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フェントカゲ

やはり慶事というのはいいものだ。ちょっと華やいだ気分になる。


「認めていただいて感謝しかございません」


ツキシロは言うけれども、反対出来るわけないよね。


「それと、もう一つお願いが……」


婚約の話よりも話しずらそうにしている。なんだろうか?


「この件も母上やエリナ様には了承をいただいておるのですが、私をユリアス様のテイムモンスターにして下さいませんでしょうか」

「ふぁえっ!?」


驚きのあまり変な声がでちゃった。サリナやアンフィーの息子たちは、彼女たちへの忠誠心が強い。彼女たちを通じての間接テイムではなく、直接にテイム契約をすると言うのだ。どういう心境なのだろう。


今の僕のテイムモンスターはガディアナとパドティアの二人だ。Bクラスとなり、テイムスキルが上がった時に4人のテイム枠となったので、二枠は空いているのだけれど。


「サリナは何て?」

「良い決断だと仰っていただきました。私は母上を敬愛しております。それは間違いございません。

そして、その母上がお慕いするユリアス様へは私達を導いてくださるという尊敬の念と恩義を感じております」


面と向かって言われると、とても恥ずかしい。ツキシロが真剣なので、照れてはいけない。しっかりと受け止めなくてはいけないよね!?


「それらの想いとは別に、御一緒していきたいと思った次第です。物凄い勢いでご成長されるお姿についてまいりたいと。共に成長させていただけたらと。

そう考えると胸の鼓動が激しくなり、興奮が押さえられません。どうか、お聞き届け頂けませんでしょうか」


そこまで言ってもらえて幸せ者だと思う。僕のことを美化しすぎだとは思うけれどもね。


姉さんも母親であるサリナも賛成しているのなら、僕に断る理由がない。

僕はツキシロの申し出を受けた。直ぐにテイム契約を済ませたのだった。契約時にツキシロが恍惚な表情をしたような気がしたのは忘れることにしよう。

しかし、それだけでは終わらなかった。スイレンを間接テイムすることにもなってしまった。スイレンは街なので帰ってからとなるんだけれど。

どうして、こうなったのやら……。


「他に何か言いたいことがある人いる?」


一同は首を横に振る。良かった。もうキャパシティがいっぱいだよ。


やっと落ち着いて泉の淵に腰を下ろした。ズボンを膝まで巻くり、水に足をつけるととても心地良い。僕の横にガディアナが座る。


「そうだ。友を紹介いたしますわ」


そう言って指笛を鳴らす。すると対岸にぬいぐるみが現れた。ぬいぐるみではない。ぬいぐるみのような青いトカゲだ。丸みがあって、爬虫類の質感は無い。

そのトカゲは、ぱちゃぱちゃと水面を走って、こちらにやってきた。50cmくらいの大きさだ。僕の顔を見上げて、頭を膝に乗せてくる。撫でろと言っているようで、頭を撫でてあげる。可愛らしい。


「一緒に泉を守っているフェントカゲです。可愛らしいですけれど強いんですのよ」


ガディアナもトカゲを撫でながら言う。

聞くと、Bクラスの魔物だと言う。口から水流を放出するのだが、その威力は凄く強いんだそうだ。


「キュキュ、キュキュッ」


トカゲはガディアナの方を向いて何やら話しかけている。それをガディアナはこくこくと頷いて聞いている。

ガディアナが僕に向き直ったのだけれど、少し困ったような表情だ。


「どうしたの?」

「それが、この『カエルラ』がですね。あっ、カエルラというのはこの子の名前です。それで……。この子が私とユリアス様と一緒にいたいと言うのです」


はて?一緒にいたいとは?マーベラの時のように街までついてくるということなのかな?

よくよく話を聞くと、僕の魔力が心地よくて、ということのようだ。ガディアナと話し合った結果、カエルラは僕の間接テイムモンスターとして契約することにする。


泉の守護は大丈夫なのかと思ったのだけれど、カエルラの兄弟達がいるそうで問題ないとのこと。


僕は手を(かざ)し、魔力を放つ。ガディアナに、そしてカエルラに流れていき、間接テイムする。


『ピンッ』


【共成長】スキルが1つあがりレベル8に。【アクアランス】という新たなスキルも得た(レベル1)。


「あれ? カエルラは人型にならないね?」


僕が魔力を与えたり、テイム契約すると人型に固定されるという話だったけれど?


「おそらく、テイム契約に必要な魔力だけだったからではないでしょうか。改めて魔力を与えると固定されそうですよ」



そういうものなのかな。カエルラは人型を望んでいるのだろうか?聞いてみた。

すると、人型化は望んではいないらしい。でも、僕の魔力は欲しいという。

僕の魔力なんかで良かったら与えたいけれどね。僕の魔力を得ても人型化しない方法があるかもしれないから、よく調べてみよう。

ところが、調べる必要はないと少し後で分かる。どういうことかと言うと……。


カエルラはガディアナと何やら話をして、急に「とぽん」と水に潜ってしまった。時間にして10分くらいで戻ってきて、僕とガディアナの間にちょこんと座ってくる。よく見るとおでこの真ん中に翡翠色の小さなポッチが付いている。さっきは無かったはず。


そして、また何やらガディアナと会話する。


「あら、そうなの!?

ユリアス様、カエルラに魔力を与えてあげてくださいな」

「それはいいけど、大丈夫なの?」

「ええ。私も見てみたいので、お願いします」


僕はまた魔力を与える。

すると、ぽわんっとカエルラは子供の姿になった。5、6歳児ってところだね。

やはり、人型化しちゃったじゃん!?


男の子かなと思ったら、フェンとかに性別はないんだって。


カエルラ(人型)がひとしきり歩いたり跳ねたりして、自分の体の具合を確かめている。しばらくして満足したのか、おでこのポッチを触ると、ぽわんっとフェントカゲに戻った。

アントラー達は元々人型化する能力を持っている。ワイルドキャッスル達は変化の能力で変われる。人型に姿を変えることができる魔物というのは、実は少ないんだ。


「精霊・レーテーに【源姿帰換】というスキルをいただいたそうです」


どうやら人型から本来の姿に戻るスキルなのだろう。初めて聞くスキルだ。


「ねえ。今、精霊に会ってきたの?」

「そのようですね。もっとも、常にレーテーはこの泉に居ますから」


それはそうなんだけれど、普通はそんなに簡単にコンタクトはできないんじゃない!? なんか羨ましい。

そんな気持ちが表情に出ていたのかもしれない。


「キュキュ?」

「あの、ユリアス様はレーテーに会いたいのかと聞いていますよ」


心を読まれている!?


「そりゃ、会ってみたいよ。宝玉のお礼もしたいしね」

「そうですか。ならば会いに行かれては?」

「は? 会いに行けるの?」

「ええ。泉の中に居ますからね」


なんと、会えるのか? 是非、会ってみたい。精霊とか見たことないもん!


でも、僕は人だから、水の中では息が続かないだろう。だけれども、ガーディアナは大丈夫だと言う。


それならば……。


僕はカエルラに導かれるまま、泉に身を沈めた。

本当だ。息が出来る!なんとも言えない浮遊感もあって、不思議な感覚だ。何かに包まれている感覚。

カエルラは僕の前を器用に泳いでいく。泉の中の水は透明度が高く澄んでいた。真ん中らへんは深いようだ。僕らはその真ん中へ進んでいったんだけれども、底の方が光っている。そこに向かう。


僕はその光の中に飛び込んだ。

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