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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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魔物狩り(3) イーナチーム(2)

イーナチームは木々の間から二つの魔物が闘っているのを見ている。その魔物は『レッドベア』である。


「貴方達は倒せますか?」


問いかけられたシルマもヌカサンもレッドベアを凝視し、観察している。


「我らが力を合わせれば可能です」


シルマがヌカサンにちらりと視線を送る。ヌカサンも頷いて肯定した。


割と冷静に分析しているとイーナは感心する。


「分かったわ。ならば一頭は貴方達に任せましょう」


「分かりました」


三人はレッドベアの前に進み出る。

急に目の前に現れた者たちにレッドベアは縄張り争いであろう戦いを止め、向きを変える。


イーナに襲いかかるレッドベアは振り下ろした腕から火炎が出た。


「うわっ! あぶなーっ」


まさか、火炎が出るとは思わなかったイーナは辛うじて躱した。

だが、手の内が分かったら、突進型の魔物はイーナにとって怖い存在ではない。

再び、火炎を出しながら迫るレッドベアをいなして背後に回ると、得意の手刀で太い首を貫くのだった。


「ふう」


呼吸を整えてシルマ達を見ると、互いに身構えている。

レッドベアは立ち上がり、「ぐるる」と唸っている。シルマ達は剣を抜き正中の構えだ。

先に動いたのはレッドベアだ。ヌカサンが視線を逸らすと直ぐに攻撃を仕掛ける。

ヌカサンはわざと目を逸らし隙を作った。所謂、誘いである。レッドベアはまんまとそれに乗った形だ。


レッドベアの爪と火炎による攻撃はヌカサンが剣で押さえ込む。両腕を振り下ろしして想像以上に早いのだが、全てを迎えうっていた。

攻撃の際の隙をつく形でシルマが突きを入れるが、レッドベアの外皮は硬い。それでも諦めることを知らぬシルマは同じ箇所を執拗に突き、とうとう仕留めるのであった。


「ふう」「はぁはぁ」


二人が肩で息をするくらい激しいものだったのだ。

二人ともふらついて膝を着いた。


「大丈夫? 結構、上手く戦ったと思うけど、それほど疲れたの?」


「いいえ。疲れではありません。急激にレベルが上がったので体が対応出来ないようで。おそらく、ヌカサンもでしょう」


ヌカサンもこくこくと首を振った。


続けざまに自分よりランクの高い魔物とやり合って倒したのだ。ユリアスの【統制】スキル効果も相まってレベルが上がり、身体が追いつかないのだ。

シルマはアントラーレベルを8に上げ、【一点尖撃】スキルを得て、ヌカサンはレベルが7に、【乱刀】スキルを得た。

Bランクも視野に入る程の成長である。


「大したものだわ。貴方達にはこれを上げましょう」


イーナが腰袋から取り出したのは『魔石飴』。元々、人型に固定されることを望んでいる二人が摂取しても何の問題もないだろう。(ユリアス)魔石飴を摂取すると魔力の回復が早いだけではなく、各スキルの成長度合いも早めてくれるという。それはイーナ自身が実感していることだ。


現在、ユリアス魔石飴の摂取を認められているのは、最初に摂取したマーベラ以降、サリナ、アンフィ、ガディアナ、パドティア、ルドフラン、ラトレル、イーナ、ニーナ、サンナ、最近になってツキシロ、スイレン、カエルナの13名だけである。

それだけ貴重な物と言えよう。ユリアス自身は望む者が入れば与えても良いと思っているのだが、適したサイズの魔石は、今のところカラカラぐらいなのである。加えて、その魔石一つ一つに魔力を込めなければならない。ユリアスの魔力供給という善意で出来上がる飴なのだ。


「わ、私どもが頂いてもよろしいのでしょうか?」

「だって、そのままじゃ、まともに動けないじゃない? 今回だけ特別よ。ふふふ」


二人の状態を鑑みて言ったのではない。頑張る二人に何か褒美的な物を与えたかったのだ。


「ああ、美味い……」

「これは……心までもが満たされる……」


すぐに恍惚の表情となる。

イーナは満足気だ。イーナ自身も何故マーベラがユリアスに陶酔するのか分からなかったのだが、飴を食して理解し、自らもその虜となっている。


この『魔石飴』だが、サリナやアンフィの魔力を用いて同様な物を作ってみた。作ると言っても、手頃な魔石をできるだけ純粋な魔力で染めるだけだ。

ユリアス以外の魔石飴は、魔力の補充や活力増加の効果は得られるものの、スキルアップ効果はない。得られる効果もユリアスのものとは持続力も少ない。

それに『味わい』が全く違う。複雑で深くもあり爽やかでもあり、とにかく美味いのだ。


「さて。そろそろ復調したでしょう? 私達はそろそろベースへ戻りましょう」


しかし、シルマとヌカサンは首を振る。


「もう少しやらせて下さい。私達は先程、スキルを得ましたが、それを完全にものにしたいのです」


なるほど。スキルは使えば使う程、レベルも上がる。一理ある。


「良いでしょう」


同意を得た二人はばっと散開し、それぞれに森の茂みへときえた。保護者的な位置付けのイーナは彼らを追わずにどかっと腰を下ろす。

ユリアス配下のアントラー族の者達はサリナ、アンフィにより知性を高くして生を受けている。学習能力が非常に高いのだ。適応力もある。

もう、イーナは彼らのことを心配していない。一度倒したレッドベアは既に彼らの敵ではないだろう。


「ふふふ。私も負けていられないわね」


そう呟くとイーナも茂みへと足を向けた。


1時間後に再び集ったのだが、それぞれスキルアップしていた。

イーナはクリールキング2頭を相手に【乱蹴】スキルに磨きをかける(レベル6に)。

シルマはハイオークの群れに動ぜずに一頭一頭を【一点尖撃】で倒しレベルを3にあげた。

ヌカサンはワーグを【乱刀】で一蹴。こちらもレベルを2にあげる。


イーナチームは成果を上げてベースへと戻って行く。


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