表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
テイマー初級編
5/144

鍛錬(1) 森へ

 僕は街を出て、『ブカスの森』と呼ばれる森へ向かっていた。

 今回の目的は五日間の自主鍛錬。依頼ではないけれど、これからのためにどうしてもやっておきたかった。


 荷物はそれなりにあるけど、サリナの従者が黙々と持ってくれている。とても助かる。

 街の防護壁を抜けると、そこから20kmほどは一面の草原だ。以前、ビークインの球根を採りに来た場所。魔力が薄い土地だから、大型の魔物が出ることはまずない。


「荷物、持ってくれてありがとう。君の名前は?」


「これが私の務めです。それに、我らには名など不要」


 物静かな声だった。話によれば、彼はサリナ直属の運搬部隊に所属しているらしい。なるほど、確かに荷物持ちにはうってつけだ。


 でも、名前がないのはやっぱり不便だ。何か頼むにしても、どう呼べばいいかわからない。


(せっかく接点を持てたんだし、名前くらいは付けてあげたいな……)


 運搬と力に関わる名前のほうが覚えやすいかも。力……パワー? いや、ちょっと安易すぎる。

 確か、神話に“力を司る神”がいたはず。――そうだ、ルドラ。少し変えて……


「ねえ、しばらく一緒にいるんだし、呼び名があったほうが便利だよね。力の神にちなんで――『ルドフラン』。それが君の名前だ。よろしく、ルドフラン」


「名をいただけるとは……これほどの光栄がありましょうか。この任務、命を懸けて果たしてみせます」


 なんだかものすごく感激されてしまった。けど、喜んでもらえたなら、よかった。


 さて、今回の鍛錬の目的は、ステータスの底上げにある。

 ステータスが上がらなければ、スキルもレベルも上がらない。まずは基礎から、だ。


♦♦♦♦♦

体力98/魔力22/俊敏性10/耐毒性1

♦♦♦♦♦


 これが僕の現在の主要ステータス。細かい項目もいくつかあるけれど、重要なのはこのあたり。

 毒耐性は、以前うっかり毒キノコを食べて七転八倒した結果として、なぜか付いていた。苦い経験だけど、ステータス的にはありがたい。


 レベル相応に見れば悪くはない。むしろ魔力は高い方だ。ちなみに、魔物であるサリナは魔力120。アンフィも100くらいあるらしい。

 この五日間で、できれば体力を100、魔力を25までは伸ばしたい。


 ルドフランと話しながら進むうち、森の輪郭が見えてきた。空気が変わる――森の中は魔力が濃く、肌に感じる。


 3、4kmほど中へ進んだところで、良い場所を見つけた。四本の大木に囲まれ、下草も少ない。

 とはいえ、腰丈ほどの低木はあるので、それを刈るのも鍛錬のひとつだ。

 周囲の安全を確保しつつ、5メートル四方の空間を整えるのに半日を要した。夕暮れには、ようやくベースが完成。

挿絵(By みてみん)

「今日は食事して、早めに休もう。本格的な鍛錬は明日からにしようか」


「承知いたしました。私は二、三日程度なら眠らずとも支障はございません。夜間は見張りを担当いたします」


「ありがとう、頼んだよ」


 任せられるところは任せよう。甘えるのも生き残る術のうちだ。

 夕食をとり、シュラフに潜り込んだ。静かな夜が始まる。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ――ユリアス様は、不思議なお方だ。

 私のような下位の従者に名を与えてくださるなど、考えられないこと。


 サリナ様が仕えるだけのことはある。あの方の主として、誠に相応しい。


 ……それにしても、なんと胆力か。森の魔力に満ちた夜の中で、まるで恐れもせず、眠りについておられる。


 「キィィッ」


 気配に目を向けると、小型の魔物が数体、ユリアス様の魔力に引き寄せられていた。

 この程度なら、眠りを妨げるほどではない。私は静かに槍を構え、魔物たちを始末する。


 ――? 身体のキレが……明らかに違う。


 これが、サリナ様の言っていた「名を与えられれば、力が高まる」という現象か……!


 なるほど、これは本物だ。私の中で何かが目覚めるような感覚がある。


 明日からの鍛錬が――楽しみでならない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ