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断る理由

 いきなり、サリナの演説のようなものが始まった。

マーベラの防具(がーど)作りの二人も手を止めて、こちらにやってきて耳を傾ける。


「はじめに言っておきますが、私はプラティーナもリグネールも仲間として迎え入れることに異論はありません」


ならば何故、リグネールが連れてきたスネークタイガーは認めないのだろうか。


「ですが、リグネールが連れてきた者は認めることは出来ません」


だから、何故なの?


「いいですか。私達は家族。ファミリーです。ユリアス様を家長としたファミリーなのです。

先程も申した通りに、プラティーナもリグネールも既にファミリーの一員で、信用いたします。

良く考えてごらんなさい。会ったばかりの貴女達をどうして信用できるのかを。


プラティーナはユリアス様がお認めになられたのですから、問題なく信用に値します。そして、リグネールはマーベラが認めて、自らのテイム体にまでしたのです。認めないという選択肢はありません」


なるほどと皆が頷く。

そして、リグネールに向き直った。


「貴女への信用は『マーベラへの信頼』があってこそなのですよ。そこは忘れないでいて欲しいものです。

私達はユリアス様のお役に立つために、お仕えし働いています。ユリアス様に害が及ぶ可能性はできるだけ無くさねばなりません。

先程、リグネールは連れてきた者……という言い方が失礼な気も致しますので『客人』と呼ばせていただきます。

その客人をマーベラに仕えさせようと進めましたね。

客人がマーベラには従うけれども、ユリアス様の意志に反する可能性があるやもしれないのです。なので、それは認められません」


マーベラは僕に忠誠を誓ってくれているし、マーベラに仕えるのだったら心配ないとは思うけれどな。確かに万が一ってあるかもだけど。


「プラティーナもリグネールも信用はしましたけれども、信頼はできないのですよ。接した時間が短すぎですしね。ユリアス様の素晴らしさも理解していないでしょう?


私はティアを養子に迎えたり、ガディアナを引き合わせたりして、彼女たちはファミリーに迎え入れられました。それは自惚れかもしれませんが、私への信頼があったからだと自負いたします。

マーベラがミドリ達を仲間にした時もそうです。マーベラへの信頼がありますから」


皆もこくこくと首を振っている。

僕も皆を信頼しているよ。


「みんな! ユリアス様の優しさは知っていますね? 先程、ツキシロを助けるために枯渇するほど魔力を注がれました。この森の中で、それがどのくらい危険なことか分かるでしょう!? 主従関係があったとしても稀有なことなのですよ。

そして、その優しさは主従関係のない者も救おうとなさるのです。プラティーナがそうですよね。マーベラとの出会いもそうでした」


「アタシもあの時のことは忘れないよ。サリナの言う通り、アタシはユリアスのためなら何だってする」


「そうですね。

それに私達同士もです。

ツキシロは死に瀕していても、『迷惑をかけた』と自分を責めていました。私は自分の息子ながら、誇らしくおもうのです。

おそらく、ここにいる皆がそうなのだと信じています」


一同はなんだか上気した面持ちで力強く頷いた。


「ふふふ。その優しいユリアス様ですから、頼ってこられた客人を追い出すことはされないのは分かっております。


なので『客人』は私達と行動を共にすることは認めます。

この行軍が終わる時、自ら考えてどうするのかをお決めになりなさい」


「分かりました。ご一緒させてください」


サリナは客人に微笑みかけたあと、再び、一同に向き直る。


「ここに居る者達!ファミリーとは何か。互いの絆はどのくらいのものか。今一度、考えましょう!」


サリナの演説は終わった。

皆は何を口にするでもなく、それぞれの持ち場に戻っていく。今までより眼に力がある気がする。


「サリナ。ありがとね」

「いいえ。私でなくても、みんなの心も同じだと思いますよ。私はそれを言葉にしただけです」


そうなのかな。嬉しいことだね。

僕も皆の信頼を裏切らないように頑張らないといけないと思った。


「言い忘れましたが、ユリアス様があんまり危ないことをなさろうとした時はお止めしますよ。それも私達の務めですからね」


人差し指を『ちっちっちっ』と振っておどけた。

まったく、サリナには敵わないや。






ベースの片隅でリグネールと客人が話し込んでいる。


「どう思った?」

「素直に素晴らしい群れだと思う。そして貴女が羨ましい。

貴女に声をかけられた時、今の状況より良くなるのであればと、軽い気持ちで付いてきたわ。今はそれを恥じている」

「そうね。私も同じような仲間を欲しくて貴女に声をかけたわ」

「もっと、彼らのことを知りたいわ。そして、『ファミリー』に入れてもらいたい。

連れてきてくれた貴女に感謝するわ」

「それは良かったわ。私達、このファミリー(むれ)で頑張りましょ」


片隅でがっちりと握手していた。


別の片隅では、デーアビントルの面々が集まっている。リグネール達と同じような話をしていたのである。

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