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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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儀式の裏で(ビュウロン編.2)

荷運びを手伝ってくれたルドフラン兄さんが、現状を知り、人を集めてくれた。荷運びのではなく、その後の整理要員をだ。

集ってくれたのはサリナ様が直属として召し抱えられたツムギアントラー族から10名、兄さんの家臣のヒューマン5名、手の空いているアントラーの者5名の合計20名だ。

ありだかい。もちろん、整理も仕事なので対価は支払う。財務管理の予算の中からだ。


助けもあり順調に進んでいたのだが、兄さんが申し訳なさそうな顔をしながら寄ってきた。


「どうだ?進んでいるか?」


「ええ。おかげさまで。それでもこの量ですからね。あと数日はかかりますけれどね」


「そうか。それでこの量が収まるのか?」


「それも運び込まれたコルメイスバッグを駆使して、収まりますよ」


「それなんだが、コルメイスバッグはほとんどが軍の備品なんだ。儀式の後の公開演習などで、使わねばならん」


「えっ? それはどういう意味ですか?」


「……コルメイスバッグは回収だ」


「はあ!? 無理無理無理無理! コルメイスバッグが使えないとなると、到底収まりません!」


「すまん!」


なんということだ。収納場所がない!

しかし、ルドフラン兄さんの立場上、仕方ないことなのだろう。

それでも、食い下がって50ほどのバッグを確保した。


足りなければ用意すればよいのだが、生産が追いつかない。原料であるワームは研究所で飼育されているが、そこまで増えていないという。とても貴重なのだ。


ツマミエ殿が急いで計算したところ、地下倉庫を満杯にして1/4ほどを収められる。残りの3/4をどこに収納するかだ。



急いでエリナ様に相談した結果、ビレッジユリアスの敷地内に置くしかなくなった。ただ、積み上げて放置というわけにもいかない。板塀で囲うことにし、設置をドワーフ達に依頼する。


数日かけて全ての品の検品を終えた。総点数14,625だ。手伝ってくれた者も含めて疲労が激しい。私は彼らに感謝を述べて解散してもらった。

本当は彼らを解放したくなかった。

地下倉庫の方は結界と施錠で防犯できるが、地上の囲いの中に置かれた物は人が警戒に当たらねばならないのだ。


全部で8箇所の置場を私とツマミエ殿の二人で警戒しなければならない。


無理だ!

私はラトレル殿に泣きついた。

良かった。人員を出してくれることになった。



さらに2日後。

急ピッチで地下の再々拡張が行われている。

来賓に不格好な囲いを見せる訳にはいかない。見回りの人員も元来の警備の仕事があるし、いつまでも拘束はできないだろう。


「ビュウロン」


執務室で仕事をしていると、サリナ様が訪ねてこられた。


「どうかされましたか?」


とても嫌な予感がする。


「実はこれらの物を収めて欲しいのです」


やっぱりだ。

私は書面を渡された。そこには品名と量が書かれている。


「こんなに? これは一体何なのでしょう」


「私がアントラー族の族長となったのは知っているでしょう? 私の統括することになった種族からの献上品の目録です。もう既に届いているのですよ」


サリナ様に対して私には断るという選択肢はない。

ない……のだが、物理的に無理なのだ。


「えっと。今はどこに保管なされて?」

「この屋敷の空き部屋です。

しかし、私達の儀式に来られる御来賓の御部屋も用意せねばならないでしょう。その方達が間違えて入られてもご迷惑おかけしますからね。 早めに移動したいのです」


理由と状況は分かりました。


さて、献上品となると野積みする訳にはいかない。

室内で保管出来るところ……。あった!


結果、アントラーの各種族の献上品は研究所に運び込んだ。研究所には幾つも空き部屋がある。それも一部屋が大きい。アンフィ様にお願いした。


まだ苦難は続く。

ブカスの森の開拓地から退治した魔物の魔石、ドロップ品が送られてくる。

さらにさらに、儀式が近づくにつれ、貴族からの祝儀品が次々と届く。


ビレッジユリアスのユリアス様の屋敷以外の空き部屋は、それらの品々で埋まることになった。アントラー、ムネアカアントラー、ワイルドキャッスルの寮の空き部屋だ。


この試練も儀式まで……と願いたい。



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「最近、ビュウロンの顔色が悪くない?」(ユリアス)


「なにかと忙しいようですよ」(サリナ)


「人が足りないと虚ろな目で言ってましたね」(アンフィ)


「そうなんだ。大変そうだね」


「アタシのところ(ワイルドキャッスル)は頭使うの苦手だからなあ」(マーベラ)


「「「そうだね(ですね)」」」


「ひどい!」


「専属で何人か付けてあげようか」


「はい。追々に」(サリナ)


「ええ。追々に……」(アンフィ)



まだ、しばらくはビュウロンの苦難は続きそうだ。


「それよりも旦那様(照)の昇爵の際の剣ですけれど、もう少し(きら)びやかにしましょう」(アンフィ)


「それはいいけど、派手派手にはしないでね」


「気品のあるように仕上げなさいね。

アルセイデスでインコの魔物の羽を得ましたよね。あの色合いは上品で良いのではないかしら」(サリナ)


「防御面を考えると、『キルモモンガ』の魔石を埋め込むのもいいんじゃない? 綺麗だしさ」(マーベラ)


「そうね。その2点はビュウロンに用意させときましょう」


まだまだ、ビュウロンの苦難は続きそうだ。



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