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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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ユリアス達が留守の間(1) チョコレッタ(1)

ユリアス君達がアルセイデスの森へ向かって2週間ほどが過ぎた。

私も行きたかったな。まだまだ力不足で、足でまといになるのが分かっているから仕方ないことなんだけれどね。


コルメイスの街はどんどん大きくなっている。最近、第3区が完成した。第1区から3区までの街の賑やかさは王都にも負けていないと思う。


私はギルドに呼ばれた。所属するユリアスギルドに。


「エリナ姉さん。依頼?」


「ええ。貴女、ムワット石の場所覚えてる?」


初めて魔物を倒した場所だ。ユリアス君と一緒に。忘れるはずがないわ。当時のわたしはEランク。今はBランクにまでになれた。半分はユリアス君のおかげだ。いや、もうちょっと、三分の二くらいはユリアス君のおかげかも。


「もちろん、覚えてるわ」


「また、行って欲しいのよ」


「えっ!? イヤッ!行かない!」


「即答!?」


だって、ムワット石は採取したら三日間は隔離されるのだから。その間は街に入ることも出来ない。前の時は青の月の夜と重なって大変だったんだから!トラウマよ!


「今の貴女なら、あそこ辺りの魔物は怖がることはないと思うけど?」


違う!魔物が怖いんじゃないんだってば! 私は引き受けない理由を話す。ちょっと感情的になったけれど。


「ああ、なんだ。それは大丈夫よ。貴女は警護よ。ムワット石を採取する人達の警護」

「そうなの? うーん、メンバーは?」

「引き受けてくれるなら、貴女に任せるわ。私は採取の時のことを知らないから」

「え? 帰ってきてユリアス君やサリナ姉さんと話したじゃない」

「あの時の話は『青の月の夜』のことばかりだったわよ」


思い出してみると、たしかにそうだったかもしれない。


改めてムワット石の採取だけに限って考えてみる。

まずは遭遇する可能性がある魔物。カラカラはたくさんいる。採取場の近くにはオークの巣があった。後は最近の情報ではブラックウルフが増えているらしい。ブラックウルフがいるということは、シープキラーがいる可能性は低いかな。シープキラーがいるとブラックウルフは怖がって寄ってこないからね。

こう考えると強くてもCランクの魔物ね。油断は出来ないけれど、怖くはない。自分一人ならば……。


「姉さん。採取する人はどんな人?人数は?」

「このギルドの新人テイマー二人」

「ああ、行き倒れみたいな感じだった兄弟ね」

「そうなのよ。弱すぎて仕事も任せられなくて困ってたのよ。カリアテア兄弟というわ」

「まあ、採取は簡単だからいいんだけど、どのくらいの量を持ってくるの?なんか体力もなさそうだよ、見た感じ」

「50キロづつの合計100キロよ」

「はあ?無理じゃん!?」

「そこは大丈夫よ。コルメイスバッグに入れるから」


それなら納得。コルメイスバッグは文字通りコルメイス特産。ワームの腸を使ったバッグで見かけより10倍ほどの量が入り、重さも同様だ。

100キロのムワット石とは、莫大な金額になる。なにしろ、前回の採取の時に受け取ったムワット石の欠片(500グラム)で私は家を建てたくらいだ。


これなら報酬は期待できそうね。

私は依頼を受けることに決めた。


詳しい話を詰めていく。

エリナ姉さんはパドレオン領の収入源として、定期的にムワット石を採取するそうだ。

ここで上手くやって今後も仕事を受けられれば、定期的な収入になる。俄然、やる気が出てきた!


採取メンバーが二人ならば、護衛もそれほどの人数はいらない。わたしとファーファで大丈夫だと思う。

そう思うけれども、もう一人いた方がいいかもしれない。わたしとファーファが魔術師、採取のカリアテア兄弟がテイマー。剣士職が欲しい気がする。


「うーん。アントラーの者たちに頼めば簡単だけどねぇ。ギルドのメンバーではない者は入れたくないわ」


そういうことね。外注ということになって体裁が悪いってことか。


「分かったわ。じゃあ、護衛のメンバーはわたし、ファーファ、ハンコックのおじさんの三人で受けるわ」

「は? 正気? ハンコックはEランクよ!?」


もちろん、知っている。これでもこのギルドの魔術師部門のリーダーをしているんだから。

でも、わたしとファーファだけじゃだめだと思う。少しでもメンバーを育てていかなくちゃ。


「まあ、貴女に任せるわ。報酬は一人金貨1枚だからね」

「そんなに!?」


良く考えれば、利益を考えたら、ただみたいなものだ。でも、嬉しい!普通の人の2、3年分くらいの収入だよ!


「これで決まりね。出発は3日後。よろしくね」

「あ、姉さん。カテアリア兄弟に結構走るからポーション持って来るように言っといてね」


ムワット石採取後、20分過ぎると「モグラット」が襲ってくる。それもおびただしい数の。20分でできるだけ早く移動して、森を抜けたい。

森の入口から採取場まで凡そ1時間。走れば20分でいけるはずよ。


わたしは帰りすがら、頭の中でシュミレーションしてみる。もし、途中で時間が過ぎてしまったら……。

大丈夫!わたしとファーファの火炎系の魔術で寄せ付けないようにできる。


「ただいまーっ。ファーファ。仕事よーっ!」


わたしは帰宅してリビングの扉を開けた。

ファーファがケーキを食べていた。


「あーっ! それ、わたしのケーキでしょ!? 何勝手に食べてんのよ!」

「むぐむぐ。だって、早めに食べないと味が落ちますよ? もったいないじゃないですか」

「あのねー。自分のお金で買いなさいよ!楽しみにしてたのにぃ!」


ファーファはわたしの家に居候している。シムオールからパドレオン男爵領に連れてきた手前、面倒を見ている。

当時はDランクだったのが、今はCランクに成長していて、わたしも嬉しい。


わたしが楽しみにしていたケーキの件で軽く〆た後で「護衛の依頼」の話をする。


「という訳で三日後に『ブカスの森』だから。準備しときなさい」

「え、え? 『メディシナルの森』より怖いんですよね!? 私にはムリですぅ~」


「そう。報酬が金貨1枚なんだけど、もったいないなあ。じゃあ、他の人にするわ」


「ん!?金貨1枚? チームで? えっ?1人1枚!……やだなあ、行きますよ! 他の人?

そんな人信用出来ません!私が行きます!」


単純なファーファだ。

この後、翌日にもう一人の護衛メンバーのハンコックのおじさんにも話をしておいた。彼はシムオールの軍から男爵領へと移動してきた人だ。なので、エリナ姉さんの依頼は断れないのだ。



そうして、わたし達はブカスの森へ向かった。


●カリアテア・ヴァイス(兄) Eランクテイマー

ズンバラ都市チューアライ街出身。武者修行と称して、弟と『メディシナルの森』へ来たが、クリールに追われてシムオール都市に逃げ込んだ。その後、働き場を求めてパドレオン男爵領のユリアスギルドに登録。テイムモンスターは『ソーンスパイダル』(Cランク)。

●カリアテア・キョナン(弟)Eランクテイマー

テイムモンスターは『コカトリス』(Dランク)。


●リビアント・ハンコック Eランク魔術師

シムオール都市軍所属の魔術師兵だったが、イード大将と共にパドレオン男爵領へ移住。ユリアスギルドに所属する。火属性と土属性のスキルを得ている。

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