コロン族(2) 村と矢
コロン族のおじさんを一族事招き入れたら17名になった。屋敷に住んでもらおうとしたんだけれど、彼らのサイズにあらゆる物が合わないという。
「なあ、にいちゃん。甘えちまって申し訳ねえんだけどよ。敷地の隅っこの方に家を建てちゃダメかい?」
おじさんは申し訳なさそうに言ってきた。
敷地はまだまだ空いている。半分も使いきれてないくらいだ。
「構いませんよ。それと今更なんですけれどお名前は?」
「本当か?じゃあすぐに家建てさせてもらうぞ。それと名前はノハーナだ。ノハって呼んでくれ」
「それではノハさんと呼ばさせていただきますね」
「おう。ユリアスの旦那、よろしくな」
なんか旦那なんて呼ばれるとすごく歳をとったような気がするけれど、そう呼ばれるらしい。
「じゃあ、ドワーフに頼みますか?」
「あん?ドワーフ? いや、大丈夫だ。オレ達で建てるよ。2.3日で建つからよ」
自分たちで建てるようだが、コロン族はドワーフ族と近い種族らしい。道理で体型なんかが似ているわけだ。
よく似ているドワーフとコロンだけれど、コロン族の方がより小さく、肌も褐色だ。女性は両族ともスタイルが良くて色白で綺麗なのが不思議だ。
その後、僕の敷地を実質管理している姉さんとコロン族に貸す場所を決めた。
敷地の入口に近い方からギルド、僕の屋敷、アントラー宿舎、チェンジャー団宿舎が並んでいて、その間に訓練場がある。奥まったところに研究所が、少し離れたところにコロン族の家々が建つことになる。
余談だけれどチェンジャー団宿舎に住んでいたマーベラだけれど、最近、屋敷に住むようになった。
3日経つと本当に家々が完成した。17名だけれど9世帯で9棟の家がサークル状に並ぶ。真中に井戸を堀りたいというので許可したら、それもその日に出来ていた。さらに同日に家3棟分の広さの仕事小屋なる物も完成。ドワーフもコロンもなんて建設技術が優れているんだろう。
僕の敷地内にコロン村が完成した。敷地内に村だなんて、全くもって不思議な話だけれども……。もう、僕個人の敷地ではないね。
数日後、僕はノハおじさんに呼ばれて、コロン村に行くと、コロン族の皆が全員揃っていた。
「どうしたの?ノハさん」
「旦那。オレらコロン族は旦那に忠誠を誓う」
そう言って全員で片膝をつき頭を下げた。従臣のポーズだ。
「ち、ちょっと待って!ノハさん!」
「一族の総意だ。これからは何でも命じてくんな!それとオレに『さん』付けなんてしちゃいけねえ。呼び捨てしてくれ」
どうやら決意は固いようだ。
「わ、分かったよ。今後のことはエリナ姉さんとも話をしなくちゃいけないけれど、よろしくね、ノハ」
「おう。オレらにできることは武具を作ることくらいだけどよ。その他の事でも精一杯やるぜ!なあ、みんな!」
『おうっ!!』
こうして、僕はコロン族の者達を臣下に治めることになってしまった。
僕は早速にアイーダ草原で大量に得たアミラージの角を手渡した。
「これを鏃にして矢を作れないかな?」
ノハは手に取って確かめつつ言う。
「オレらの矢の鏃は魔物の骨、主に重さのあるグレーボアの骨を使うんだ。これは重さの手頃だしいいかもしんねぇな。特性はあるのかい?」
「多分、痺れ効果があると思うんだよ。刺さった時に痺れたから」
「アミラージが生きていた時だろう?それなら魔石で魔力を与えてやりゃ、その効果がつくかもしれねぇ。試してみるぜ、旦那」
「うん。頼むよ」
ノハは角を持って工房へ入っていった。
この間のアイーダ草原での魔物達との戦いで、僕らには遠距離での攻撃力が不足していると感じていた。弓による攻撃を覚えれば、それが補えるかもしれない。
矢が出来上がってきたのは1週間経って、エリナ姉さんがコロン族に嫌がらせしていた者達への対処を終えた時だった。
「という訳で当該私兵(地区長の)とチンピラはシムオール都市からの追放となったわよ。これで依頼達成ね」
「おう。ありがとな。エリナの姉さん。
そんじゃ、これが成功報酬の矢だ。受け取ってくんな」
矢を受け取った姉さんも顔が綻んでいる。
「それと旦那から頼まれてた矢も出来たぜ。試してみて、これでよけりゃ鏃の本数分作る」
「ちょっと!?それなあに?」
僕が確かめようとすると横から姉さんが取り上げてまじまじと矢を検分する。
「これはアミラージの角ね。篦と見事なまでに一体化されてて素晴らしいわ。それと口巻に何か入れてあるの?」
食い付きが凄い。僕は何が入っているのか知っている。アミラージの魔石だ。
ノハがそのことや効果などを説明する。
「私、聞いてないけど? ちょっとユリアス。これどうするつもりなの?さっきの話では本数を揃えるようだけど」
僕はいずれ弓部隊を作って、遠距離攻撃できるようにしたいと言った。
「ふうん。なるほどね。ユリアスも色々と考えてるのね。いいじゃない。量産しましょ。
ノハ。費用はどのくらいかしら?」
「いや。姉さん、この費用は僕が出すよ。売りに出すつもりはないし」
今の僕には財力はある。ブカスの森、アイーダ草原で大量に得た魔石の売却益で、僕一人ならおそらく一生過ごせるだろう。
「そう? でも、1本は私に売って」
エリナ姉さんは武具のコレクターでもある。コレクションの1品に加えたいのだろう。僕は了承した。
その後、矢を試したが素晴らしかった。後日出来上がってきた矢は21本。もっと本数を揃えたいので、近々にアイーダ草原で取ってこようと思う。