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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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ユリアス達が留守の間(3) 倉庫番(1)

(わたくし)はパドレオン男爵の御屋敷の使用人です。今年35歳となる男です。

今はご主人であるユリアス様はアルセイデスという森へご出兵とのことで、ご不在です。


(あるじ)は御不在なのですが、御屋敷の使用人を募集なさるとのことで応募させていただいたのがひと月前でした。

そして1週間前から勤務させていただいております。


まず、驚いたのが御屋敷の大きさです。なんと120メートル×120メートルと言うではないですか。それもなんと4階建て、地下1階の豪華な建物なのです。屋上には庭園もございます。

もう少し位の高いお貴族様でもこれ程の御屋敷をお持ちではありません。小さなお城の規模です。

3階部分からはお隣の建物である『ユリアスギルド』と少し離れた『ユリアス魔物・魔術研究所』という施設に繋がっているのです。お部屋の数も尋常ではありません。

なんと200もあるのですよ!?


少し興奮してしまいました。


私のお仕事は地下に設けられた倉庫の管理です。このお仕事の担当は私一人です。私がお休みをいただく日は倉庫自体を締切にするそうです。


倉庫番? 簡単な仕事? そう思われるかもしれません。

ですが、大変なのです!


この倉庫、実は金庫室なのです。

大量な魔石、魔物を倒した時のドロップ品とも呼ばれる魔物の遺物、貴重な鉱石などの管理なのです。

もちろん、硬貨などの金銭もありますが、そちらの方は場所もとりませんし、金庫に納めるだけです。手間はかかりません。


それらの物が日々貯まって行くのです。

今日はアルミラージの魔石と角が42セット、キラービントルの魔石と針が7セット、バッファローボアトルの角が4本、ブルーボアトルの魔石が1個に牙が4本、カラカラの魔石が38個に(くちばし)が20本。

どうです? 凄いでしょう? でも、これでも少ない方なのです。


それを日々カウントして記録していくのが仕事です。

あっ、また、何かが運び込まれてきました。


ムワット石80キロです。重いので運搬役の方が所定の場所まで運んでくれます。もちろんその前にしっかりと計量はいたします。

これだけでどのくらいの価値なのでしょうか。聞いた話では500グラムあれば家が建つそうです。計算するのが恐ろしいので止めておきましよう。

このムワット石は20キロは売却したのだそうです。どうして全部売らないのでしょうか。金貨や白金貨の方が場所は取らないですし、扱いも簡単なのではないでしょうか。


「それはな。ここにある物を全て売り払えば小国くらいは買えるだろう。

だが、経済が大混乱するのだ。ここにある物を市場に出せば、その量で一気に値崩れをおこす」


とビュウロン財務官が仰います。

なるほど、そうなのでしょう。


「ですが、ビュウロン様。もう、ここは一杯ですよ。整理しておりますが、入ってくる物と出ていく物のバランスが悪すぎるようです」


「そうなのだ。君は話が分かる。少し愚痴を聞いてくれぬか?」


私に断る(すべ)はありません。

管理する地下室の一角に設けられた私の執務室へビュウロン様をご案内して、お茶をお出しします。


「すまぬな。仕事の邪魔か?」

「いいえ。今日の入庫品は少ないですから」

「そうか」


お茶を飲んで少し落ち着いてから、ビュウロン様が話はじめます。


なるほど、先程のお話のように市場を混乱させずに、ここにある物をある程度、現金化したいようです。

ここで、ちょっと不思議に思いました。


「あの、ビュウロン様。私は男爵家の使用人として雇われたのですが、この倉庫は公庫なのですか?」

「ユリアス様の私的な倉庫でもあり、公庫でもある」


要は私財と公財が混じっているということのようです。


「何か問題があるのか? ツマミエ殿」


あれ?私は名乗りましたか?お伝えしてないと思うのですが……。

私の思うところを察したのでしょう。


「ユリアス様にお仕えする者は全て把握しているよ。領の幹部と言われる者が必ず名簿には目を通すのだ」


なるほど、そういう事でしたか。ということは、きっと、私の経歴もご存知でしょう。そうでなければ、(いち)使用人に意見を求めることはしないですから。


「それでは申し上げましょう。私財と公財は分けるべきです。そうでなければ管理も計画立てた運用も出来ないと思います」


ユリアス様が暴君気質ならば、全てご自身の財として、蓄財し散財するでしょう。今までの見聞で、それはなさそうですが。

その杞憂はあえて申し上げません。ここに居られる方々はユリアス様を尊敬されているのが分かっているからです。


「うむ、そうだよな。分かってはいたのだがな。線引きが難しいのだよ」

「と申されますのは?」


ビュウロン様は立ち上がり、執務室を出ました。私も後を追います。


「例えば、このあたりの宝剣や宝飾品は陛下からユリアス様へ下賜された物だ。これは明らかに私財だな」

「そうですね」

「こちらの『カーバンクルの鏡』だが、この多くは公務ではなく私用で、とある森に赴いた際に得られた物だ。とすれば私財になりそうなものなんだが、その私用は結果的に人材登用につながったのだ。

更にこの鏡は軍の装備に使われていたりする。さすれば、この鏡は公財か?それとも私財か?」


確かに線引きが難しいですね。そういった事柄があらゆる物にあるそうです。


また、私達は執務室へ戻ります。


「オルメイスの街を造られた時はな。ユリアス様は私財を投げ出された。全ての私財をだ。その精算もされていない現状だ」


なんという方だろう。普通は大棚の商人やらに借り受けるものです。大体の場合は商人に返還されることはないのですけれどね。


「そうなのですね。難しいですね。心中お察しいたします」

「ツマミエ殿。他人事ではないぞ」


そう言われましても、私は一使用人ですから。


でも、少しだけお力になれそうな案を示しておきましょうか。

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