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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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ブカスの森の開拓

私はチョコレッタ。パドレオン男爵領の魔術師。領主のユリアス君はもうすぐ伯爵に昇爵するんだって。すごいよね。


今、私はブカスの森にいる。なんだかんだでこの森とは縁がある。

この森をパドレオン領として開拓しているところなの。私は開拓する人達の警護をしているの。これはギルドとしての仕事ではなくて、領から委託されたってこと。


開拓の責任者はツキシロさん。一緒に魔物と戦ったこともある顔見知り。

でも、ツキシロさんは他にも仕事があるらしくて、あんまり顔を出さない。人工(にんく)の人達に地図を見せて、どこをどう開拓するか指示を出して、たまに進捗を確認しにくるくらい。

私も地図を渡されている。どこで作業をしているか分からないと警護もできないからね。


「嬢ちゃん!キングボアが出た!」


仕事だわ!


「分かった!すぐ行くわ!

ほら、ファーファ!行くわよ!」


私のチームとして連れてきているファーファに声をかける。彼女はCランクの魔術師。


「き、き、キングボアなんて無理ですーっ!」


相変わらず臆病なんだから。

確かに『キングボア』はBランクの強い魔物だけれど、退治の仕方を知っていればそんなに怖くない。


「いいから!」


私は首根っこを捕まえて引っ張って現場に向かう。


そこにはでっかいキングボアが「フーッフーッ」と鼻息荒く周りを威嚇していた。脇を見ると『コカトリス』が横たわっている。

あー、あれはキョナンのテイムモンスターね。魔石になっていないので死んではいないみたい。気絶しているだけでしょう。その隣で呆然としているキョナンがいる。


「みんな、離れて! ファーファ、鞭で攻撃! こちらに意識を向けさせて!」


「こ、こわいーっ! えいっっ!!」


そう言いながらもファーファはメイスを炎を纏った(ウィップ)に変えて、キングボアに一撃。

なんだかんだファーファはしっかりとやることはやってくれる。


キングボアは直ぐにこちらを凝視して、ブルっと体を震わせた。


「来るわよ!」


私、正確には隣のファーファに向けて突っ込んでくる。


『どごおっ!』


キングボアは石の壁に激突した。

そう、石の壁は私が出したもの。【ストーンウォール】だ。

動きの止まったボアに【ファイヤー ディアゴナル】で止めだ。

ふう、無事に退治して、大きな魔石と金色の牙を手に入れた。


「嬢ちゃん。助かったよ」

「仕事だもの、当然よ。それより、怪我人は?」

「二人だ。木陰にいる」


怪我人を出してしまった。これは私の失態だ。

すぐにマンマルポーションで治したけれど、怪我をさせてしまったのは事実よ。後で報告しなくちゃ。


「ポーションで治ったとはいえ、今日は休んでね。

キョナン!いつまでも呆けてないで、二人を寮まで送って!

…それで、この辺りはコッコの飼育場予定地だったわよね。進捗は?」


「それが、土中の根が固くてな。芳しくないんだ」


「それは困ったわねえ。じゃあ、人増やそうか」


「それはありがたいが、そういう人員いるのか?」


「なんかさ。水路造りの人達が余裕あるって言ってたから、大丈夫だと思うわ。数人だと思うけれど」


本当は人員の手配・配置は私の役目じゃないけれど、工期が遅れるのは良くないと思うの。あとで叱られるかもだけど。


とにかく、こんな風に私は忙しくブカスの森で過ごしているわ。


------------------------------------------------


そんなチョコレッタの様子を陰で眺めている者がいる。

ツキシロだ。満足気な表情をしてユリアスの屋敷に走って行く。


「……という塩梅(あんばい)です」


「そっか。チョコレッタも頑張ってるね」


「ええ。まあ、怪我人も出ましたが、大事には至っていませんし、問題ないかと。それどころか、各工程の進捗まで頭に入っているようで感心しました。人工の者達の信頼も得ていますね」


ユリアスは少し考える素振りを見せて言う。


「それならさ。思い切ってチョコレッタを現場の責任者にしようよ。もちろん、ツキシロも手伝ってあげてほしい」


「そうですね。彼女なら大丈夫だと思います」


「ちょっと待って」


ユリアスとツキシロの話にエリナが口を挟んだ。


「チョコレッタは今や魔術師としての実力もあるし、反対はしないわ。だけれど、支える者を付けてあげて。ツキシロのように陰からではなくて、きちんと役目としてね」


エリナはチョコレッタを可愛がっている。そんなふうには見えないけれど、可愛がっているのだ。


「どういう人がいいかな?」


「そうねえ。精神的に頼れる人がいいんじゃないかしら」


「うーん。そんな人いるかなあ」


ユリアスとエリナは考える。

チョコレッタが信頼するような人物は案外少ない。いても、そういう人物は何かしらの職務を担っているのだ。


「あの……。一人おりますよ」


遠慮がちにツキシロが申し出た。


「「誰?」」


「最近、シムオールでの職を辞されて、この領に来られた……」


「「ジュオンさん!」」


そう。シムオールのテイマーギルドのマスターを務めていたギルベルタ・ジュオンだ。彼は衰退していたギルドをユリアスギルドと連携することで立て直した。運営が軌道に乗ったので引退して、旧知のエリナを頼ってコルメイスに移住してきていたのだ。


「それはいい案ね。早速、打診してみるわ」


こうして、ツキシロに代わりチョコレッタがブカスの森の開拓の現場責任者となった。本人は「荷が重すぎる」と嫌がっていたが、現場の者達が「嬢ちゃんしかいない」と後押ししてくれた。

そして、チョコレッタの補佐をジュオンが快く引き受けてくれた。


二人のコンビは現場を良くまとめて、開拓のスピードが増すのだ。

ブカスの森 パトレオン領開拓地

開拓責任者:サフィアパル・ツキシロ

現場責任者:ガル・チョコレッタ(警護チームリーダー兼務)

副現場責任者:ギルベルタ・ジュオン


警護チームメンバー

ゼロイス・ファーファ(魔術師 Cランク)

カリアテア・ヴァイス(テイマー Eランク)

カリアテア・キョナン(テイマー Eランク)

他ヒューマン7名

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