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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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皆の力量

僕達一行はブカスの森を行く。以前はこの森も脅威に思えたのだけれど、今の僕達にとって危険とは感じない。皆がそれぞれ強くなったからだ。もちろん、油断はしていない。


「たしか、この辺りにいたんだよな」

「ああ、『ナナカワリ』ですね」

「うん。アンフィは分かる?」


アンフィは首を振る。

アンフィとこの森で見つけた魔物だ。魔石は『変化玉』となる。僕は二つ持っている。

なかなか、貴重な魔石なので、もうひとつくらい欲しいと思う。歩きながらキョロキョロしていると、アントラー兵の一人が手にナナカワリを持っている。


「あっ!それ、どうしたの!?」


「えっ? あ、あの、肩に落ちてきたので捕まえたんですが、いけないことだったのでしょうか?」


「ううん。いけなくない!っていうか、それ、探してたんだよ」


「そうなのですか。よろしければ、どうぞ」


僕はナナカワリを貰って、直ぐに魔石にした。その魔石は腰袋の中へ……。


そんな感じで緊張感とは程遠い和気藹々とした雰囲気だ。ただし、ブカスの森の中だけのことだろう。そこから先はマーベラ以外は未知の森だ。マーベラにしたって数度入ってみただけなのだ。

焦ることはない。行軍はゆっくりと進むことにしている。ブカスの森でも二泊ほどすることにしている。


「今日はここを宿泊地とするよ。それぞれ準備してね」


すぐさま、皆が夜営の準備を進める。薪を集める者、食事の準備をする者、テントを張る者、周囲の警戒をする者、無駄がない。


「ねえ、サリナ。気がついている?」

「ええ。ずっと、ウロウロしていますね」


僕達が森の中ほどまで進んだ頃から、二つの魔力を感知していた。魔力の大きさからみてCクラスだ。初めは距離があったのだが、徐々に近づいて来ている。今は200mほどだ。アンフィが森に道を作っていたし、その道を来れば僕らに遭遇するのは自然なのだけれどね。

その二つの魔力には、何故か嫌な気配がしない。攻撃的な魔物の魔力は禍々しい気配がする。それがない。危険のない魔物のようだ。

それでも、魔物がこちらを一方的に危険視したり、空腹な肉食系ならば襲われる可能性もある。


「私が見てきます」


僕達の会話を聞いていたイーナが言ってくれた。


「なら頼める? 危険性がなさそうなら放っておいてもいいよ」


「はい。では……」


イーナは走っていった。

ワイルドキャッスルの内、イーナ、ニーナ、サンナは僕の魔力を欲しがって、人型に固定されている。マーベラが美味しそうに『僕の魔力飴』を舐めるのを、どうしても味わいたかったという。今は彼女達も魔力飴の消費者だ。


「おっ。接触したね」


3つの魔力が接触した。交戦する気配はない。やがて、こちらに向かって進みだした。どういうことだろう?


「あっ!こら!何してるの!?」


イーナに連れられて来た者を見て、思わず声を上げた。


二つの魔力の正体はパドティアとタカラナだった!


「ユリアス様。叱らないであげてください」


イーナが庇う。二人はここにいる全員のアイドルなのだ。皆もそういう目で僕を見た。

けれども、叱る時は叱らなくてはいけない。何より僕は二人を危険な目に合わせたくないのだ。


「エリナ姉さんとかには黙って出てきたんだね? 絶対にビレッジの者たちは心配しているよ」

「「ごめんなさい」」

「それに森は危険なことは話したよね。どうして、ついてきたの?」

「あの、私もラナもお父様のお役にたちたいの。お姉様達やお兄様達みたいに」

「私もです。ママ(マーベラ)の様に強くなりたい。前にユリアス様は森で強くなれると言ってましたから、来たかったのです」


本当にこの娘達は純粋なんだ。これ以上は叱れないな。なんて、思っていたら、マーベラが……。


「こら!二人とも!いいか、ユリアスもアタシもお前達に何かあったら悲しくて仕方ないんだぞ!他の者達もみんなお前達が好きなんだ!勝手なことをして!」


僕以上に激怒している。

気がついたら、叱っていたはずの僕がマーベラを宥めていた。


「来ちゃったものは仕方ありませんね。二人とも夜営の準備を手伝いなさい」

「「はい!」」


サリナがさりげなく役を与えて、解放してあげた。


アントラーの念思を使って誰かに迎えにこさせようとしたのだけれど、二人は一緒に行くと言ってきかない。強くダメだと叱ってもきかない。これ程、自分の意思をはっきりと主張することはなかった。二人に自我が芽生えているのだろう。


「ティア、ラナ、私の目の届くところにいるのですよ。貴女達は私が守ります。その代わり、みんなのことを良く聞くのですよ」

「「はい!アンフィ叔母様」」


こうなっては仕方ない。未知の森へ二人を連れて行くのは不安だけれども、何があっても守ると心に誓った。

同行が決まれば、あとは二人が居心地の良いようにしてあげるだけだ。直ぐに二人が溶け込めるような雰囲気になっていく。


「ねえ。お父様。お兄様達にお名前つけましたか?」


今回同行しているアントラー兵の中で名のついているのはサリナの息子の二人だけだ。サリナの廃鉱山跡地の魔物討伐依頼の時に功績のあった者で、サリナに頼まれて三人に名を付けた。その時の一人はツキシロなのだ。奇しくもその時に命名した者たちが揃っている。ツキシロ以外の二人の名は『カイド」と『ジバール』だ。


ティアに促される形で僕は残りの8人に名を付けた。全て星の名に因んだ名だ。彼らには(うじ)も与える。『ヴィアラクテ』、彼らの氏名である。こういう機会にどんどん付けてあげたい。




僕がブカスの森で二泊するのは、アルセイデスの森に入る前に、皆の力量を知っておきたいからだ。

そういった理由で翌日はブカスの森で魔物討伐を行う。アンフィの調査によると生息する魔物は70種、人の脅威となるのは20種ちょっとだという。


「ブラックウルフです!」

「承知!」


ブラックウルフは(つがい)で行動する魔物だ。

アンフィ系の『テグミネ』が魔紙を出して、魔法陣を展開して一頭を火炎で焼く。もう一頭は、なんとルナが近づいて体術で押さえ込み、貫手で倒した。

相手はDクラスとはいえ、なかなかの腕前だ。これには驚いた。


続いて出来きたのは『バクラン』。猪系魔物で牙を鳴らして精神系の攻撃で、敵の動きを止めて突進してくるBクラス。牙の音叉を聞くと何故か動きたくなるというから気をつけなければならない。


『ヒーンンンッ』


牙が鳴った時、スイレンがその場の皆に「癒し」といってヒーリング効果を付与する。そのため、バクランの精神攻撃に掛かる者はいない。すぐさま、カイド(サリナ系)が短刀を投げて討った。


1日をかけて皆の力量、得意な戦い方が凡そ掴めた。明日はいよいよアルセイデスの森へ入ろうか。


ツチグサレ消滅隊のアントラー兵達に名が付きました。

ヴィアラクテを姓とした10人です。サリナの息子、アンフィの息子、それぞれ5人づつ。ヴィアラクテ家サリナ系とヴィアラクテ家アンフィ系と呼ばれることになります。

ユリアスが氏を与えるということは、すなわち、市民権を与えるということです。

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