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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
テイマー初級編
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休日の過ごし方

 初めての依頼をこなし、レベルアップも果たした僕たち――僕とサリナ、そしてアンフィは、しばらくギルドの依頼を受けずに過ごすことにした。


 サリナは、増枠された20体分の従者の補充を行うという。アンフィも新たに自身の従者を育てる準備をしているらしい。それでも、ふたりは交代で僕の身の回りの世話をしてくれている。


「ねえ、サリナ。どうやって仲間を増やしてるの?」


「私の魔力を削って卵を作ります。その卵に、係の者たちが集めてきた魔力と、身体の素材となる物資を与えるのです」


「ふぇ!? 魔力を削るって、なんか大変そうだね……」


「まあ、簡単ではありませんが、それほど苦ではありませんよ」


「そう? 無理して倒れたら困るから、あんまり頑張りすぎないでよ?」


「ありがとうございます。私より、はじめて従者を生み出すアンフィのほうが、きっと大変です」


「そうなんだね。ところで“物資を与える”って具体的に何を?」


「それは、どのような従者にするかで異なってきます。ユリアス様の縁者ですから、知性は必須です。それに加えて、防御力に優れた個体、攻撃力に特化した個体――目的に応じて必要な物資も変わってくるのです」


 知性を与えるには水晶が必要らしい。サリナはすでに大量に確保しているとのことだ。防御力には薬草や動物(魔物ではない)の骨、攻撃力には獣の肉や岩塩が有効とのことだった。


「ふむふむ、なるほどね……。それじゃあ、サリナ。この魔石、使ってみられないかな?」


 僕は先日手に入れたビントルの魔石を1つ手渡した。魔石は魔物の魔力が凝縮されたもので、自らの魔力を削っているサリナの負担軽減になるかもしれないと思ったのだ。


「ありがとうございます。核となる魔力は本来、私自身のものでなければなりませんが……他の魔物の魔石を使ったことはありません。試してみます」


「うん。砕いて細かくして使ってみて。それで少しでも楽になるなら嬉しいから」


「……ああ、ありがとうございます。私は幸せ者です。うぅぅ……」


「な、泣かないでよ! そんな大げさな話じゃないってば!」


「いえ……ユリアス様のようにお気遣いくださる主は、他におりません。ギルドで出会ったテイム体の仲間たちに聞きました」


「そ、そうなの……? でも、僕たちは主従じゃなくて“家族”なんだから」


 そう言ったら、また泣き出してしまったので、そっとしておくことにした。僕は本気でそう思っているんだから、仕方ない。


 アンフィにも同じように魔石を渡したところ、やっぱり母娘だ。そっくりな反応で涙ぐんでいた。


 ――3日後。サリナとアンフィが報告にやってきた。


「もう育ったの!?」


「ええ。通常は1週間ほどかかるのですが……あの魔石のおかげかもしれません」


「そうなんだ。よかったね」


「はい。加えて、少し能力の高い個体に育ってくれました」


「私のところでも同様です。お母様と同じく、上質な個体になりました」


 それなら、また従者を増やすときには、さらに上質な魔石を与えてみてもいいかもしれない。彼女たちのスキルや戦力が上がっていくのは楽しみだ。


 さて、僕には『共成長』というスキルがある。僕が成長すれば、サリナも成長する。ならば、僕がもっともっと強くなればいいんじゃないか。


 アンフィは間接テイム体だから、成長が反映されるかは不明だけれど、それでも僕自身を鍛えておくに越したことはない。


 そう考えて、僕は森へ1人で修行に出ようと決めた。


 サリナもアンフィも大反対した。でも、これはどうしても必要なことだと感じていたので、根気よく説得した。


 この世界では、人間が暮らしているエリアは本当にごくわずか。世界全体の60%が海、残りの40%が陸地だが――その陸地のうち、人類が生活しているのはわずか2%しかないという。残る98%は、ほとんどが森林や山岳地帯で占められているのだ。


 サリナが地図を広げて、そんな説明をしてくれた。もっともその地図はほとんど想像で描かれたものらしいけれど。


「人の世界って、すごく狭いんだねぇ……」


「いいえ。この世界が広すぎるのです」



 なるほど。そういう見方もあるのか。


「ユリアス様が鍛錬されるのであれば、何かあったとき、すぐに私たちが駆けつけられる場所にしていただきます。それ以外では……従者、いえ、“家族”として認められません」


 隣でアンフィも、真剣な表情でこくこくと頷いていた。


 “家族として”――そんなことを言われたら、僕も折れるしかないじゃないか。


「……わかったよ。じゃあ、街に近いこの辺りでいいかな?」


「ええ、問題ありません。それと、私の従者を1体、同行させます。ユリアス様の鍛錬の邪魔はさせませんので、同行をお許しください」


「うーん、本当は1人で行きたかったんだけどな。まあ、いいや。認めるよ」


 僕がそう言うと、2人の顔がほんの少し明るくなった。


 ――こうして、僕は街の近くの森へと向かった。


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