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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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青の月が昇るまで

僕らのチームはブカスの森街区から東方面へ繰り出した。新たに区画割した別荘地だ。

つい先日、テノーラさんやテッテラさんの別荘建設を許可したばかりなのに、既に基礎は出来上がっていて、上物をドワーフ達が忙しなく造っている。予定ではあと二日で完成予定だという。早すぎる!さすが一流のドワーフだ。


「今日は『青の月』が出るから、早めに引き上げてね。この辺りの結界はまだ薄くしか張られてないわよ」


「分かった。区長、そうさせてもらうよ」


思った以上に街区長としての仕事をきちんとしているんだなと感心する。

やはり適任だと思う。「暫定」を取って、正式に赴いてもらおう。


「ユリアスくん。もう少し奥に行こう。あんまり近いと敷地内に被害出ても困るからさ」


当然の判断だ。

結局、別荘地から5kmほど東南方向の奥に入る。僕もチョコレッタも入ったことのない辺りだ。


「地図では今はこの辺りだね」

「そうね。ベースはこの辺りでいいんじゃないかな。

それにしても、アンフィ姉さんは凄いわね。この地図をよく作ったわ」


まったくだ。アンフィの地図はよく出来ている。足を使って調べたのだから頭が下がる。【気配消滅】スキルを獲得したおかげで地図作りが捗ると言っていたことがあるけれど、それにしても労力は計り知れない。

今度、改めてお礼しておこう。


日のあるうちに灯りの準備だが、チョコレッタが持参してきたランタンはとても明るかった。なんでも「マルマジロ」という魔物の魔石を使っているらしい。

ベースとなる場所にランタンの設置、視界を遮る林内の細い木々や下草を刈る。結構な範囲だったけれど、チョコレッタが『ファイヤーカッター』で見事に空間を作る。


「凄いな。火の魔術は完璧?」

「うーん。特殊なのを除いてはだけどね。あとは威力と精度が課題なの」


僕も負けてられないな。


「整地」


開かれた空間の地を【整地】スキルで整える。このスキルは「土の加護」を得てから使えるようになったんだ。地表が踏み固めたようになるスキル。普段は役に立つのかなと思っていたけれど、開拓地の多い僕の領では使えるスキルかもしれない。


「ところでファーファ。さっきから何にもしていないよね!?」


そうなのだ。スールヤは先行して2、3の魔物を退治してくれたりしている。

ファーファは僕らのそばで見ているだけだ。


「だ、だって、何もすることないじゃないですか! 一人で森に入るのは自殺行為ですよ!? 」


確かにそうなんだけれどもね。魔術の訓練とかできるんじゃないの? メイスの変化が得意なのだから、それに磨きをかけるとかさ。

まあ、いざとなれば、怖がりながらも、魔物と対峙してくれることは知っているから、放って置くことにする。


「それでは、このベースを整えます!

そういうのは得意ですから!」


ファーファは切り倒された木から簡単なテーブルや椅子を作る。元の形状を利用した簡単なものだけれどね。

木を切ったりするのにメイスをソードに変えたりするのはどうなのだろう。使い方間違っているよ!?


それからスールヤとファーファは夜通し焚くことになる篝火のための薪をせっせと拾う。

僕とチョコレッタはベースの結界作りだ。彼女が持参した結界札をあちこちに貼る。ショー(にい)と奥さんであるエルフのマトリさん作だというから効果は疑わない。



「さて、もうすぐ日が暮れるね。打ち合わせしておこうか」


ベース内が比較的安全だとは言え、そこに(こも)っていては経験値は上がらない。以前の時と違って、今回は経験値上げとスキルアップが目的なのだ。


「4人一緒に行動するよりも二手に分かれる。僕とチョコレッタ、スールヤとファーファ」


「えーっ!それはズルいです!そっち、強いじゃないですか!」


「だからだよ。実力のある者と、そうではない者とが組むと、実力のある者に負担がくるし、片方は甘えてしまうから」


「そんなぁ。ちょっとくらい甘えてもいいじゃないですかあ。森ですよ? 魔物いっぱいなんですよ?」


「大丈夫だよ。スールヤも「剣士」だしね。

ただし、スールヤも無理はしないようにね。基本的にベースに戻れる位置でね」


「かしこまりました」


実の所、スールヤの実力は知らないんだ。けど、サリナが僕に付けたのだから、結構強いのだろう。サリナを信頼している。今晩、よく見て(うじ)名を付けてあげたい。


なんか、ファーファはスールヤに甘えて「キャーキャー」言っているだけのような気がする。


「そうだ。今晩でスキルやレベルが合わせて2つ上がらなかったら、罰則があるから」

「ふえ? な、なんです? 罰則って?」


「ムワット石の採取をひとりで2回してもらうから」


「ひえー!そんなのあんまりです!」


苦情は受け付けない。

やはり、ムワット石の採取が大変なことは分かっているようだ。もたもたしているとモグラットに襲われるし、3日間は隔離されるからね。


そうこうしていると、日が暮れた。あと2時間くらいで「青の月」が昇る。その2時間後が僕らの魔物狩りのスタートだ。



スールヤ……アントラー的にはサリナの孫にあたる。サリナの群れを引き継いだ次女・ディアドフィンの長男。(サリナの長女はアンフィ)

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