28話 #桃の花弁 浮気者めッ!!
今日は快晴。
雲一つないこの日に、俺は……否。俺たちは、大きな屋敷の前で立ち尽くしていた。
今日は4月25日。領主邸の瓦礫撤去バイト当日だ。
昨日は24日。しっかりと合格の旨の連絡が届き、今日の9時に来いと連絡があった。
俺と、神城と、英雄志願者3人ともに。
さて、改めて周りで一緒に立ってる人たちの足元を見てみよう。
……大体、俺たちと同じ足のサイズだ。
これはもう確定だろう。これはもう確実に、"魔族"である俺を捕まえる為のバイトだ。
あ〜、もう本当に嫌だなぁ。
本当に嫌だ。死ぬ未来しか見えない。
………しかも。しかも、だ。俺は今、認識阻害のアンクレットも、能力無効化の腕輪もつけてない。
誤魔化すために似たものを白兎に送って貰い、それを着けている。
何故って?簡単だ。それを着けていれば、簡単に俺の正体がバレてしまうからだ。
だって、能力無効化っていう能力がキチンと機能していれば、"魔族"を探す彼らは、俺を探そうとして能力が使えないことを悟るはず。
つまり、能力を使ってみて、そいつに使えなければそいつが”魔族“確定。
アンクレットもまた、誰かしらに会った後にそのあった奴を思い出そうとして思い出せなかった奴が"魔族"といった方法で、めちゃくちゃ簡単に分かってしまうからだ。
………って、手紙で白兎が言ってたから。
え?ああ、うん。俺がそう考えたわけじゃないよ?
いやぁ、アイツやっぱあったま良いよなぁ。俺普通に着けて行こうとしちゃったし。
「……………」
あれ?やっぱダメじゃね?こんなことも思いつかない俺、やっぱ死ぬくね?
あ〜、もう本当に嫌だなぁ。
本当に嫌だ。死ぬ未来しか見えない。
俺はチラリと隣を見る。隣に居る、2人を見る。
「あー、もうめっちゃ楽しみだわ。俺バイトってこれ初めてなんだよね」
「バイトかぁ。僕は畑の手伝いとかはしたことあるけど、あれってバイトに入るん?」
「それだったら俺だって実家の神社の神事とかは全然やったことあるけど……うーん、入らないんじゃね?」
神城と英雄志願者はそう和気藹々と話していた。
「……………」
もうツッコミを放棄するレベルの能天気さだ。
英雄志願者はともかく、多分神城と俺とじゃ心臓の材質は違うんだと思う。
うん、もうアイツらはいいか。
……で、とりあえず見た感じ、俺たちを含めて集まったのは7人
俺たち3人を除いたら、後は4人か。
小さい女の子と、背の高めなお姉さん1人と、ケモ耳?の生えたお姉さん1人の女子3人。
後はおじさん1人って感じだ。
小さい女の子が居たのは驚きだが、まあ俺は足大きい方じゃないし海外じゃ大きい人も多いか。
そんな風に一通り見終わった頃。
ゴーン、と9時のチャイムが鳴り響いた。
それと同時に、目の前の門番たちが動き始めた。
そして――門が開かれる。
同時に、向こうの通りから走る背の小さな男の子が来た。
「す、すいませーん!!遅れましたぁ!!!」
そう叫びながら、こちらにやってくる。
彼も含めて男5人。女3人。
計8人の……俺たちの、バイト生活が始まった。
……………
………
…
中へと入り、門番の1人に案内されていく。
そしてそのまま、広くて何もない場所。広場……いや、訓練所かな?
よく分からないが、とにかく広い場所へと連れてこられた。
そしてそこには、甲冑を見に纏った人……騎士が居た。
その人の前で立ち止まらせられ、門番の人は仕事に戻って行った。
そして、目の前の騎士が言葉を発した。
「本日より、ここで働く諸君へ。よろしく頼む」
「バイト説明を任された、ベルメスだ」
「これより君たちには簡単な自己紹介をしてもらう」
「右端の君から、名前と能力…そして運命値を述べよ」
「運命値に関しては、運命石を渡すので、自分の値を宣言した後にそれに触れよ」
威風堂々と、厳格さを感じさせるものの、淡々としている騎士様の声は、ピリピリと俺たちに威圧を与えた。
俺は、その声色にビビりながらも……運命値の発表。能力の発表。
決して知られたくない、この二つの情報……特に運命値は、知られた瞬間即処刑だ。
――が、俺はその問い聞かれて、心の中で笑った。
だって、その問いが来ることはもう既に予想済みであり……対策も既に講じたからだ。
これは彼女の手も借りてない、純粋な俺の作戦。
………その分成功するかどうかはちょっと怖いけど。
そして、右端だった俺から自己紹介を始めた。
「俺の名前は百歳 望。能力は、封印」
「相手の一部分を使えなくする、能力です」
まずは能力を、血の契約の能力でも実現可能な能力に偽った。
本当のことを言ったら、十中八九警戒されて、名前教えてもらえなかったりとか血が貰えなかったりとかしそうだったし。
……そして、俺は運命石に手を近づける。
大丈夫だ。大丈夫だ。絶対に大丈夫だ。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫―――
「256です」
石は256と数字を表した。
騎士様はうなずいて、隣の神城へと視線を逸らした。
そして、神城は続けて口を開く。
しかし、俺はそんな神城の声は耳に入らない。
ドキドキドキドキと、心臓が激しく脈打つ。
マジのガチで怖かった。マジのガチで怖かった!!
――俺は今の自己紹介の怖さに耽っていた。
……でも、とりあえず何とか成功したようだ。
……いやでも本当に、怖かったなぁ。
ガクガクと体が震えそうな恐怖を改めて自覚しながら、俺はこの窮地をなんとか乗り越えられたことを確認する。
……さて、皆様からすれば、一体全体どうやって俺が運命値を偽ったのか。
それが疑問でならないだろう。
理由は簡単。【血の契約】の能力を使っただけだ。
能力を使い、俺は白兎に手紙の返事と一緒に契約書を送った。
内容は簡単。表記される運命値を交換すること。
つまり、俺は魔族であるのにも関わらず、運命石に表せられる値は白兎の256という数になっている。
当然、白兎が同じく触ったら俺の運命値。−237と表示されるが、まあまず滅多に触れることはないし、アイツは幸運だし大丈夫だろう。
そして勿論、運命値0なんてのも見せたら大変になるだろうから……
神城は名前を言い終え、能力と運命値を話し出す。
「能力は、サイコキネシス。運命値は169です」
神城が運命石に触れると、169と示した。
神城は、古巣の運命値と交換した。
どうやら向こうでは、白兎は古巣にだけ俺たちのこととか影梨のことを話したらしい。
……俺はその情報を手紙で読んだ時、ただただアイツのメンタルが大丈夫かが心配になった。
ま、きっと大丈夫大丈夫。そう思っていよう。
騎士様は、隣の英雄志願者へと視線をズラした。
俺は思った。
そういえばまだ英雄志願者の名前、聞いたことないな……と。
前は意味深に名乗らなかったからな。
俺は耳を澄ませた。
……アイツは口を開き、言った。
「僕の名前は―――ヒミツです!!」
「…………は?」
英雄志願者が断言した、意味の分からないその言葉。
思わず目の前の騎士様が乾いた声でそう返事をしてしまったのも仕方ないと思う。
ここは、このフェールド領の領主邸。
となれば、勿論目の前に居る騎士と思わしき彼も、当然立派な地位に就いている筈。
………その方からの質問を、神城は濁した。ヒミツと言った。
「「……………????」」
場は混乱に包まれた。
そして、騎士様は聞く。
「なぜ、秘密にする?」
英雄志願者は答えた。
「好きな人に呼んで貰いたいから……かな?」
「だから、ちょっとこの場じゃ内緒ってことで」
そう言って、シーッと唇に指を当てた。
…………???
ヤバい、ちょっと意味が分からない。
自分の名前を好きな人に呼んでもらいたいから内緒??
別に内緒にしなくても呼んで貰うことは出来るよね?
……………???
意味が分からなかった。まあ、英雄志願者の意味分からない発言は今までも何度もあったし今更と言えば今更か。
……いや、だとしてもこの凶行は流石におかしいけど。
結局、何がなんだか分からなかったが、騎士様は問い詰めるのを止めて「続けろ」と言った。
「能力は、コネクト。異次元に空間を作って、2人以上の人たちを閉じ込められます」
「運命値は……3」
そして石に触れると、石も3という数字を表した。
他の誰も、その運命値に注目することはなかった。
だから多分、俺だけだろう……この数字に、引っ掛かりを覚えたのは。
だって……運命値、3?英雄になろうって言ってる奴が?
この世界のことは未だによく分かってはないが、とりあえずそれが無謀なことだってことは分かる。
……でも、これは本当か?俺はアイツが運命値が3の奴には思えない。
だって俺はアイツを心の底で何を考えているのか分からない……おっそろしい化け物だと思ってるから。
俺は、改めて英雄志願者を警戒した。
――残りは、俺たちを除いた4人。
次は、ガタイのいいおじさんの番だ。
「次」
「……え〜、俺の名前はドルダン」
「能力は、身体強化。運命値は15」
石は15を示す。
特に、気になるようなところは………ん?
待て。ちょっと待て。ドルダンだと?
どっかで聞いた……なんだ。どこで聞いたんだ?
俺は聞き覚えのあるその名前に、少し考え込んだ。
「次」
そんな中でも、当然自己紹介は進む。
次は、少し怖そうなお姉さんの番だ。
「私の名前はミントよ。能力はログ。過去の物の位置とか、そーいったものを見れる感じね」
「運命値は26よ」
そして、石は26を示した。
俺は未だに考えていた。
俺がそういった情報を聞ける場所は限られている。
例えば、英雄志願者から。例えば白兎……そうだ、そうだそうだそうだ。
俺は、それを手紙で読んだ。
…………あー、なんだっけなぁ。
依然として思い出せないまま、自己紹介進む。
次は、ケモ耳?の生えた女の人の番だ。
「私の名前はペシー。能力は拳を硬くすること。運命値は大体20くらい」
そして、石は22を示した。
……何だっけなぁ。
俺は、依然として思い出せない。
次は、少し幼い少女の番だ。
「わたしの名前は、イル」
「能力は、記録。いろんなことを記憶できる」
「運命値は27」
―――あ。思い出した。
白兎から貰った資料に書かれてた、英雄譚。
【ドルダンの英雄】
それと、あのおじさんの名前が同名だ。
何か、関係あったりするのか?それともただ同じってだけだったりするのか?
……分からん。マジで分からん。
そして、最後の自己紹介へと進んだ。
最後は活発そうな少年だった。
「わたしの名前は、ラットロット。能力は暗算。超速で色んな計算ができる」
「運命値は、105」
そして、石は105と示した。
その数を見定めた後、こくりと頷いて騎士様は口を開く。
「よし、それじゃあ最後に私も軽く紹介しよう」
「先ほども申し上げたが、私の名はベルメス。ベルメス・フォン・クロローラ。クロローラ家長男であり、姫様の近衛兵の任を賜った者だ」
「すまないが能力や運命値は公開出来ないこととなっている」
申し訳なさそうに……というよりかは、段々と。
騎士様は説明していった。
………なるほど。まあ確かに直属の近衛兵の能力が割れているのはかなり不利だよな。
ただ、だからこそ警戒を――
そう心構えをしようとしたその時。
「…………が」
目の前の彼が、視界からブレた。
そして――
――首筋に、剣が添えられていた。
…………へ?あ、これもしかしてもうバレた……?んぇ?
ドキドキドキドキと、心臓が縮み込む。全身から血の気が引いた。毛穴という毛穴が開く。鳥肌が立つ。手汗が湧き出るーーーー
あれだけ、死ぬような思いをしても……俺がこの恐怖を忘れることは、きっとない
俺は情けなくへたり込む。
騎士様は続けて言った。
「能力を使わなくても、私はすぐにでも君たちを縊り殺せる」
「ここは、姫様の家。下手なことは決してするな」
そう言って、騎士様は兜の間から俺たちを見つめた。
睨んではない……淡々と、無感情な瞳で俺たちを見つめた。
俺の中には、まだバレていないという安堵はなかった。
ただただ、数秒……されど、じっくりと……騎士様は俺たちに恐怖を染みつけた。
そして……、
「自己紹介は終わったな。それなら、次は君たちがこれから住まう施設の案内へと移る」
そう話題を切り替えていた。
ふっと圧が消えた。
俺はバクバクと動く心臓を感じ、心の中で慌てふためいた。
こっわぁ……え、俺これからこの人の側で生活していくん?え、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ普通に死ぬんだけど。
あー、もうマジで本当に来なけりゃ良かった!!
でも来なきゃ金がねぇしな!!八方塞がりだよな!クソがッ!
そんな悪態を吐き、そうしてなんとか俺は恐怖を落ち着かせた。
そんなこんなで俺たちがひとしきり落ち着いた後。
騎士様は話し始めた。
「最初はこの砂しかない広場について説明するか」
「ここは、基本的に我々騎士の訓練場となっている」
「その為、訓練時間内は皆さんはこちら立ち入り禁止とされている」
「それを承知の上で侵入するようなら、腕一本は覚悟しろ」
「それと、これから先紹介する場所以外の場所には、なるべく立ち寄るな」
「最悪の場合……それ以上の代償が生じる可能性もある」
俺たちは、抑揚のない声色で説明され、脅される。
……うん、怖い。
俺は身体を震わせた。
そして、騎士は次に奥の方にあった廃屋へと目を向けた。
俺は、あれが神城が火をつけてぶっ壊した所かと悟りーー予想以上にバキバキにぶっ壊れてることに、内心ビビりまくった。
これ、建て直しにいくらかかるんだろう……
そんな小市民丸出しの感想を抱きながら、ビビりまくった。
そんな俺の心情を意にも解さず……騎士は説明を始めた。
「奥に見えるあれが、このあいだ何者かに壊された……この領主邸の別館だ」
「明日から君たちにはあれの瓦礫撤去作業をしてもらう」
「仕事内容に関しては明日また説明するから、とりあえずはこの話はここで終わりとしよう」
そう締めくくって、騎士は館の入り口へと視線を向け……
「ついて来い」
そう言って、彼は、カツカツと甲冑を鳴らして歩き始めた。
俺たちはゾロゾロとその後をついて行った。
そして、キョロキョロとあたりを見渡す。
この領主邸は、レンガ造り。
未来で白兎たちが住まう別館と同じ材質だ。
そして俺は送られてきた地図を思い出し、未来と殆ど構造が変わっていないことを確認した。
つまり、白兎の言ってることは本当。事実。
今まで実感という実感はなかったが――
――俺は、本当に100年前に居るのか。
その事を、俺は事実だと認識した。
そして、案内されるがままに玄関から中へと入る。
「まずは一階。まっすぐ行って左の部屋が食堂であり、基本的に我々の使用する場所だ……が」
「今は、とある理由で、我々は使うことはない」
「基本的に君たちしか使う人はいないと思ってくれていい」
なるほど。とある理由……ね。何だろうか。
ま、追々調べていこう。
「後は階段は二つあるが、お前たちは食堂の近くの階段の方だけを使え」
「これは、絶対だ。もし他の方の階段を使おうとする姿をみたら、直ちに罰を与える」
また脅すような言葉。けど、流石にもう慣れてきた。
そして、騎士はその言葉を放った後、階段の方へと足を進ませた。
俺たちもゾロゾロと後に続く。
そして、全員が2階に上がったのを確認すると、騎士は俺たちの方に顔を向け、言葉を話し出した。
「さて、次は2階だ」
「2階は客室。すなわち、君たちがこれから住む部屋だ」
「それぞれ二人一部屋が貸し付けられる」
……え、一人一部屋じゃないのか。
その言葉に、俺は若干ドキリとする。
……仮に、ペアが神城以外だった場合……俺はかなり、行動が制限される。
契約書は無闇に書けなくなる。それが能力に関係あると気がつく奴がきっと現れるからだ。
血を溜めるのだって、結構危険になる。
あの時は試し忘れていたが、血は俺のある程度近くにない限り、契約は成り立たなかった。
つまり、契約書を作る時、必要な血液は自分の周りに置いておかなければならないのだ。
……バレる。確実に、バレて終わる。近くに血の溜まった瓶が大量におかれてるなんて状況、確実に能力に関係するって分かるだろ。
「組み分けは………」
そう言って、騎士は全員を見渡した。
頼む……!神城と同じであ……
「じゃあ、さっき名前を名乗らなかった奴と、服ボロボロの奴」
「お前たちはこの端の部屋」
………名前名乗らなかった→英雄志願者。
服ボロボロ………
周りを見渡してみる。皆身綺麗だった。
対する俺。日頃の不運から、ボロッボロになる俺の私服。
………英雄志願者とかぁ。これっ……え、嫌だ。
いやでも他の知らない人とよりか――
「よろしくね」
そう笑いかけて挨拶してくる英雄志願者を見て……
――いや、嫌だわ。
そう俺は結論を出した。
「服ボロボロの奴の隣のお前と、その隣」
神城とおじさん…ドルダンさんが指された。
「お前たちはその隣の部屋だ」
「で、成人女性2人はそこでペアで……その隣のこの部屋」
……名前覚えてない、女の人達。
「少年少女でそこでペア。更にその隣の部屋」
遅刻した彼と、少女が組まされた。
そして、一通りのペアを宣言したら、最後に……と前置きして、騎士は話し始めた。
「3階は決して上がってはいけない」
「そこには姫様の部屋があるから、防犯の観点から絶対にダメだ」
「以上が、ざっくりとした施設に関する説明だ」
「君たちは今話した部屋以外、基本的入らないように。……もし機密でも知ってしまえば、大変なことになるだろうから」
「気になるようなら、入って良いかの許可を取ってから入れ」
そう説明を締め括った。
そして、話を切り替えて……騎士は懐から紙を取り出した。
そして、「今後のスケジュールとしては……」と話し始め、俺たちに紙を見せた。
なんて書いてあるかは分からない。
けど、ありがたいことに、騎士は読み上げてくれた。
スケジュール
6:00 起床
7:00 朝食
8:00 業務開始
12:30 昼食
13:30 業務再開
16:00 業務終了
18:00 夕食
21:00 就寝
「……って、感じだ。この予定表は食堂に貼っておくから、必要があれば読んでくれ」
「以上で、説明は終わりだ。質問があれば、召使いに聞け。業務は明日からだ」
そう言って、騎士様は3階へと上がって行った。
なんか、予想以上にあっさり終わり、質問とかの受け答えもなかった。
とりあえず英雄志願者と「どうする…?」と話し、とりあえず相部屋に入ることとなった。
それにつられて、パラパラと皆も部屋の中へと入って行った。
……中は、流石領主邸と言うべきか、めちゃくちゃ綺麗だった。
広いし、ベットも宿屋のより断然ふかふか。
窓からの景色も良さげ。
服も用意してあって、めちゃくちゃに待遇が良かった。流石だ。
……その分、下手なことしたら処刑されそうな怖さはあるけど。
俺はキョロキョロと周りを見渡した。
すると――扉の下から、紙が生えてきたのが見えた。
英雄志願者に不審に思われないように、こっそりとその紙を取り、中身を見る。
三日後、朝六時に会おう。
そう、日本語で書かれていた。
つまり、差出人は神城。
……ここ来る前に言ってくれれば良かったのに。
俺はそう思った。
罠の可能性も少し考えたが……字の汚さ的に、恐らく本物だと思った。
さて、つまり神城と作戦会議的なのをするのは3日後。
それまでにすること……同業者たちからの、情報収集だな。
他にも色々と情報は掴みたいし。
俺は英雄志願者の寝転がる姿を見ながら、決心した。
絶対に、脱出方法なり何なりの糸口を使……
パリィィィンという音と共に、何かが飛び込んできた。
ヤバいとも何とも考える余裕もなく……俺は反射的に身体を操る。
俺は強張りかけた身体を脱力させ、その物体の軌道上から逸れる。
俺の頭上を通過したそれは……鳥だった。
英雄志願者は興奮して言葉を出した。
「お、ガンボーだ。田舎じゃよく見るのに、ここじゃ見ないからてっきり居ないのかと思ってた」
そう感心しながら言う英雄志願者に、俺は質問する。
「ね、コイツって何?」
英雄志願者は答えた。
「なんか、気が向いたら地上に刺さるまで降下してくる鳥。この鳥自身は能力のお陰で死なない、傍迷惑な鳥だよ。結構美味いぜ」
「ま、だからこそ人に当たって死んだりっていう不運な事故もあるし……」
そこまで言われて、俺は前に神城に言われた言葉を思い出す。
「不運が魔族の象徴って聞いたんだけどさ……こういう姿を皆に見せまくったりしたらひょっとして……」
英雄志願者は言った。
「……あ〜、疑われちゃうかもねぇ」
……俺は、この生活が予想以上にヤバそうだと、今すぐ辞表を出したいと……そう思った。
〜三日後〜
服は身綺麗。怪我は殆どない。……ただ、顔色を悪くして、俺は神城たちの部屋の前へときていた。
……え?情報収集?無理に決まってんでしょ?死なない、バレない、仕事するでもう精一杯だったぜ?
眠りだって浅かったし。英雄志願者の動向に気を張り詰めるのもキツいし。
……いや、ほんとにエグかった。でもここの不運にもいい加減慣れてきたし、流石にもう情報収集する余裕が出てきた気がするわ。
俺は近くにかけられていた時計を見る。3…2…1……………。
ゴーンという鐘の音。約束の時間、6時となった。
……さて、神城はこの3日間、どれくらい情報を集めたのか。
俺は期待を胸に、ドアノブに手をかけた。
そして、扉を開く……すると――
――獣人のお姉さんの胸を鷲掴みにする、神城が居た。
もう一度言おう。
――獣人のお姉さんの胸を鷲掴みにする、神城が居た。
「え、あ、ちょっ、待っ、弁か――」
俺は扉を閉めた。
……影梨……そうだよな、彼女のことをアイツは好き……。
俺は理解した。
神城、浮気をし――
「待って!!弁解させて!!」
――たことを。




