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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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魔物狩り(2) アンフィチーム

アンフィはベースから近い森の中で魔物狩りをすることにした。連れているのが、まだ幼いティアとラナだからだ。何かあったらベースへ逃げ込むことを考慮してのことだ。


そんな三人の前に現れたのは『ヒトツメドリ』。艶のある濃い紫色で、身の丈2メートル程の飛べない鳥だ。名前の由来は文字通り一つ目なのである。足が発達しており、ダチョウのような魔物だ。


ティアもラナも慌てずに身構える。


「へえ。案外、落ち着いているのね」


アンフィは感心している。

ティアは腰を低くして脇の剣に手を添えて構えているし、ラナはブラックウルフに変化した。


ヒトツメドリの足がティアに迫るが、ティアは抜刀し、それを受け止める。同時にラナ(変化体)が細くて長い首に食らいついて引き倒す。止めはティアが剣を突き刺した。

見事な連携だ。普段から仲が良いからこそ息のあった攻撃ができるのだろう。


「良くやったわ、二人とも」

「「ありがとうございます」」


二人も喜びを隠さない。

だが、二人は顔を見合わせて頷きあって、アンフィに向き直る。


「叔母様。お褒めいただいて嬉しいのですけれど、私達はもっと強くなりたいのです。お気ずきのことがあれば教えてくださいませ」


と頭を下げた。

アンフィは嬉しそうに目を細める。アンフィは二人がユリアスの力になるために強くなりたいと言っているのは周りの皆から聞いていた。


「そう。今のままでも立派だけれども、私の意見を言いましょうね。

まず、ラナ。貴女の変化は見事でしたよ。ブラックウルフに変化しましたけれど、ラナ本来のワイルドキャッスルになった方が良かったのですよ」

「そうなのですか?」

「ええ。ブラックウルフよりもワイルドキャッスルの方が全般的に優れています。わざわざ劣るものに変化する必要はないわ」

「そうなのですか。分かりませんでした」

「ラナはワイルドキャッスルとしての自分の力を認識する必要があるのかもしれないわね」

「はい。ありがとうございます」

「ふふふ。変化する時は自分にない力を持っているものにした方が良いのよ」


ラナは素直に聞き入れたようだ。


「次はティアね。先程の剣技は『居合』ね。良く鍛錬しているのね、感心したわ。ティアの場合は提案になりますけれどね。貴女は『カマイタチ』というスキルを持っているでしょう!? それも強みなので、どんどん使うべきなのよ。スキルというのは使えば使うほどレベルが上がります」

「そうなのですね。もっと使う事にします」

「そうしなさい。二人とも、今の戦いが悪い訳ではないからね」

「「はい」」


素直な二人に、またアンフィは目を細めるのである。

実のところ、アンフィは迷っている。地力を高める手助けをしながら、なるべく危険に晒したくない。その狭間で悩むのだ。


近くにおそらくBランクの魔物がいる。群れていて、数は8頭。


「よいこと!? ここを動いてはなりませんよ。様子を見て参ります」


アンフィはその場を離れて、感知している魔力の元へ歩き出す。

そこに居たのは『サラマンダー』だった。レーシィの森では『火トカゲ』と呼ばれていたBランクの魔物である。体長は1メートルほどだ。

8頭のサラマンダーはアンフィを気にする素振りは見えない。

【気配消滅】のスキルを発動しているからだ。


「ふーん。やり合って見ないと分からないわね。スキル解除!」


途端にサラマンダー達がアンフィに視線を向けて臨戦態勢をとった。

口から火炎が発せられ、アンフィを襲うが、「遅い!」と躱して剣を振り抜くと、2頭が呆気なく魔石と変わった。

続けて1頭と対峙して、サラマンダーの動きを確認し、斬り捨てる。残りは5頭だ。


「火炎は中々の強さね。動きも早いわ」


悠長に独り言を呟けるのは、またスキルを発動したからのようだ。


「うーん…。あの娘達の手に負えるかしら……」


ぶつぶつと言いつつ、2人の元へ戻る。

迷った末に二人をサラマンダーと戦わせてみることにする。


「いいこと?貴女達にとっては未知の魔物です。油断はなりませんよ」

「「はい!」」


アンフィは魔物の正体も告げていない。当然、火を吐く魔物だということも知らない。

かくして、二人はサラマンダーと対峙する。


ティアは居合の構えで、サラマンダーを凝視。ラナは隙あらば飛びかからんとしている。


いきなりサラマンダーが火を噴く。ティアは剣を抜き剣圧で炎を霧散し、ラナは飛び退き距離を取る。


「炎なら私達も出せるのですよ」


ラナがティアを見て剣を握った。二人が剣を振るとサラマンダーに向けて火球が飛ぶ。パドレオン男爵領軍で使われている剣には火属性が付与されていて、炎を纏ったり、火球を打ち出すことができる。もちろん、使用者の力量や熟練度によって威力は違うのだが。


瞬く間にサラマンダーの3頭が炎に包まれた。そのまま倒せたと思ったのだが……。

なんと、サラマンダー達はぱくぱくと炎を食べ始めた。


「「なっ!?」」


サラマンダーは炎を吐くだけでなく、炎を食べた。アンフィすら知らない習性であった。そして、炎を食べて体が一回り大きくなっている。

アンフィは驚きながら推移を見守っている。いざとなれば、二人を守り、サラマンダーを討つつもりだ。


「ティア! さっきのお話の【カマイタチ】よ」

「ええ。ラナは?」

「私にも考えがあります」


ティアはまた居合の構えをとり、「居合カマイタチ!」と叫びながら抜刀する。

次の瞬間、サラマンダーの1頭が上下に真っ二つとなっていた。

ラナは?とアンフィが目をやると、なんと『アルミラージ』に変化してサラマンダーに突っ込んでいるではないか。


アルミラージ(ラナ)は角を突き刺して、魔力を吸っているのだろう。みるみるうちにサラマンダーの体が萎み、ミイラのようになって消えた。残ったのは魔石だ。


「ふふふふっ。お見事ですよ」


アンフィが手助けする必要もなく、残りのサラマンダーも二人が倒したのであった。


「さあ、ベースへ戻りましょう」

「「はい」」

「ティアは凄いわ。居合と【カマイタチ】を合わせるなんて!」

「へへっ。居合の時の剣による風とカマイタチの風が似ているなと思ったのですよ。ラナも凄いわ。サラマンダーを干からびさせるんですもの」

「アンフィ叔母様のおかげです。自分に無いものを持つ魔物、ということで考えましたの」


お互いに称え合う実に微笑ましい光景だ。


「火を食べるなんて驚きましたし、その前にボー……」


ラナがサラマンダーを真似て火を吐く真似をしたのだが、ぶわっと本当に火が吐かれた。


「な、な、な、!!」


火を吐いた本人も驚いている。


「お、落ち着きなさい」


アンフィも平常ではない。


「きっと、サラマンダーの魔力を吸ったからではないかしら」


ティアが割と冷静に言うが、それしか理由が付けられない。

それからは三人で考えつつ、ラナが魔力の操作をあれやこれやと試した結果、意識して『火炎』を吐くことが出来るようになる。【噴炎】スキルの獲得である。


この魔物狩りで3人共に地力を高めた。


アンフィ……【残像】スキル獲得。

パドティア…【カマイタチ】スキルレベルアップ。『居合カマイタチ』という技を身につける。

タカラナ……【噴炎】スキル獲得





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