コレは…痛そうだ」


凹みの傍らの木を見上げると、既にミユリさんは"飛んで"枝にぶら下がってたカメラを手にしてる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


潜り酒場(スピークイージー)"に"飛んで帰る"と、未だスピアがセオドを探してる。

忙しいトコロを侘びながらハードディスクをハッキングしてもらうw


鳥、鳥、鳥。飛ぶ鳥、水鳥、焼鳥(ウソw)…


「テリィ様。鳥ばっかりdeath」

「ミユリさん!ソレ、アカオノスリだょ!シンガの話はホントなんだな」

「アカオノスリを指名手配しなくちゃですね。でも、犯人ではなさそうです」


僕は、再び鳥類図鑑に目を落とす。すると…


「テリィ様!」


次は、幼女に音波銃を突きつけ、車の後部座席へと押し込む男の画像だ。

幼女は怯えながらも犯人を見上げ、犯人の音波銃はサイレンサー付きだ。


「レニィは、誘拐現場を目撃し撮影したのですね」


次の画像は、レニィのカメラに向けられた、ラッパ型に開いた音波銃口から白い火花が飛ぶトコロだ。


「レニィが最後に目にしたのは…犯人の顔?」


第3章 誘拐と追跡のルンバ


捜査本部に全員集合。制服警官、鑑識、SWAT…とにかく全員。SATOからヲタッキーズも全力出撃(アルファストライク)


モニターには、怯えて見上げる幼女の画像。


「未だ幼女の名前は不明。年齢は推定5から10才。車に乗せるトコロだった。髪の毛は茶色で瞳は薄茶色。短パンにスニーカー。灰色と白の上着を着てるわ」


画像を指差すラギィ。メモを片手に、次々と集まってくる署員達。一斉にスマホにデータを打ち込む。


「犯人は男性。髪は茶色で身長は180cm前後。持ってる音波銃はグロックの45Hz口径。レニィの体内から見つかった音波痕も被害者を撃ったのと同じHz口径ょ。画像の記録時刻によると、幼女は、火曜日の5時12分に誘拐された。みんなも知ってる通り、誘拐から48時間が経過すると、無事救出できる可能性は極端に低くなる。先ず、幼女を見つけ出すコトを優先して。全員解散」


一斉に動き出す。一発ぶったラギィは、ホワイトボードの前で腕組み。僕は(SATOを代表してw)話す。


「36時間も経って、何で親は通報して来ないのかな」

「気づいてないか、脅されてるかね」

「短パンってコトは、和泉パークで遊ぶ予定だったってコトだ」


モニターには"name:unknown"の幼女画像。


「犯人とは顔見知りなのカモ」

「ソレなら音波銃がなくても連れ出せるさ」

「ラギィ。今、警視庁(さくらだもん)にメールを送った。過去に同じ手口の誘拐パターンがないか、確認中。エアリは和泉パークで聞き込み再開」


マリレの報告にフト思いつく。


「小学校は確認した?欠席者がいないかとか」

「管内の小中高全校に写真を送って」

「もうやってる」


そうは逝いながら走り出すマリレ。呼び止める。


「車は何処のメーカーだろう?調べられる?コンパクトカーに見えるけど」

「ソレもやってる。あと交通違反の監視カメラも調べてるから。ナンバーが写ってるカモだし」

「マリレ。運転手の顔も確認してね」


今度こそ走り去るマリレ。僕は幼女画像を指差す。


「この部分だけ拡大出来ないかな」

「え。何か映ってるの?反射?」

「ドアミラーに何か写ってないかと思って。犯人の顔とかさ」


ラギィがスマホを抜く。


「頼んでみるわ…鑑識?写真担当を呼んで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


和泉パーク。"テイスティ焼きそば"の屋台。


「ヲッサン!この子に見覚えはナイ?」

「メイドさん、ヲタッキーズだろ?今、バズってる"チキンオーバー焼きそば"食ってけ!お代はイラねぇ…スマンが、毎日大勢の子供達を見てるからな。いちいち覚えてられナイんだ」

「(遠慮なく"チキンオーバー焼きそば"を食べるエアリw)モグモグ。超美味しい!…ところで、同じ時間に青い車を見てナイ?」


エアリの示すスマホ画像を覗き込むヲッサン。


「火曜日の5時ごろ?見たぞ。新型EVの"ヘヴン"の2024年型だろ?」

「マジ?」

「俺の屋台の定位置に止めてあって、商売の邪魔だったんだ」


ヲッサンの愚痴が始まる。


「しょうがないから仕方なく車道で売ってたらスケボーギャングに轢かれそうになった」

「"ヘヴン2024"の中に人はいたかしら?」

「いたら思いっきり怒鳴りつけてたぜ。最近はダメなヲタクが多いょ」


"最近の若いモン"をアキバ風に嘆きながらもヲッサンは妙なテレ笑いを浮かべテイクアウトを渡す。


「コレ、ムーンライトセレナーダーに。俺から」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部にエアリからの報告が入る。


「最近流行ってる"チキンオーバー焼きそば"屋台のヲッサンによると、車は2024年型、青のヘヴン。タダ困ったコトに周辺で登録されてる青のヘヴンは1000台以上ある。マリレ。交通違反監視カメラの方はどう?」

「当たってる。でも、映像の量が大量過ぎて…AIが探してるけど…あと、欠席中の生徒も調べてるけど、性別も学年もワカラナイし、絞り込みが難航してる。おまけにインフルエンザが流行ってて、欠席者が多くて苦戦中」

桜田門(けいしちょう)は?」


情け容赦なく尻を叩くラギィ。


「類似パターンの誘拐はなかったって」


てんてこ舞いのマリレに鑑識が封筒を渡す。


「ヲタッキーズ、拡大写真が出来ました」

「あ、ありがと。僕がもらうょ」

「あらあら。元の画像が荒い上に、拡大で画質が重力の井戸の底に落ちてるわ」


拡大画像を見た僕とラギィは失望の声。


「ドアミラーかどうかさえ判別出来ナイょ」

「"24"みたいに上手くは行かないわ。今の技術じゃこんなモノょ」

「鑑識には悪いけど、コレじゃ何の意味もナイな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「ねぇエアリ。この"チキンオーバー焼きそば"サイコーだわ。とっても美味しい」

「良かったわ。姉様にって、屋台のヲッサンが。あ、実は姉様にじゃなくて、ムーンライトセレナーダーに、でした」

「そーなの?じゃ変身して食べようかしら」


カウンターの中で頬張りながら微笑むミユリさん。


「あら?コレ、グランドホッケーの痕だわ」

「え?姉様。この画像の子、御存知なの?」

「ううん、知らないわ。でも、靴下にスティックをぶつけられた痕が出来てる。この子も何処かのホッケーチームに所属してたのね」


例の誘拐写真だ。車に押し込まれる幼女の靴下に、Xmasのステッキみたいな形の痕がついているw


「和泉パークの多目的グランドをベースにしてるホッケーチームがいくつかアル。家族のためにスコアや順位が見られるチームのサイトがアルと思う。スピアに手伝ってもらって探してみる?」


ミユリさん、ホッケーやってたのかw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


カウンターに陣取るスピアのPC周囲に全員集合。


「火曜日に和泉パークで練習するホッケーチームのリストが出来た。ミユリ姉様リクエストの時間に練習中なのは…このチームかな?」

「"和泉ワイルドギース"?ルカス、キャス、ルモイ…いた!」

「え。どこどこ?」


僕とミユリさんが同時にPC画面を指差す。


「ティラ・ドゴル。8才か…個人情報だからPW管理されてるわね?見れる?」

「まぁノレンをくぐるよーなモンね…はい、出たわ。後は本人や御両親のSNSとか漁って、も少しも少し調べてみるけど」

「時間が迫ってるの。お願い」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほんの数分後。


「ティラの両親は2ヶ月前に離婚してる。今は母親と住んでるみたい」

「連絡はついた?」

「母親とはね。彼女は、先月麻酔医と再婚してる。割とイケメン」


ほとんど離婚直後だ。電撃再婚だなw


「ティラは、元パパの家で2日間過ごす予定だった」

「どうして、父親は通報しないのかな?」

「今、調べてる。父親は、佐久間河岸にある高層ビルの清掃員で、近くにあるアパート住まい。あら?待って…父親は、昨日から欠勤してるわ。病欠だって」


おいおい。何をハッキングしてルンだょw


「離婚後、妻はすぐ再婚…麻酔医と結婚スルために清掃員を捨てたのね。犯人は父親かもしれない。娘を取り返したくて誘拐したんだわ。スピア、何処かで写真を見つけてくれない?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

万世橋(アキバポリス)の捜査本部。ホワイトボードの前。


「ディン・ドニゴ。178cm。髪は茶色。犯人のプロファイルと一致スルわ」

「でも、娘を誘拐スルのに音波銃を使うかな?アイスを買おうと言って車に誘えば済む話だろ?」

「ラギィ、母親が来た」


ラギィの指示が飛ぶ。


「エアリはディンの職場、マリレは自宅を当たって頂戴。ディンについて色々調べて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のラウンジにティラの母親と麻酔医が到着。


「息子は?どこ?」

「今、捜査しているトコロです。ティラと最後に話したのはいつですか?」

「2日前。元夫に預けた時です」


麻酔医がしゃしゃり出る。


「ティラは、ディンといたハズだ。彼とは話したのか?」

「まだ連絡がつかなくて」

「職場は?欠勤しない人だけど」


ディンをよく知っている素ぶり。元妻だからな。


「ディンは離婚をどう受け止めているんですか?」

「納得はしていなくて…モメたわ。彼は、傷ついて怒ってた」

「ディンは、音波銃を所持してますか?」


必死に思い出す金髪の元妻。


「音波銃は、護身用だと言ってました」

「どこのメーカーですか?」

「なぜソンなコトを聞くの?まさか、ティラが撃たれたの?顔は大丈夫?」


パニくる金髪の元妻。


「いいえ。誰も撃たれてません。犯人が音波銃を持っていただけ。すみませんが、この写真を見ていただけますか?ショッキングかもしれませんが…」

「誰なの?ティラは誘拐されたのね?!」

「…でも、どーやらディンでは、なさそうですね。ところで、コレは彼の車でしょうか?青の2024年型のヘヴンですが」


またまたしゃしゃり出る麻酔医。


「アイツは、車ナンか持ってない。いつもレンタカーだったさ」

「グロックでした…ディンが持っていた音波銃はグロック社の音波銃。離婚時の財産分割リストに描いてありました」

「ディンとティラがよく遊びに行く場所は?」


またしてもシャシャリ出る麻酔医。


「アイツは出かけやしない」

「ソンなコトはナイわ。池袋に親戚の住んでるマンションがありました。良く乙女ロードに出掛けました」

「乙女ロード…」


ディンのアパートに逝ったエアリからスマホ。


「何もナイ?歯ブラシもシャンプーも?デオドラントもナイ?モヌケの空ってコト?」

「旅行中ナンじゃナイか?」

「彼のカード履歴を調べてみるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ビル清掃会社の作業員詰所。

 

「メイドさん、コッチょ」

「ヲタッキーズのマリレです。ディンは、あのデスクかしら」

「YES。ね?ティラの写真だらけでしょ?わかりやすいわ」


ネズミ色のユニホームを着た同僚はケラケラ笑う。


「デスクはココだけ?病気で休むって連絡があった時、彼の様子はどうでした?」

「…実は、無断欠勤だったの。だから黙ってた」

「え。どーゆーコト?」


溜め息をつきながら、何処かモジモジする同僚。


「だって…元の奥さんは、直ぐにお金持ちの医者と再婚したンでしょ?彼は、裁判でお金もかかったし、大変そうだった。だから、タマにはお嬢さんと息抜きをさせてあげたくて…だから、黙って彼の仕事を代わりに私が被った。職場では、助け合わなきゃね」


遠くで、彼女を呼ぶ声がスル。


「わかった。今、行くわ!」


鼻の頭にシワを寄せて微笑み走り去る同僚。彼女は恋をしてるよーだ。マリレはPC画面を覗き込む。


「仙台までの地底超特急?ディン、何の用なの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ホワイトボードの前でラギィ。


「仙台に家族や信用出来る人がいるのカモしれない。かまってくれる友達とかさ」

「でも実際に地底超特急を予約した記録はナイわ」

「ラギィ。乙女ロードのマンションだけど、所轄が見に行ったら、ココ何ヶ月も人が入った形跡はナイって」


八方塞がり?その時!


「警部!1時間前クレジットカードが使われました!神田佐久間河岸のラブホを予約!」

「ラブホ?…でも、リバーサイドのラブホ街なら神田リバー水上空港の近くだ。まさか飛行艇でティラとアキバを出るつもりでは?」

「テリィたん、急がなきゃ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラブホ"秋葉原エンペラー"1078号室。ドアを破砕突破し、音波銃で完全武装した警官隊が突入!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「ディン・ドニゴ!手を挙げろ!」

「ティラ、大丈夫?」


カーテンを締め切った暗い部屋のフロアにひざまずいた男が穏やかに後頭部で両手を組む。ディンか?


「ディン・ドニゴか?ティラは何処?」

「知らない。このラブホで次の指示を待つように言われてルンだ」

「誰に?」


詰問調になるラギィ。


「娘を誘拐した奴等にだ。従わなければ殺される」

「ディン。ティラは何処なの?」

「言ったろ?俺は知らない」


さらに詰問調のラギィ。


「なぜ仙台なの?」

「仙台?一体何の話だ」

「地底超特急を予約しようとしてた」


頭を抱えるディン。


「今年の定禅寺JAZZフェスに出ようと思ってたンだ…おいおい?警察は、俺が娘を誘拐したと思ってるのか?」

「だって…ココから水上空港は近いし」

「ココに来いと指示されたからだ」


僕まで詰問調になる。イカンなw


「誰から指示された?」

「勘弁してくれ。警察に通報したら、娘を殺すと言われてルンだ」

「ティラが危険なら話して。さもないと、協力は出来ないわ」

  

観念するディン。


「ティラを和泉パークに迎えに行ったがホッケー場にいなかったから、歩いて帰ったと思った。で、俺もアパートに帰ったら、携帯が玄関に置いてあり、それにメールが入ってたンだ」

「"娘は預かった。この携帯を使え。警察に言えば娘の命は無い。どこで何をするかは指示があるまで待て。誰かに話せば娘を殺す。娘の命がお前にかかってるコトを忘れるな"ですって」

「目的は何だ?」


メールを読み上げるラギィ。首を振るディン。


「全くワカラナイ。見当もつかないンだ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室の隣室。マジックミラー越しに取調べの様子を観察しながら、ヒソヒソ声で話し合うメイド達。


「ディンの音波銃は9ミリHzだったわ」

「じゃ凶器ではナイわ。"電球レンジャー"を撃ったのは45Hz口径だったから」

「ソレと、あの携帯はプリペイド。メールはウクライダのサービスを使っていて、IPアドレスがわからないので、送信者を追跡出来ないわ」

「SIMカードを見て。メールは全て打ち出して。何処で誰が買ったスマホかを調べましょう」


うなずき合いながら出て逝くメイド達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のラウンジ。


「身代金を求められたの?」

「まさか。俺は離婚して破産寸前、400万円も借金を抱えてる身だぞ?」

「別れた元妻の再婚相手は?」


首をふるディン。


「奴が俺を脅すワケがナイ。連絡は俺に来たんだ。ココにいるのがバレたら娘はどうなる?」

「ソレでも警察に任せるのが1番良いでしょ?力になるわ」

「休ませてくれ」


立ち上がり、ラウンジから出て逝くディン。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ソファに腰をおろして、溜め息をつくディン。僕とラギィは追いかけ、同じ高さの目線で語りかける。


「貴方が辛いのはワカル。でも、ティラが大事なら私達を信じて」

「…わかった。娘を助けてくれ」

「ティラはどこ?ティラはどこなの?」


一言でディンを口説き落としたラギィだが、金髪の元妻が怒鳴り込んで来て、全ては台無しとなるw


「ディン!貴方、なぜ目を離したの?何でちゃんと和泉パークに迎えに行かなかったの?!」


詰め寄る。背後から彼女の腕を抑える麻酔医。


「だから!貴方に親権を渡したくなかったのょ」

「とんでもない話だ!」

「黙れ。お前は口を挟むな、家族の問題ナンだ!」


妻or元妻を前に1歩も引かない男達。


「おい、私の子でもある」

「引っ込んでろ」

「ヤメて!良い加減にして!」


大声で割って入るラギィ。


「みんな。少し落ち着いて。力を合わせるの。OK?最近ティラの周りで何か変わったコトはなかった?」

「いいや。ないと思うな」

「貴方達は?」


麻酔医夫婦は首を横に。


「特には何も」

「私もょ」

「明らかに計画的な犯行なの。犯人は、ティラの行動を知っていたハズょ」


ラギィがケータイを示す。


「犯人からメールだわ。動画が添付されてる。本部のモニターに回すわ」


下から見上げるようなティラの画像。


"パパ。心配だろうけど、私は大丈夫。パパが言うコトを聞けば、私を逃がしてくれるって。警察には言わないで。じゃあ後で会いましょ?エースに餌をやっておいて"

 

胸に手を当てる金髪の元妻。


「無事なのね…」

「時刻が出てる。午前1時31分。送信されたのは、今から8分前だわ」

「無事な姿を見せて来たのは良いコトね。今は誘拐犯の要求に従っておくコトが大事。素直にね」


金髪の元妻が突っかかって来るw


「ディン、わかったわね?彼等の言うコトをキチンと聞くのょ」


ディンは、聞き流す。


「おまわりさん。最後の部分をもう1度聞かせてくれナイか?」


"エースに餌をやっておいて"


「エースって何のコトだ?」

「ウチは、ペットなんか飼ってないぞ」

「何かのメッセージだ」


断言スル僕。


「なるほど。頭の良い子だからな」

「人とか会社カモ」

「またメールが来たわ!"キャナルストリート680。30分後"」


ディンがウメく。


「俺が掃除してるビルだ」

「銀行とか入ってナイか?」

「いや。普通のオフィスタワーだが」


頭をヒネるラギィ。


「誘拐犯は、なぜ貴方が必要なのかしら?」

「そうか、わかったぞ。俺の生体認証でどのフロアにもアクセスが出来ルンだ」

「君は…鍵なのか」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


色めき立つ捜査本部。


「警部。今、オフィスタワーのオーナーに見取り図とテナントリストもらっています。メールで送ってくれるそうです!」

「ディンとタワーへ行ってみるわ。特殊部隊も配置済みょ」

「ラギィ。ディンを一緒に連れて逝くのはヤメた方が良くナイ?危険だわ」


ヲタッキーズのメイド達は慎重だw


「ディンは娘のために逝く。誰にも止められない」

「今は、こうする以外に他に選択肢はナイわ。テリィたんは、動画を隅々まで調べて。ティラの居場所を突き止めて欲しいの」

「ROG」


第4章 黄昏に帰る娘


特殊部隊の乗ったバンが夜の路地裏に停車。


「オフィスタワーから1ブロック先ょ」

「ディンさん。この隠しマイクとカメラで、貴方が見るモノや聞くコトは全てモニター出来る。私達はココで見てる。OK?貴方のケータイに来たメールもコッチでリアルタイムで読めるから」

「大人しく犯人に従って。無茶しないで」


狭い車内で振り付けるラギィ。うなずくディン。


「わかった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


全員が現場でモヌケの空の捜査本部。クラスの僕以外の全員が遠足に行ってしまって取り残された感w


ミユリさんが付き合ってくれるw


"パパ。心配だろうけど、私は大丈夫。パパが言うコトを聞けば、私を逃がしてくれるって。警察には言わないで。じゃあ後で会いましょ?エースに餌をやっておいて"


「背景は、全部真っ暗で特定出来るようなモノは何もナイな。うーん見つけ出せるかな?」

「撮影されたのは、1時31分だけど、送信したのは1時39分だわ」

「時々送信に時間がかかるコトってアルょね?」


ミユリさんは首を横に振る。


「テリィ様。8分もですか?ディンに聞かせたくて動画を作ったのに、すぐに送らなかったのはどうしてでしょう?」

「電波が弱かったとか?電波が届かない場所にいたとか。犯人は送信のために移動したンだ」

「どこか電波がある場所まで?ソレはつまり?」


机を叩いて立ち上がる僕。


「地下鉄か!エースはACEだ。浅草線、千代田線、江戸線さ。地下鉄の路線を現してルンだ」

「ティラは"地下鉄娘"だったのですね」

「待てょ?でも、3つの線が止まる駅って結構あるんだ。でも、3つの線全てが通る最後の駅は…運河通り駅(キャナルストリート駅)だ!何だょ!ディンが掃除してるオフィスタワーの直ぐ地下じゃナイか!」


僕は、両手で顔を覆う。


「こんな近くにいたナンてw」

「テリィ様、逝きまーす!」

「ミユリさん。ロケットパンツ、履いてる?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


運河通り駅(キャナルストリート駅)


「東側の駅務室と切符売り場には誰もいません。ココは無人駅です。テリィ様、どうかしましたか?」

「ココにいるのはビルに直接行ける出口があるからだろう?僕だったら、仲間と合流しやすく、なおかつ邪魔にならない場所、そういうトコロをティラの隠し場所に選ぶだろうな」

「つまりティラは西側にいると?」


ミユリさんって鋭い。まぁ感性似てると逝うか…


「可能性が高いのは、駅の見取り図だと西側トンネルの…ココだ。機械室(メカニカルルーム)

「テリィ様は、ココにいて」

「嫌だょ」


僕は、スーパーヒロインと一緒に走り出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。裏路地の黒いバンには、犯人からのメールが飛び込んで来る。冷静に読み上げるメイド達。


「"すぐ37階に来い"ですって」

「まだ最初に言われた30分が経ってないぞ」

「予定をズラしたんだわ。37階には?」

 

即答。


「テナントは入ってない。警備も手薄だ」

「テリィたんは?」

「ミユリ姉様と一緒」


スマホを抜くエアリ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地底超特急の鉄路に降り、西トンネルに入る。直ぐ機械室があり、鍵を電撃で破壊して突入スル。


「…いません。誰も」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ミユリ姉様は電話に出ません。既に地下鉄に入っているのカモ」

「よし。俺も行くぞ」

「ココでモニターしてる。心配しないで。何かあれば特殊部隊が突入スルから」


うなずくディン。だが、キッパリと告げる。


「だが、先ず娘を見つけてからだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


バンから降りてスタスタと歩いて逝くディン。タワーに入る。夜間のセキュリティに大きく手を振る。


「急に夜勤になっちまった。ついてないぜ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「よし。入ったわ」


黒いバンの中でカメラ画像を見ているラギィ。


警備員(ナイトマネジャー)は、うまく騙せた」

「カメラもマイクも順調にオペレーション中」

「ディン。何もかもGOょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


生体認証システムでエレベーターを呼ぶディン。37階を推す。が、27Fで突然止まり、ドアが開きサイレンサー付き音波銃を持った男達が入って来るw


「39階へ行け」


音波銃を突きつける。45Hz口径?


「先ず娘に会わせろ」

「おとなしく言うコトを聞けば、直ぐに会える」

「ホントか?」


39階のボタンを押すディン。

  

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「39階は何?テナントリストを確認して!」

「ブルックライト金融会社です」

「37階は囮ね…奴等は、顔を隠してナイ。用事が済んだらディンを殺す気だわ」


舌打ちするエアリ。


「レニィと同じように?」

「姉様ともテリィたんともつながりません」

「ラギィ。どーする?」


唇を噛むラギィ。


「幼女が見つかる前に突入すれば、親子共に危険だわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


地底超特急。機械室の前。


「テリィ様!」


地底超特急の鉄路の反対側。打ちっぱなしのコンクリート壁面の中に、金属製のドアがある。

ドアの下から光が漏れ、中では灯がついている気配だ。スマホを滑り込ませ中の写真を撮る。


幼女に音波銃を向ける人影。


「まぁ!突入したら殺されるわ」

「周りの電気を消せば、奴しか見えなくなるな」

「でも、テリィ様。瞬時に全部停電スル必要がありますが」


目の前のレニィボックスが目に止まる。今は青ランプが点灯している。


「おお?ちょうど良い。レニィボックスを使おう」

「彼女の発明がまた人を救うわ」

「ミユリさん、3でGOだ」


"雷キネシス"の構えを取るミユリさん。僕はレニィボックスを開けてスイッチに手をかける。スーパーヒロインとアイコンタクト。


「3、2…」


ドアを蹴り開け電撃2発。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


エレベーター組も大詰めだ。


「地下に行け」


禿頭が、ディンの喉元に音波銃をつけつける。

サブウェイの印のついた地下のボタンを推すw


「望みはかなえたぞ。娘に会わせろ」

「直ぐに会わせてやるょ」

「…悪いなディン。でも、お前はココで終わりだ」


機械音声。  


「ロビーです」

「え。B1を押したはずなのに、なぜロビーに?」

「俺に聞くな」


仲間割れを尻目にドアが開く…が、誰もいない。しかし、次の瞬間!


「抵抗を止めて武器を捨てろ!」


ラギィが拳銃を構える。特殊部隊が全員、拳銃、音波銃、短機関銃、ロケットランチャーを構えてる。


圧倒された禿頭は、ユックリと銃を下ろす。


「ティラは?」

「ディンさん…」

「警部、ティラは?!」


ラギィは答えない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバの黄昏。黒い雲が金の縁取りを(まと)う瞬間、電気街が黄昏に染まる。その瞬間を見たコトあるか?


「お先に」


署員が帰って逝く。人もまばらな黄昏の分署。ディンは粗末な椅子に立ったり座ったり。

僕とミユリさんに連れられ、やって来るティラ。父親に駆け寄る娘。父と娘は強くハグ。


ソレを微笑みながら、見ている僕達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり、後片付けの始まった捜査本部。


「犯人グループの主犯は、ロバト・キケド。昔は、債権トレーダーだった。今回の全ての計画を立てた。不況の中、手っ取り早く稼ごうとしたのね。金融会社に侵入スルには生体認証が必要と知ってた。だから、彼を従わせるために娘に目をつけた」

「なぜ金融会社の書類を盗むんだ?」

「公開されてない収益情報が満載さ。投資家にとっては宝の山」


そんなものかな、って顔のエアリ。


「レニィが、命を賭けて撮った写真が、犯人逮捕につながった」

「ソレと誘拐犯も捕まえた。まさに、ミラクル・ロマンだね」

「え?何ソレ?」


変な顔するラギィ。慌てる僕。


「いや、悲劇と言った方が良いカモ。まさに悲劇」

「誘拐とレニィ殺しの実行犯は、キケドに金で雇われてた。殺害と誘拐をアッサリ認めたわ。奴等はエレベーターに乗った時点で袋のネズミだったの」

「おっと!そういえば、ネズミに用事があったな」


慌てて飛び出して逝く僕。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


今宵の"潜り酒場(スピークイージー)"。あらゆるモノが散らかり、机や椅子が倒れている。


「私って最低」


ソファで頬杖ついてるスピア。隣に座る僕。


「まさか。そんなワケない。お前は最高に優しくて良い子だ」

「コレからシュリと会う度に"僕の親友を逃した子"って思われるわ」

「未だワカラナイ。自分で出て行ったんだ。とにかく、シュリだってわかってくれるさ」


スピアの顔は晴れない。ソコへ…シュリが御帰宅。


「Hi!スピア」

「シュリ!」

「会いたかった」

「私もょ」

「…何かあったの?」


御屋敷(メイドバー)の散らかりを見て驚くシュリ。


「セドアのコト。餌をあげた後に見当たらなくなっちゃった」

「逃げたの?」

「物をどかして家中を探したんだけど…」


しょげるスピア。


「どうやって逃げたの」

「ケージをキチンと閉めてなかったみたいなの。ごめんなさい。嫌われても仕方ない」

「ショックではあるけど、嫌いになんかならない」


スピアは上目遣い。あ、勝負に出たなw


「ホント?」

「だって、この様子を見ればわかるよ。一生懸命探してくれたんだね。僕のコトを考えて。それで、充分さ」

「でも、大事にしてたのに…」


正面を向き、スピアにハッキリと告げる。


「でも、君の方が大事だから」


キス。その時、奥からミユリさんの悲鳴。


「お!いたみたいだぞ」


僕が手を上げる。微笑の輪が広がる。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"地下鉄世界"をテーマに、地下世界に生きるバードテレパス、地底超特急のトンネル躯体に潜む海外ビジネスパースン、離婚した掃除人、金髪の元妻、ホッケー少女、探鳥家、老スーパーヒロイン、犯人を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、ハッカーの彼氏のペット預かり話などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりカタコト英語が標準語になりつつある秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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