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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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魔植物採取チーム(1)

ツキシロチームはマーベラの足首の防具(ガード)の材料となる魔野草を探している。ツキシロが『魔植物鑑定』スキルを持っているからだ。

このスキルの使い方は2つある。

1つは魔植物を観ると名前が分かるということ。もう1つは魔植物名を唱えると、視界の中の該当種が光るうえにプレート状の種名札のようなものが提示されて存在を認識できるというものだ。

ツキシロのそのスキルレベルはまだ2だが、レベルアップすると効能まで分かるという。薬草ギルド員には欲しいスキルなのだが、なかなかスキル所持者はいないらしい。

このチームは4種の魔植物を探すことが目的だ。そのうちの「ネバネバササ」と「ヒダネソウ」はすぐに見つかった。残りは「マモノタケ」と「ヒトツハ」である。


魔物討伐を目的としていないのだが、この森でふらつけば、当然、魔物と遭遇することになる。


先程はスコーピオン(タイプ)の『ハードボード』という魔物に出くわした。1メートル四方の板の様な魔物で毒を有した尾だけがそそり立つ異様な体型をしていた。

いきなりザニアが尾針に刺されそうになったのだが、ツキシロの『守護の膜』が効いていて針は通らなかった。ザニアが剣を振り下ろし真っ二つに斬り裂いて退治する。ハードボードの外皮は非常に硬い。


「よく一刀のもとに斬れたものだ」


ツキシロが褒める。ザニアは照れくさそうに頭をかいた。

何かを感じたのか、スイレンがザニアに剣を見せてもらう。


「ああ、やはりですね」

「どういうことだい? その剣は支給されたものだぞ」

「元はそうなのでしょう。けれども、この剣は変質して『水の加護』を纏っていますよ。なので、斬れ味が優れているのです」


所謂(いわゆる)、水属性の剣ということだ。そう言われると、確かに刀身が(ほの)かに青みを帯びている。

火属性は威力が、水属性は斬れ味が増す。


「しかし、なぜだ?」


全ての兵に支給された剣には火属性が付与されているが、水属性はされていない。当然の疑問である。


「兄上。ひょっとしたらなのですが、思い当たることがございます」

「そうなのか? 参考までに教えてくれ」

「はい。実は……」


ザニアは毎日、水の宝玉で出来たコルメイスの泉の水で剣を研いだり清めたりしていた。ユリアスが水の宝玉で種々のスキルを得たことにあやかりたいと思ってのことらしい。


「それですね。原因は。ザニアはカシェの泉の守護の役を務めたこともあるのでしょう? その事も含めて加護を得たんですよ」


ザニアはステータスを確認すると【水の加護】と記されていた。更に【一刀斬り】スキルも得たようだ。


「私ははじめてスキルを得ました。兄上のおかげです」


ザニアが剣を愛おしそうに抱え、気色満面で頭を下げる。


「私ではない。ユリアス様に感謝なさい。ユリアス様の【統制】スキル下にいる時はスキルを得やすく、スキルレベルも上がりやすいのだ」

「そうなのですね。ユリアス様に感謝いたします。そして、やはり兄上にも」


今度はツキシロも向けられた感謝の意に頷いた。ツキシロにしてもユリアスを支える者が増えてくるのも、その者が強くなることも大歓迎だ。


「さて、あと2種だな」


ところが、残りの2種類が中々見つからない。散々歩き回ったが見つからない。

成果か出ない中、一休みして魔木の根元でごろりと寝転んだ。


「あれ?」


ツキシロが寝転んだ視線の先に文字が浮かんでいる。距離があるので文字は小さいが『ヒトツハ』と読める。

ガバッと起き上がり摩木を見上げた。


「はははっ。あった!」

「えっ!? どこですか?」


スイレンの問いに指を上に向けたツキシロは笑っている。

誰もが、まさか魔木の梢に生えているとは想像だにしていなかった。おそらく寄生魔植物だろう。


「しかし、高いですね。梢のところにひょろっと生えているやつですよね!?」

「兄上、どうやって取りましょう?」


摩木は上に行くほど細くなり、上っていったら途中で折れてしまいそうだ。


「そうだな。途中から木を切るしかないだろう」

「木の上部を切り落とすのですね。その時に傷んでしまわないですか?」


確かにその可能性はあるだろう。14、5メートルもの高さだ。ヒトツハは遠目では弱々しく見えるから尚更だ。


「私のスキルがお役にたつかもしれませんわ」


スイレンは【水包(すいほう)】スキルでヒトツハの生えている梢ごと水で包んで保護しようと言う。【水包】は物理衝撃、魔力衝撃を吸収し、内部を守る。落下の衝撃に十分に耐えられるはずだ。


話が決まれば後は早い。梢を水包で包んで、ザニアが上部まで上り一太刀で切り倒す。落下した魔木の上部から採取した。


「ザニア。何を持っているのですか?」


ザニアは手に拳大で楕円形状の物を持っていた。


「摩木の枝に付いていたのです。何でしょう?」

「何かの卵のように見えますね」

「卵ですか?」

「……卵だろうか? 持ち帰りアンフィ叔母上に伺うとしよう」


彼らにとってこの森へ来る機会は、今後無いかもしれない。危険な森であるので、単独では来ることは出来ないだろう。

だから、彼らも含めて同行した者達は何かを吸収しようと貪欲だ。魔物の魔石に限らず魔植物、その辺に落ちている石ころさえも価値が分からないので、取り敢えず持ち帰ることにしている。正体不明の卵(?)もしかりだ。

この数日間でユリアス一行は大量の物資(魔石、魔植物、魔木の実など)を収集している。容量の大きいワームのバッグ(コルメイスバッグと呼ばれている)に次々と収められていた。


「よし!残るはマモノタケだ」


再び探索をはじめるが、このマモノタケも見つからない。種名から寄生魔植物だと思われるので、ヒトツハ同様に魔木に生えているかもしれないと樹木にも目を向ける。

ずっと捜し物をしているような状態なので、どうしても魔物に対する警戒が薄くなりがちだ。

それをカバーしているのはスイレンの【範囲隠匿】スキルである。カシェの泉の守護に使われていて、指定の範囲を隠す。スイレンはツキシロを中心した10メートル四方を指定していた。

実際にツキシロチームはスイレンのスキル範囲内で、大型の『シロクロヘビラ』が悠然と傍を通り過ぎた時は肝を冷やした。誰かの存在が認知されていたならば、間違いなく襲われていただろう。


「こんなところに穴が空いています」


ザニアが地にぽっかりと空いた直径1メートル程の穴を見つけた。三人が覗き込んでみると結構深そうだ。


「あっ!あった!」


地表から数メートルのところに種名札が浮かんで見える。こちらから見て出っ張った岩の陰に生えているようで本体は見えない。


「仕方ない。私が降りて取ってこよう」


木の蔦を取ってきて、ぶら下がるようにツキシロが降りていった。


「見つけた!モグラットの屍に寄生しているぞ」


屍ごと腰袋に入れて採取完了だ。


ツキシロが上ろうとした時だった。更に下の方から『ごごごごっ』と土が崩れるような音がした。


次の瞬間………。


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