25話 #桃の花弁 血の契約
ヤバいよヤバいよ〜、マジで全然筆が進まないヨ〜。
忙しくって全然筆が進まないヨ〜
2日後に、バイトが始まる今日この頃。
久しぶりに届いた白兎からの贈り物に、俺は漸く出来るのだと心の中で踊り狂った。
近くで座っている神城もまたそわそわとしているように見えた。
まず、俺はカゴの中にあったビーカー、試験管をよそに、一緒にあった資料の内容を一つ一つ確認していく。
後ろから、神城がこの資料を覗き込んでいた。
一つ目の資料は、あっちにいるクラスメイト全員の能力と運命値の記録。
名前 影梨 瑞稀
能力 幻惑能力
運命値 64
名前 神城 結
能力 パイロキネシス
運命値 9
名前 白兎 三葉
能力 伝書鳩
運命値 256
名前 古巣 晶
能力 コピー
運命値 169
これを見て、一番最初に思ったことは、
神城の能力と運命値が違うんだが。
ということだった。
「ほんっと、怪しさなら右に出る者いないな、神城」
そう言うと、神城は少しカッコつけながら、
「どう、ミステリアスに見える?よくいる怪しさ全開の実は味方キャラに見える?」
と言った。
俺は、首を横に振った。
俺は呆れながら、心の中で「なんかもう今更だなぁ」と思った。
だってもう神城が怪しいのは今に始まったことじゃないし。
怪しさ全開の癖に脳空だからもう何も思わねぇ。
そうあっさりスルーして俺は他の記述を読んでいく。
影梨の能力……幻惑、ねぇ。
白兎曰く、影梨は"彼"らしい。
となれば十中八九能力に関しては偽ってる。
とはいえ、幻惑とは全く違う能力にも思えない。
一回二回は多分みんなの前で見せたからなぁ。
漫画の知識を借りるなら、光操作能力とかそんな感じか?
……考えても埒が開かないな。
「幻惑能力……カッコイイなぁ」
神城は影梨が"彼"と知りながらもそんな世迷言を言ってた。
コイツを怪しむのは時間の無駄だと改めて思った。
で、まあ白兎の能力はいいとして、古巣の能力、コピー。
「これ能力コピーとかそーいう最強系の能力じゃね!?」
そう興奮する神城をよそに、俺は一緒に送ってあった能力の説明が書かれた紙を取り出す。
どうやら古巣の能力は、一定以内の大きさのものをコピー出来る…とのことらしい。
神城の言った能力コピーとかそういうのじゃなく、あくまで3Dプリンタみたいに、物質に関連したコピーだ。
……機会があれば金貨コピーしてもらお。
そう思った。
ということで、一枚目はそれぞれの能力と運命値だった。
運命値に関してはマジで今のところあんまよく分かってないけど、とりあえず皆"魔族"じゃないのは純粋に羨ましかった。
ま、いいや。本題はこれじゃない。
貰った資料を捲ると、次に出てきたのは手紙を送って反応があった残りのクラスメイトたちの情報だ。
俺たち、2年1組の生徒数は12人。それと先生。
先生 鳴城 樹
出席番号
1番 影梨 瑞稀
2番 神城 結
3番 喜多原 大輝
4番 釧路 美鈴
5番 釧路 美玲
6番 栗木 涼太
7番 白兎 三葉
8番 仁香迫 雄一
9番 古巣 晶
10番 百歳 望
11番 吉野 照之
12番 綺羅星 光
この内、確認が取れているのが影梨、神城、白兎、俺、古巣の5人。
そして、俺たちが殺された日に学校を休んだのは釧路美鈴だ。
それで、俺に手紙を送らなかった期間の間に他の人と連絡を取った結果が、続いて手紙に書かれていた。
まず、鳴城先生、仁香迫、喜多原はどうやら同じ領の同じ街に居たらしい。
城から出たらすぐに合流するつもりらしい。
で、釧路 美玲と栗木と綺羅星と吉野は別の領に居るとのこと。
んで、吉野と栗木は同じ場所。釧路と綺羅星が同じ場所に居て、まだ出会えてなかった為、それぞれに情報を伝えてる所らしい。
………そして、あの日学校を休んだ彼女…釧路 美鈴とは連絡がつかなかったらしい。
彼女はこの世界に来ていないのか……はたまた何なのか。
ま、とりあえずこれも深く考えるのはやめておこう。
彼女が黒幕だから休んだ…なんてことを考えたって、そんなの根拠のない妄想。時間の無駄だ。
……それにしても、まだ本題の情報が出ないな。
3つ目はこの時代のここ、パリストフィア帝国の法律書とかそういった必要となる情報。
必要だけどこれじゃない!今欲しいのはこれじゃない!
「まだー?」と少し飽きてきた神城を放って、俺はガサガサと資料を漁る。
漁る。漁る。漁る――
――俺はガサガサと漁りまくり、そうして漸く見つけた。
目的のものを。
「能力の使用に役立ちそうな情報集!!」
その資料の表紙にはデカデカとそう文字が書かれていた。
ペラリと一枚捲ると、一ページ目には人体の構造…主に血液の動脈、静脈の場所が赤と黒で分けて書かれていた。
それを神城に見せると、「っし!いよいよか!」とガッツポーズをした。
そして、先ほどからずっと放置していたmlの表記が書かれたビーカーを手に取り俺は心から叫んだ。
「遂に……遂に、俺の能力を実験するぞー!!」
テンションが上がり、大声を出しかけるが、女将さんに怒られたくない為大き過ぎない声で叫ぶ。
「ウオォォォォー!!」
神城もまた、大きすぎない声で雄叫びを上げた。
さて、さてさてさてさて、この異世界生活が開始してから一週間以上が経ち、初日以降一向に2人の目があり、時間がなかったから触れられなかったこの能力!!
遂に!遂に試せる時が来ました!!
興奮が冷めやらぬまま、俺はガサガサと資料を手に取る。
俺は一ページ目から順に読んでいくことにした。
「まず、自分自身の体重から、血液量を計算して下さい」
「体重の約8%が血液とされています」
俺は、前測った体重のあたいを思い出す。
「体重か……俺は確か62キロだったかな」
「オッケー、62キロの8%……4.96キロ。まあ約5キロだね」
神城はスマホを取り出し、電卓でそう計算した。
俺は続きを読み進める。
「それで、血液の内の20%を失うと、出血性ショックに陥る」
「30%を失うと、死の危険がある……だって」
そう神城に伝えると、またもやポチポチとスマホを弄り、計算した。
「5キロの20%は、1キロ」
「5キロの30%は、1.5キロ」
「オッケー」
俺はその計算を聞いた後、資料の続きを見る。
1kg → 1000ml
単位の変換が書かれていた。
どうやら、俺たちはこれすら分からないと思われてるみたいだ。
「…………」
「なぁ神城、キロからミリリットル直せる?」
「知らぁん!!」
……ありがとう、白兎…!
俺は心の中でこの情報をくれた白兎感謝した。
で、まあそれはいいとして、あと最後に書いてあったのは止血方法。と……え?
最後に、念の為にと契約書の書き方というページが載っていた。
そして、そこには甲、乙とかなんとか書き方がズラーっと並んでいた。
俺は、パタリとそのページを閉じた。
「……ねぇ百歳、これってこーいう感じに書かないといけなかったりする?」
「いや……いやいやいやいやまさかまさかまさか。最初に能力試した時はやって貰ったからわからないけど、さっすがにこういう感じじゃ……と、とりあえずやってみよう」
心の中に沸いた焦りを少し隠しながら、とりあえず適当にパパパっと契約書を書いてみる。
小さめのメモ用紙を切り取り、そこに適当な契約内容を適当に書いてみる。
私、百歳 望と神城結は視界を交換することをここに表明する。
そう書いた紙を2枚用意した。
「……………何も来ないな」
「確か、前やった時は10mlって頭の中に来たんだっけ?」
「そう」
「「…………」」
俺はじーっと契約書の書き方と書かれたそれを見つめる。
そして……、
「と、とりあえずやってみるか」
「そうだね」
とりあえず、そのやり方で書いてみることにした。
そして書いてみたのが下のこちらです。
契約書
百歳 望(以下「甲」という。)と神城 結(以下「乙」という。)は、以下のとおり貸与契約(以下「本契約」という。)を締結する。
・貸与契約
甲の身体と乙の身体を互いに貸与し合う。
本契約締結を証するため、本契約書を2通作成し、甲乙相互に各1通を保有する。
718年 4月23日
甲 百歳 望
乙 神城 結
純粋に文字の量が多く、手が腱鞘炎になりかけながらも俺は2枚書き切った。
結果……今度もまた、何も起きなかった。
「……えー、何がダメなんだ?」
「誤字とかした?」
「いや多分してな……あ」
俺の脳裏に一つ、可能性が浮かんだ。
そしてその可能性が正しかった時のことを考え……俺は心の中から恐怖した。
「ごめん神城……ちょっと目を閉じて後ろを向いてくれる?」
その言葉に少し疑問符を浮かべながら……素直に神城は目を閉じ、後ろを向いた。
――俺は、百歳という偽名を消し、本名を書いた。
――10mlという言葉が、脳裏に浮かんだ。
俺の頭の中にはとある事実がこびりつく。
――"リリ"は、俺の本名を知っていた。
誰にも知らせたくなかった。絶対に隠そうと決めていた、俺の本名を、彼女が―――
呼吸が荒くなる。視界が歪む。上手く思考ができない。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――
どこで知った?誰かに聞いた?それとも能力??嫌だ、知られた。誰にも言うつもりのない名前を、捨てた名前を――
ぐわんぐわんと脳が揺れる。自分の存在が分からなくなる。冷静になれと自分に言い聞かせるが、全くもって通じない。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――
心臓が締め付けられる。呼吸が苦しい。息をしているはず。それなのに全然楽にならない。なんで、なんで、なんで、なんで、なんで――
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――
涙が溢れる。身体が震える。身体が冷え込む。手が冷たい。視界がぼやける。力が入らない。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ――
「落ち着け」
ポツリと神城が俺に言ってくれたその言葉。
その言葉を聞いて、俺は――初めて、息を吸った。
すぅ、はぁと、段々と冷静になっていく。
そして冷静に……目をつぶったまま、俺の肩を掴んだ神城を見た。
「目、開けた?」
「開けてない」
「そっか」
開けてないとなれば、それはそれでかなりの疑問が発生するんだがな。
何故、後ろを向いてたのに確実に肩を掴めてるのかって疑問が。
ま、今更だな。
「ありがとう、冷静になれたよ」
「そら良かった」
そう感謝を伝え、俺は改めて深呼吸をする。
……で、彼女はやっぱり俺の本名知っちゃってるっぽいかぁ。
嫌だなぁ。怪しさしかない人に周りにも秘密にしてることを知られるとかほんっとうに嫌だ。
でもま、知られたなら仕方ない。実害はない。
バラされたくなかったら何かしろとかっていう強請りがなけりゃだけど。
で、名前を書いたこれを神城に渡さないと…か。
俺は無言で名前を書いた部分を折り畳み、神城に言った。
「目開けていいよ」
「おう」
「一応できたからこれ持っておいて」
「うい」
「折り目の部分は絶対開けんなよ」
「了解」
そうして神城はその紙を手に取って、言った。
「これ、毎回こんな長いの書かないとダメなのか」
「……そっかぁ。ダルぅ」
俺はその言葉で初めて自覚した。
それと同時に、まだ希望を捨てきれずに適当に書いた方も本名で書いてみた。何も変わらなかった。
つまり俺は、今後この能力を使う時は永遠とこういった面倒な書き方をしなきゃいけないのか……はぁ。
今からでも別の能力にクーリングオフしたい……。
思わずそう思ってしまうが、とりあえずはまあいい。
で、次は10ml……とりあえず血をいっぱい出してみようかな。
俺は、白兎から貰った資料の一番最初の所にある血管の図解。
それの尺則皮静脈と思われる場所をナイフで刺した。
「え、ん!?」
「いや、血は必要だから」
「それはそうだけど……え、これ俺がおかしいん?」
そう慌てる神城から視線を外し、俺は血の出ている部位を見る。
どくどくどくどくと血が出てくる。
それをビーカーの中へと入れていった。
10…9…8…7…と、頭の中の数字が少なくなっていく。
空いている右手で止血方法が載っているところをみる。
①直接圧迫止血法
傷口にガーゼや布状のものを当てて圧迫する。
俺はとりあえずビーカーに500ml貯まるのを待ち、そして圧迫した。
なんとか止血は出来たみたいだ。
そのまま、その布を当てながら俺は足につけてた包帯を使って固定した。
「よし、とりあえずこんだけあれば今日使う分は足りるかな」
そう言った俺に、いやいやいやいやと首を振って神城は否定する。
「おかしい!え、怖いって!何普通に自傷して血採取してんの!?怖くないん!?」
「いや、まあ普段から怪我はしょっちゅうだし」
「そーいう問題じゃない!!え、俺もするん?」
「いや、ビーカーもうないしとりあえず他の容器に俺の半分くらい入れればいいと思う」
「え……」
「さ、腕を出して」
暴れる神城を鎮めて、俺は神城を切り付け、血液を試験管の中へと入れ始めた。
少しずつ血が出ていき……そして、
――そして、"契約"が発動した。
俺の視界が切り替わった。目の前には血が出ていく自分の腕が見えた。
視点を少し上げると、俺の姿が見てとれた。
あわあわと慌てているのが分かった。
俺は契約が発動したこと……俺とアイツの身体が入れ替わったことを、自覚した。
とりあえず俺は試験管3本分の神城の血を抜いた。
さっきまでの神城の騒いだ声が聞こえなくなり、楽になった。
「……自分が採血される姿を三人称で見るのってなんか複雑だなぁ」
そう言っているのを聞きながら、俺は神城の血を抜いた。
………………
………
…
あの後、血液を抜き終わった俺は色々と契約をしてみた。
まず、契約書を作る時に日本語じゃなくて英語で頑張って書いても発動。
リリさんもこの世界の文字で書いていたし、恐らくどの言語で書いても大丈夫なんだろう。
後それだけじゃなく、日本語と英語をごっちゃにして書いても大丈夫だった。
ただ、誤字脱字。ラフな書き方。なっていない文字構成なんかはやっぱり発動しなかった。
他にも服に描いたり木に描いたりしたが、それもまた発動しなかった。恐らく紙じゃないとダメなんだろう。
後は、俺の強制契約を神城に全て書いて貰っても使えたことから、誰が書いても契約はいけるみたいだ。
後、文字の大きさや紙の大きさ、色に制限はなかった。
だから、白い紙に白で書いて、見えない契約書を作っても発動した。
契約内容に関しては、他の人との交渉で……例えば神城の筋力を10分の1にする、なんて非現実的なこともできた。自由度はマジであるみたいだ。
ただ、強制契約の場合、無理難題であればあるほど……例えば神城が一生俺に服従するっていう契約内容とかだと、96リットルの血液を求められた。
そう、めちゃくちゃな量の血液を求められるんだ。
……これがまた毎日頑張って血を抜いて溜めていけば半年ちょっとで可能ってのが恐ろしい。
しかもこれに命令を全て聞く……なんていうのも追加すると305リットルになって……マジでえっぐい量必要になった。
ただ、この無理難題でも俺自身に負荷をかければ多少は契約に必要な血を少なくできる。
例えば最初の服従っていう契約内容に加えて、その間俺の左腕が使えなくなる…なんていうのを追加すると、必要な血液は32リットルと大分減った。
それでもめちゃくちゃ多いけどね。
ま、契約内容に関して分かったのはこのくらいだ。
最後に、契約失効の条件。
契約書は軽く削ったり、とりあえず契約書であることを認識できるレベルの損傷は問題ないらしい。
ただ、穴が空いたり、端をほんの少しでも削れても契約は解除されてしまった。
また、契約書の上から色を塗って契約書だと分からなくなるのもダメだった。
……これが、俺の能力について分かったこと。
まあ、暫くは能力を使う予定はないし、とりあえず毎日自分の血を溜めていっていこう。
一通り検証が終わった後、神城が言葉を漏らした。
「……俺がその能力ゲットしても、絶対採血できずに終わってたわ」
「そーだねぇ」
俺は軽く想像し……絶対そうなるなぁっと納得した。
「さて、それじゃあ次の能力を検証しようか」
「……え?次?」
「そう、次」
「次って、他に能力……あ」
俺には、血の契約という能力の他に、もう一つ借りている能力がある。
「リリさんから借りた能力……言霊操者」
「これの検証も、しないとね」
そうして、この能力も色々と試してみた。
「まず、今から手を挙げろって言うから、それをぐっと我慢して」
「うーい」
俺は一つ呼吸をした後、命じた。
「手を挙げろ」
その瞬間、ピクリと神城の身体は動いたが、手を挙げることはなかった。
「うん、身構えてれば効かないっぽい」
「なるほどね、とりあえずは情報通りだ」
――抵抗しようとすれば、簡単に抵抗できる。
他にも色々と、試してみた。
「あ、そーいやぁ雑巾がもうボロボロだったな」
「そーだったねぇ」
「ちょっと買ってきてくんね?」
「オッケー……あー、くそ!!いきなりこられると抵抗出来ねぇ!!」
――こうして会話の中に紛れ込ませれば、ほぼ全ての命令が効果を発揮した。
「俺……今から窓から飛び降りろ」
――ガリッ
――そしてどうやら、この能力は自己暗示にも使えるらしく……そして、
――俺はこの能力を使われた瞬間、爪で床を引っ掻く拒否反応を示すことが分かった。
――あの時、俺はリリさんに能力を使われたのだと確信した。
……………
………
…
一通りの検証が終わった。
神城の能力もやるか?と聞いたが、どうやらもう1人で検証しまくったそうだ。
……そして、夜。俺は白兎から帰ってきた手紙の、その一文に苦悩していた。
領主邸主催のバイトに申し込むのは大賛成!
十中八九採用されると思うし、頑張ってね!
……これ、おかしいよね。
だって、明らかにこの領主主催のバイトって危険じゃん。
なのに大賛成っていうのが意味分かんない。
それに頑張ってねっていうのも……純粋にバイトを頑張ってって意味でもない気がする。
……分からん。
そして、だからこそ返事どうしよ。
そう頭を悩ませ、ペンを持って回していると……神城は俺に言った。
「……ねぇ、手の震え止まってね?」
「え?」
その神城からの言葉で、俺はそれを自覚した。
俺は今まで白兎に手紙を書く時、いつも手を震わせていた。
ひとえに彼女への拒否反応のせいで、だ。
「ふ……は?」
それがない……つまり俺は――
――アイツを嫌いじゃなくなった?
嫌、いやいやいやいやいや……俺は未だに彼女への嫌悪感だって持ってるし、大っ嫌いだとも思ってる。
でも身体がもう震えてなくて……え、え、え?
その瞬間、ガタンと椅子から転げ落ちる音と共に……俺は意識を失った。




