新加入の者達(2)
マイムがおかしな事を言うから、なんか微妙な雰囲気になったじゃないか!
マーベラも顔を紅くするな!
サリナとアンフィが互いに頷きあい、僕の元へやってくる。
「後ほど、お話があります。急ぐ話ではないので、帰るまでにお時間をくださいませ」
と言われた。
うーん。なんか嫌な予感がするなあ。
ともかく、リグネールも無事に溶け込めそうだ。
あとはリグネールの娘の名前も付けて上げないとな。
「アタシが名前付けるよ!」
マーベラが張り切って言うのだが。
「「ダメです!」」(サリナ&アンフィ)
「止めた方が……」(ガディアナ)
「かわいそう!」(イーナ)
と反対の声が一斉にあがる。
「ちょ、ちょっと!イーナまで!?」
イーナは当然といった顔をしている。
「マーベラ様が名付けたら、縞の赤味が強いから『アカトラ』とか付けそうですから」
「えっ!? ………。心読まれた?」
本当にそんな名を付けるつもりだったの!? マーベラはダメだ!
マーベラの名付けは数字を順番にした、『イーナ、ニーナ、サンナ……』とか、少し緑色の毛が混じっているから『ミドリ』。その仲間だから『ウスミドリ、キミドリ』とセンスがない。
色々な意見が出た結果、母親であるリグネールが「マーネール」と名付けた。マーベラの一文字をもらったんだって。
良い名だと思う。子トラも喜んでいる。
最近は僕が名を付けることは少ない。余程のことでない限り控えるように言われているのだ。
この行軍で八名のアントラーとスネークタイガーのリグネールには付けたのだけれどね。
それとデーアビントルの者達は名を持っていたよ。モンスターでは珍しいよね。
「名前は決まったけどさ。領に帰ったら仕事どうするの?」
そうだ。新たに仲間が増えたのは良いけれど、帰った後のことは考えていなかった。
だいたいはエリナ姉さんに丸投げだからね。今回も…と思ったら、サリナが口を挟む。
「マーベラのテイム体なのですから、マーベラが面倒みなさいな」
「えーっ! どうすればいいのさ!?」
「そうですね。軍属とするならば、マーベラの家臣になさっては? ルドフランやラトレルも家臣を持っていますよ」
「分かったよ。でも、何をどうすればよいか全然分かんないよ?」
「そのあたりはユリアス様やエリナと相談ですね」
僕はエリナ姉さんに振るだけだけどね。
「分かった。そうするよ」
身体的能力からして、やはり領軍所属となるだろうな。マーベラの直属兵とするのがいいのかな。
マーベラが領軍全体をみるようになってワイルドキャッスル達『チェンジャー団』はイーナが統率するようになった。今はイーナがチェンジャー団隊長だ。
なので、マーベラ直属の兵っていないんだよね。やはり、何人かいた方がよいだろう。
エリナ姉さんがどう思うかだけど。
提案として、そういう話をしてみた。
「マーベラ様直属のお仕事ですか……」
リグネールが何やら考えている。
「ユリアス様、マーベラ様。一日程、お時間をいただいてもよろしいですか?」
少し出掛けたいという。それは構わないけれど、どうしたのだろう。
僕らにマーネールを預けて、出かけていった。
彼女が出かけている間、マーベラの防具作りを見学していた。魔紙から次々と展開される魔法陣は美しくて、見ていて飽きない。
完成まであと三日くらい掛かるようだ。
完成を待つ間、皆は待機だ。
それぞれ、近場で魔物を狩ったり、魔植物を採取したりしている。
もちろん、ベースは僕の水の囲いで保護している。
マイムは僕の髪の中で眠っているけれど。
一日後、リグネールが戻ってきた。
一頭のスネークタイガーを連れて。少し痩せていて、怪我もしているようだ。はっきりいって、ボロボロな容姿だ。
カエルラが水を噴き出して、身体を清めてあげた。
怪我の治療だが、ツキシロにかなり使ったので、ポーションの在庫が心もとないらしい。
マイムを起こして治療してもらった。
マイムは文句を言っていたが、飴をあげると喜んでいた。
リグネールが連れて来たスネークタイガーだが、かつて縄張り争いをした相手らしい。リグネールが勝ったらしいよ。
リグネールに敗れたスネークタイガーがすぐ近くに縄張りを持ったことは知っていて、今回の一部の魔物の暴走気味な行動で、自分のように困っているのではないかと探したのだそうだ。
案の定、ウォーウルフに襲われていたと。それを助けて連れて来たらしい。
「それでお話されていたマーベラ様にお仕えするのにどうかと思いました。彼女はBランクですし、戦い慣れてもいます。いかがでしょう?」
リグネールはマーベラに使えさせようとの意図で連れて来たんだね。
いいんじゃないかな。
「アタシはユリアスが良けれ……」
「お待ちなさい!」
いきなり、サリナが声を張り上げた。
怒気をはらんでいるような、普段よりも低い声音で。
辺りがピリッと緊張する。
「それは受け入れられません!」
はっきりと言った。
どうしたのだろうか。
「この際です。皆も聞きなさい!」
サリナに皆が注目した。マイムとカエルラを除いて。