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子供扱いしないでくれます?

  

  

  


 お買い物の前に何か食べたいと訴えた結果、アドルフは露店で串焼きを買ってくれた。喋り続ける私の口に、もう何か突っ込んどけとの思惑なのだろう。

 まあそのために騒いだのだから計算通りだ。ニコニコしながら、早速ちょっと硬めのお肉を口いっぱいに頬張る。



「ソースが甘辛で美味しい! これ何の肉?」

「ナゲヘラだ」

「なげへら? なにそれ」



 聞いてもよくわからない謎の肉だった。

 首を傾げながら二個目の肉を串から外してもぐもぐしていると、アドルフが別の露店を指差した。

 


「アレだ。あそこの店は、ナゲヘラの頭を丸焼きにしている」

「……」



 ……見るんじゃなかった。

 ナゲヘラという生き物は想像以上にコワモテだった。割けた口から覗く鋭く大きな牙、豚のような上向きの鼻に、額に生える二本の角。毛はなく、皮膚というより鱗のようなものに覆われた表面は、こんがりと炙られて……て、こっわ。何アレこっわ!!

 動物というかモンスターじゃん! 地獄の業火に焼かれたモンスターじゃん!

 アレをよく頭だけ丸焼きにできるな。店主どんなメンタルしてんのよ。魔道士かよ。


 口の中にあった肉を無理やり飲み込み、アドルフに笑顔を向けた。



「残り半分はアドルフにあげるね!」

「いや、お前が食えばいい」

「もうお腹いっぱい」

「……」



 疑うような目で私を見ながら串を受け取ったアドルフに残ったナゲヘラを消費してもらった。

 この世界で初めて苦手な食べ物が出来た。ナゲヘラ、覚えておこう。


 


 気を取り直して、先を急ぐ。

 本格的に日が暮れてからの森は、夜行性の魔獣が動き出すから危険度が高くなるらしい。できるだけ早く買い物を済ませて家に戻らなくてはならない。

 


「アドルフ、ここはもしや」

「雑貨屋だ」



 連れて行ってもらった一軒目のお店はアーチ型の入り口を潜ると小さな子供達がテンション高めに玩具を手に取っていた。

 店内は棚に雑多に積まれた商品で溢れており、積み木や謎の怪物の縫いぐるみ、剣や盾の模型やカンカンと音が出る楽器のようなものまである。



「いや玩具屋じゃん。子供扱いしないでくれます?」

「暇つぶしを選ぶには最適だろう? これなんかどうだ」



 アドルフが手に取ったのは、鉢植えにされた花の形をした玩具だった。手を叩くと音に反応して葉っぱやお花の頭をフリフリして踊る。どこかで見たことがある。元の世界の昭和の匂いがプンプンする。

 


「これの何が楽しいの?」

「こうして手を鳴らせば反応して動く。子供達に人気の商品らしい」

「いま、子供達って言ったな」

「……大人にも人気だ」



 確信犯め!

 私を幼児かなにかと思っているのか。失礼な。


 なんなら朝から晩までずっと手を叩いて花と踊ってやろうか? 毎日だぞ、本当にいいのか? と脅しをかけるとアドルフがスッと引いた。嫌らしい。だろうな。

 


「もう! もっと真面目に選んでよ!」

「じゃあこれは?」



 そうして次に手に取ったのは、ぬいぐるみだった。まん丸お目めの、梟に似たシルエット。どこかで見たことある。今度は平成の匂いがプンプンする。



「話しかけると返事をしてくれる、賢いぬいぐるみだ」

「知ってる」



 これ、この世界に私と同じ世界から来たやつ絶対いるだろ。しかも玩具業界で働いてたやつ。

 


「可愛いけど、暇つぶしにはならないかなあ」



 お喋りできるぬいぐるみを両手でもふもふしながら苦笑いを浮かべれば、ぬいぐるみが「なんねべなー」と独特の訛りで返事をしてくれる。君はどこの出身なの。

 


「ねえ、アドルフ。やっぱり本屋さん行こうよ」

「……ウタ、こっちも見てみろ。楽器はどうだ?」



 わざとらしく話を逸らしたアドルフを半目で見る。

 頑なに私を本屋さんに連れて行ってくれない。

 どうやら18禁BL本を買わされると思い警戒しているようだ。しかし、アドルフはわかっちゃいない。そこまで避けられると逆に気になるのが人の常である。これは何が何でもシリーズものの18禁BL本を大人買いして腐女子デビューを果たすしかない。今こそ新しい扉を開くのだ。



「アドルフ! 本屋さん行こう!」

「ここにも絵本ならあるぞ」

「絵本なんて読む歳じゃないから。もっと大人の本がいい」

「……お前の言う大人の本は買わないと言っただろうが」

「とりあえず一冊でいいから!」

「ダメなものはダメだ。他の物にしろ」



 くっ! 頑固すぎる。キッと睨むが、倍の目力で睨み返された。

 街に行きたいがために嫌がらせのように様々なBL本を買ってきてとお願いしたのがまだ尾を引いているらしい。アドルフは根に持つタイプだから。

 しかしそんなにこの世界のBLは描写が激しいのか。そんなにか。益々見てみたい。

 せめて店頭に平積みされているところを! 肌色だと評判の表紙を! どうか一目でも……!



「……わかった。じゃあ買わない。だから本屋さん行っていい?」

「何しに行くんだ」

「表紙を見るだけ」

「嫌な客だな」

「アドルフだって本屋に寄っても毎回手ぶらで帰ってきたくせに!!」

「絵本や図鑑は買って帰っただろう!」

「買えばいいってものじゃないんだからね!」



 玩具屋さんで揉める大人ふたりを子供たちが遠巻きにし始めた。

 


 

 

 

 

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