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ブカス街区見学会

ユリアスの昇爵式、婚姻の儀に参列した者の内、希望者がパドレオン伯爵家の軍事演習を見学した。

さらに希望者が開拓の進む「ブカスの森」へ見聞しに行く。


ユリアスの考えているよりも大規模な開拓で、一部が終えただけでも500㎡の広さ+ムワット石の採取場だ。ビレッジユリアスと同じくらいだ。


見聞客を出迎えるために、現場責任者のチョコレッタは先行して「ブカス街区」に戻っていた。


総勢50余命の見聞客一行は大きな荷馬車3台に乗合わせて向かう。

僕らは馬車に乗り込み、ツキシロの先導でブカスの森へ入る。馬車は3台だけれど、それぞれがものすごく大きい。


その荷車を引いているのは大きな馬だ。


あれはイーナだな。耳が4つあるし。あれとあれはニーナとサンナだ。尻尾が多い。


いつの間に整備したのか、しっかりとした道で幅も広い。


参加した他領の方達は落ち着きがない。びくびくしているようだ。

見聞に行くだけなのに、完全武装している人達が多いのは何故だろう。

僕達にとっては慣れた森でも、魔物が多く普通では縁のない場所ということか。


街区の少し手前で馬車を降りると、ツキシロが森での注意点を述べていて、所々、スイレンが補足している。良い夫婦だと思う。



開拓地は想像していたよりも大きかった。

ツキシロが街区の説明を大まかにしている間にチョコレッタを労う。


「すごいね、チョコレッタ。大変だったでしょう!? 報奨も上乗せするよ」


「ホント!? やっぱりユリアス君はサイコーだね」


以前はこういうくだけた言い方をチョコレッタがすると、皆が険しい顔で注意していたけれど、最近は苦笑いで黙認している。

人の目がある時はきちんとわきまえているからね。


チョコレッタに連れられて僕と妻たち、(エリナ)姉さん、イブさん、テノーラさんと街を見て回る。何故かイスカンダリィ公爵と孫娘のマリアージュも一緒だ。


各施設を案内の元、見学していると、方々からチョコレッタに声が掛かる。中々の人気だ。


「信頼されているんだね」


「普段は私達以外に魔物に対抗出来る人がいないからね。他の人の強さを知らないからね」


そういうことじゃないと思う。(おそ)れられているのではなくて、本当に親しげに声をかけられているのだから。


「ねえ。チョコレッタ。このまま、街区長やりなよ」


「ええーっ! 無理無理っ!」


「どうしてさ。皆に慕われているし、纏める力があると思うよ」


「いやいやいやいや。そんなことないって! 皆が反対するよ!?

ねえ、エリナ姉さん、サリナ姉さん?」


「そうね。悪くないわね。いいんじゃない!?」(姉さん)

(わたくし)も良いと思いますわ」(サリナ)


「!? ち、ちょっとーっ!」


『お爺様。雑談しながら、軽い感じで街の責任者が決まりそうですわ』(マリアージュ、こそこそ)


『儂らが聞いてもいいものなのか? 聞いていない振りをしておこう』(イスカンダリィ公爵、こそこそ)


「まあ、後でツキシロの意見も聞いてみるよ」


「な、なな、何か決まりそうな流れよね!

ちょっと待って、私は欲張りよ!

報酬は金貨3枚!どう? 法外でしょ!?」


「それくらい当然でしょうね。ここが管理するようになるムワット石をちょこっと売れば、問題ないわね」(エリナ姉さん)


「ええーっ!? そ、それだけじゃないわよ。えっとね、ジュオンさんが補佐してくれないと引き受けないわ」


「ジュオンさんなら説得できるわね」


「えーと、まだ、あるわよ。私が直接退治した魔物は魔石も遺物(ドロップ品)も、私が貰うわ」


「ビュウロンがどちらも貯まって仕方がないと訴えてたから、ちょうどよろしくてね」(アンフィ)


どんどんドツボに嵌っていっている。少し面白い。


「まあ、よく考えておいてよ」


慌てて結論を出す必要はないけれど、早めに決めたいものだ。僕的にはチョコレッタ一択だ。


森の開拓について、僕は姉さん達と何回か話し合ってきた。財政的にはムワット石の採取で十分だ。もちろん、流通量など慎重にする必要はあるけれど。

となると、ある程度、自由に街造りが出来たらと思う。コルメイスのような街にする必要はない。


「ねえ、ユリアス。何を考えているの?」(マーベラ)


「この森がきっかけで僕達は強くなれたと思うんだ。だからね。チョコレッタもここで過ごせば、魔術師としてもっと成長できるかなって」


チョコレッタやファーファなんかにもっと成長して欲しい。

彼女達に限らずに、この森は利用する皆が成長出来る場に出来たらと思う。


「全て自由にって訳にはいかないけれど」

「そうね。でも領の底力を上げるのにいいわ」(姉さん)


話を聞いていたイスカンダリィ公爵が、


「パドレオン卿。ここに儂の家を建てる訳にはいかないか?」


と言い出した。


「えっ? どういう意味ですか?」


話を聞くと『別荘』を建てたいという。


貴族の提案や要望は即答を避けるんだよね。


「検討しましょう」

「お願いしたい」


横目で姉さんを見ると無表情だ。何かを考えているに違いない。




半日かけての見聞会を終える。途中で『キラーラビット』が数頭出て、ちょっとした騒ぎになったらしいけれど、特に問題はなかったらしい。


来賓の貴族達が帰っていき、僕らは平常の生活に戻るのであった。

ただ、イスカンダリィ公爵と孫娘がコルメイスの宿屋に居残ったけれど。

ユリアスは平常の生活に戻ると言っているが、儀式の前、ツチグサレ消滅から帰ってから、様々な変化が起きている。

財政は潤い、民意は高く、軍事力も高まった。

王国の東端の…と侮っていた貴族達にも注目、いや、注視されている。

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