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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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儀式の裏で(ビュウロン編.1)

私はユリアス様の屋敷の前に小山の様に積まれた荷の前にいる(7、8mほどの高さの小山)。ほとんどがバッグや袋で、中に品々が入っているのだろう。それらに入りきらない大きさの「龍の鱗」?、まさかな…はははっ…そういう大きな物も散見できた。


「ほらな。大量に持ち込まれただろう!?」


横で呆気に取られているのはツマミエ殿だ。

ツマミエ殿は屋敷の地下倉庫の番人として雇われていた。ユリアス様の私財の管理として。

今は領の財務官として私を補佐してくれている。


王都の学園で経済学を学び、各地の公爵家の財政を立て直し、引き抜かれて女王陛下の弟君の領地の財務官僚を務めたという。

私はエリナ様に何度も訴えて、私の配下に雇用してもらったのだ。と同時に私財の管理はしない方針となった。

現状、男爵領として公財=私財で、余程の宝物でない限りは分ける必要はないとのこと。

余程の宝物とは「水の宝玉」などの通常は望んでも得られない物とか女王陛下から下賜された稀品とかだ。


パドレオン男爵領は武に秀でた者が多い。逆に文官は非常に少ないのだ。ツマミエ殿のように実績のある者を放っておけるわけがないではないか。


「半信半疑でしたが……。

地下倉庫拡げて正解でしたね」


私はユリアス様が出征された時から、こうなることを予想していた。大量に持ち込まれるだろう物品に対処するために、地下倉庫を3倍程に拡げたのだ。その広さは100㎡だ。


「うん。なんとか収まりそうだな」


余裕をもって収納できそうだ。

まあ、整理して収納するのは骨が折れるがなんとかなりそうだとほっとしていると、ユリアス様が寄ってきた。


「ビュウロン。ちょっと多くなったけれど、よろしくね。

それと、金剛石10kgくらいとオーガの魔石5個を使いたいんだ。後で持ってきてくれる?」


「畏まりました。どちらにお持ちすれば?」


「そうだなあ。防具を作りたいから、研究所まで」


ユリアス様は相変わらずお忙しいようだ。


ユリアス様は去っていかれた。




「………」


「どうした? この中から特定の物を探すのは確かに大変だがな」


積まれているバッグや袋は軍の支給品で、外見は同じだ。この中から探さなくてはならない。


「あ、あのう……このバッグなんですが……コルメイスバッグです」


「えっ!?」


手に取って見ると、確かにコルメイスバッグだ。

ということは目の前の小山の10倍ほどの量?


私も言葉を失った。


しかし、主命だ。お望みの物を取り出さねば。


「と、とりあえず、手をつけよう」


ところが……。


「あの……」


言わなくていい。私にも分かった。分かってしまった。


コルメイスバッグの中にはコルメイスバッグが入っていた。10個ほど。

ということは眼前の小山の100倍?

くらっとする。


「とにかく、探そう。その後で色々と考えよう」


「そ、そうですね」


バッグを(あさ)る時間が続いた。


「あーっ!ありました!う、うううぅぅ」


「泣くな!良かったあ!」


時間が掛かってしまったが、無事に届けることが出来た。


「これから、どうします?」


気づけば、小山は10盛となっている。それでも、まだ1/3もバッグを解いていない。


「バッグを開くのは止めて、まんま倉庫にしまうしかあるまい。空になったバッグにも入れ直ししなくては」


屋敷の前に高価な品々を置いて置く訳にはいかない。


黙々と入れ直す。


「ビュウロン様。それでは駄目です」


「何故だ? このままにはしておけないぞ!?」


「バッグに入れ直すのはそうなのですが、せめて、取り出した品々は分かるようにしておかなくては、同じことが起こりますよ」


確かに。また、いつ、何かを持ってこるように言われるか分からない。現状で分かるものは区別しておいた方がよいか。


ツマミエ殿は札を持ってきて、中身を分かるように書き、バッグに付ける。小山の極々一部だけれども。


日が沈み、しばらくしてやっと、元の小山一盛りに量的に戻った。

それを地下に移動させなくてはならない。いくら治安が良いとはいえ、最近は不審な者が入り込んでいるので注意するようにと言われているし。


二人で必死に運んでいるが、明日までに終わりそうにない。

公務の場となっている屋敷から仕事を終えて出てくる者を片っ端から巻き込んで運搬を手伝ってもらう。


「あっ、ルドフラン従兄(にい)様、少しで構わないので手伝ってください!」

「お、おう!」


「ヌカサン。此度の遠征、ご苦労だったな。

すまないが、遠征の戦利品を運ぶのを手伝ってくれないか」

「わ、分かりました。お手伝いいたします」


それで深夜にようやく運び終えたのだった。



翌日となり私は『儀式会議』に出席する。

私の担当は儀式に関わる予算の管理だ。私の計算では赤字にはならない。結構な黒字となるはずだ。来賓からの祝儀が見込めるからな。


正味の話、我らが領の財産は国を一つ二つ買えるほどある。問題なのが、そのほとんどが貨幣ではなく現物なところだ。現金化を慎重にしなければ、物品の価値・価格が大きく変動し、経済が混乱してしまう。

それ故に、宝物の管理が大変なのである。


私が会議に出ている間、ツマミエ殿は昨日の宝物の山を一つ一つ整理しているだろうな。

申し訳ないが、会議が長引けばいいと思う。すまぬ、ツマミエ殿。


私は会議を終えて、地下の執務室へ戻る。

やはり、ツマミエ殿は必死に整理していた。


「ツマミエ殿、戻ったぞ」

「お帰りなさいませ。では、早速、ビュウロン様も整理を」

「はあ。分かったよ」


その日、日暮れまで品々と向き合ったが、全体からするとほんの少しを終えただけである。

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