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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
賜爵と授領、開拓
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レーテーのお願い

光の中は何も無い白い空間だった。ただ、一人の美しい女性が立っている。


「貴女がレーテーさん?」


「ええ、そうよ。ようこそ、ユリアス。私も貴方にお願いがあったのよ」


「えっ?僕にですか?」


「そうなのよ。まずは貴方の話を聞くわ。私にどんな御用だったのかしら」


「僕は『水の宝玉』のお礼をしたくて」


「あら、宝玉なんかのお礼? そんなの幾つでもあげるわよ?」


レーテーさんはそう言って、空中から宝玉を手にして、ぽんっと僕に向かって放り投げた。慌てて受け取る。

えっ!?こんなに簡単にくれるものなの?


僕は再びお礼を言う。ついでだから、宝玉について聞いてみた。


宝玉は色々な種類があるそうだけれど、『水の宝玉』はレーテーなどの水の精霊の力のこもった玉だということ。具体的には水の加護を受けて、水属性のスキルを使役できる。

確かに宝玉を得てから、『水の礫』という小さな水弾を放てるスキルが加わったっけ。でも、それだけなんだよね。

そういうと、カエルラを間接テイムした時のように、何かきっかけが必要みたい。カエルラの時はアクアランスというスキルを得たね。きっかけは人それぞれらしい。


僕の魔力は、サリナ達が言うように他の人とはちょっと違うらしい。魔素の純度が非常に高いのだそうだ。それを取り入れると、身体の全ての機能が上昇するという。僕には分からないけれどね。

そして、純度が高いので、他の魔物や人よりも、魔力消費量が少なくて済むんだって。例えば身体強化に通常は10の魔力を使うとしたら、僕の場合は1で良いらしい。なんと10分の1だ。


「ただ、ユリアスは使い方が下手くそね」

「そうなんですか?」

「ええ、下手くそよ。ヒューマンでそれだけの質を持つ者は、まずいないから仕方ないのかもしれないけど」

「どうすれば、いいのですか?」

「魔力を使うことよ」


レーテーさんが教えてくれたのだけれど、なんということはない。魔力をどんどん使えってことだ。


「強くなりたい?」

「そりゃ、強くなりたいですよ」

「そう。じゃあ、少し手助けしてあげる」


レーテーさんが『ヤトノリュウ』と声をあげると、目の前に2本の角が生えている小型のドラゴンが現れた。深緑色の身体で、角は白い。このドラゴンは水竜の息子なんだって。


「戦ってみなさいな」


僕はそのヤトノリュウと戦った。

戦ったというより、模擬戦をこなして、教えを受けたというかんじかな。もちろん僕は全力で挑んだんだけれど、一太刀も入れることが出来なかったよ。

でも、それがきっかけだったんだと思う。二つのスキルを習得できた。

【水の旋盤】……水を円盤状にして回転させて相手に放つスキル。

【水の囲い】……自分を水の膜で囲って守るスキル。スキルレベルを上げると自分だけではなくて大人数を囲って守ることができるんだって。


「筋は悪くない。お前の持ち味は速さだ。動きながら攻める手立てを考えるがよい。『水の旋盤』を上手く使え」


とは、ヤトノリュウのアドバイスだ。


「あらあら。ヤトが気にかけるなんて珍しいわね」

「おお。こやつ、中々、面白いぞ。気に入った」


ヤトノリュウに気に入られた。


「ついでだ、ユリアス。これをやろう」


ヤトノリュウが息をふっと吐くと、僕の足元に『トスッ』と小刀が刺さった。


「ありがとうございます。これは?」


「手にしてみるがいい。オレの鱗だ」


手にしてみると、確かに深緑の30センチほどの鱗片だ。


「さっきは小刀だったけど……」

「ああ、魔力を流してみろ」


言われた通りにしてみると、小刀に変わった。柄が深緑なのが、鱗であったことがうかがえる。


「それで、お前が意識せぬ限り小刀として使え」

「はい。そうします」

「それはな、投げて使ってもいいぞ。相手の眼を追って飛んでいく」


なんと追撃効果があるらしい。凄い良い武器を貰ったんじゃない!?


「ずるいわね。ヤトだけユリアスにいい格好しようなんて、ずるいわ!」

「ふははっ!ならばレーテーも何かやればよかろう」

「そうねえ……。じゃあ、これはどう?」


レーテーから黄色の小石を手渡された。何だか分からない。


「握ってご覧なさい」


小石を握る。

すると手の中から小石が消えた。


「あれ?消えた!?」

「ふふふ。貴方の肩よ」

「えっ?」


右肩に羽の生えた小さな女の子が乗っていた!シルクのような質感のワンピースを着ていて、黒髪、羽は白い。ぼやっと周囲が光っている。


「アンヌーンよ。水の妖精。何かとユリアスを守ってくれるはずよ」


水の妖精・アンヌーンは危険を察知してくれるそうだ。怪我した時も治癒してくれるという。これはありがたい。マンマルポーションの使用量が減るよね。


「普段は小石だから、腰袋に入れておくといいわ。必要に応じて勝手に出てくるから」

「そうなんですね。ありがとうございます。アンヌーンもよろしくね」

「よろしく!ユリアス。わたし、このまんまでいるよ」

「おや、珍しい。アンヌーンは不精だから、妖精の姿でいるのは珍しいのに」

「ユリアスの傍、気持ちいいから。小石だと感じられないもん」

「まあまあ。本当にユリアスは人たらしねぇ。ふふふ」


精霊も魔物最上位種のドラゴンも妖精も人じゃないけれどね!気に入ってもらったのなら、それは嬉しいことだ。


「それでレーテーさんのお願いって何ですか?もう、ここに来て三日経つので、皆が心配してると思うので帰ろうと思うのです」


ヤトノリュウと二日ほど戦ったりしていたので、皆に連絡出来なかったし、きっと心配かけているはずだ。


「皆のことは大丈夫よ。それより本題ね。

実はね。ユリアスにあるキノコを消して来て欲しいのよ」

「キノコ?」

「そう、キノコ」


カシェの泉はレーシィの森の中にある。本当ならば森を管理しているレーシィが解決すべき問題なんだそうだけれど、今は不在なんだそうだ(なんと200年ほど)。それで、仕方なくレーテーが管理しているんだとか。

キノコというのは『ツチグサレ』というキノコで生えてしまうと、その周囲の土壌が腐敗してしまう。土壌の中の魔力も消滅して、その空間は生き物の一切棲むことが出来なくなるとのこと。


「この間、生えた時は世界の三分の一ほど荒野になったわね」

「ああ、あれは酷かったな。500年ほど前だったか?」

「違うわよ。もう少し前よ。2000年くらい前」


この方達の時間感覚が、僕とは違いすぎる!


「それで、前回はどのように解決したんですか?」

「えっと。確か凍らせて、燃やしたのよね」

「いや、逆だろう?燃やして凍らせたんじゃなかったか?」

「そうだったかしら?どちらにせよ。氷結と燃焼ね」


それって上位の精霊やドラゴンなどの魔物上位種で早めに対処出来たんじゃないのだろうか?


「それならば皆さんで取り除いた方が早くないですか?」

「それが出来ないのよ。アルセイデスが腐っちゃったから、森のバランスが悪くてね」


精霊が腐る?なんと、精霊のアルセイデスはツチグサレの胞子を吸い込んでしまって、腐ってしまったらしい。でも200年もすれば復活すると、特に心配はしていないようだ。

それにしても、彼女達で対処出来ないというからには出来ないのだろう。緊迫感はないけれども。


「それにヒューマンに関係ない話じゃないのよ。棲家を無くした魔物達がヒューマンの所へ押し出されて行くことになるから」


あ、ここ最近、オーク達が増えた原因はこれだ!合点がいった。


「分かりました。急がなくちゃなりませんね」

「そうね。50年くらいは余裕あるかしら」

「そんなにないだろう?2.30年じゃないか?」


どうも、彼女達と話していると時間感覚がおかしくなる。森の崩壊ということではそれくらい?の時間的余裕があるのかもしれないけれど、押し出される形となった魔物でヒューマンである僕達には早急な問題のような気がする。


僕はその「お願い」を受けて帰る。


泉の淵に戻ると、「遅かったですね」とガディアナ達は割とのんびり構えていた。


「直ぐにお戻りになるかと思いましたのに、30分も何をなさっていたのですか?」

「えっ?30分?」

「ええ。何を驚かれて?」


やはり時間感覚がおかしい。少なくとも3日は光の中にいたはずなのに!

ともかく、僕らは色々なことがあった泉から帰路についた。



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