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間接テイムした

僕達はカラブレット王国シムオール都市のテイマーギルドに戻ってきた。


「エリナさん。戻りました」


「ユリアス君。おかえりなさい。そして、ご苦労さま。早かったですね」


「ええ。サリナ達が頑張ってくれましたので。で、こちらがビークインの球根です。20個あります。多い分には構わないんですよね?」


「に、20個? あ、あの、1つ聞いていいかしら?」


「はい、なんですか?」


「ビークインは魔物に守られていたと思うのだけれど?」


「ああ、ビントルですね。いきなり現れてビックリしましたよ」


僕はそう言いながらサリナを見ると、サリナはこくりと頷いて、鞄からビントルの魔石と遺された素材の毒針を取り出して、カウンターのテーブルに置いた。


「ち、ちょっと待って!」


そう言ってまたカウンターの奥の部屋に通された。聞きたいこともあったので良かったのかもしれない。


エリナさんは僕をソファに座らせて、「ふぅ」と息を吐くと自らも対面に腰掛けた。


「あのね…。まあ、説明は後にして、まずは依頼の報酬をお支払いしましょう」


エリナさんは球根を1つ1つ泥を拭きながら、重さや大きさを計測して、書類に書き込んでいった。


「はい、球根20個分の報酬は3銀貨と64銅貨よ」

「えっ!そんなに!?」


贅沢しなければ20日間は暮らしていける額だ。僕の驚きを余所にして、「そんなことより…」とエリナさんは身を乗り出した。


「また、副マスター呼んだから少し待ってね」

「はい」


エリナさんが魔石や毒針を検分していると、昨日と同じように扉が開いてジュオンさんがやってきた。


「やあ、ユリアス君。話は聞いたよ。ビントルまで退治したらしいが、どのくらいの数を?」

「24です」


ジュオンさんは軽く目を見開いて、隣のエリナさんを見る。エリナさんはトレイに載せられた魔石と毒針を見せる。


「そうか。やはり君は期待の新人だな。がははははっ」


僕は昨日、インセクタル型の魔物をテイムしている者は極端に少ないこと。そしてアントラーというアリ型の魔物などおそらくは皆無ということだった。インセクタル型魔物は従えるだけの知性を持ち合わせているのは珍しいそうだ。

さらにテイムした魔物が他の魔物を従えていることなど前代未聞との事で、昨日は色々と聞かれたのだ。


「やはり、『サリナ』君の従者も一緒に?」


「ええ。その通りです。ビントルが数多現れたのを退治できたのも彼らがいてくれたからですよ」


「そうか。やはり君は規格外だな。今回の君の状況はレベル5くらいでは無理なはずなんだ。おそらく10前後のレベルが必要だろう」


「そうなんですか? あっ、でも僕は今日レベルが2つ上がって7になりましたよ」


「はっ?そ、そうか。大したもんだ」


「ありがとうございます。サリナもレベルもスキルも上がったんですよ。サリナは100体の仲間を従えるようにな--」

「なんだって!?」


ジュオンさんもエリナさんも立ち上がって驚きの顔を僕に向けた。


「すまないが説明してくれ」


「説明といっても言葉通りなんですけれど…」


「…えっと、君は勘違いしているようだがテイム体が成長することは普通はない。なのでテイマーは資質を上げて、なるべく高いレベルやスキルを持つ魔物をテイムするのだ。テイムした魔物を解除するのは、出来ないことはないが難しいし色々と問題があるからね」


「そうなんですかあ。多分『共成長』というスキルが関係しているのかもしれませんね」


「共成長か…。そんなスキルもあるんだな。独自スキルか?」

「いえ、僕のステータスには固有とは記されていませんよ。あの、固有スキルっていうのは今回取得出来たみたいなんですけれど、固有スキルと独自スキルって違うんですか?」


僕の問にエリナさんが説明してくれた。細かい説明はエリナさんの方が得意なようだ。それによると、固有スキルは種族や血統に固有のスキルということ。例えばエルフ族固有のスキルとか、そういうものらしい。独自スキルというのは個人または単体しか持っていないスキルでネームドモンスターなんかが持っていることが多いということだ。


「ということは僕の『共成長』スキルは固有とも独自とも記されていないので、他にもスキル保有者はいるんですよね?ならば、テイム体が成長している人もいるんじゃないですか?」


「いや、聞いたことがないな。おそらくは極めてレアなスキルなんだろう。先程、君は固有スキルを獲得したと言っていたが、どんなスキルか聞いてもよいか?」


あのレベルを測る板はそこまで詳しくは分からないらしい。元々スキルはあまり人に言うものでもないとの事だ。


「いいですよ、というかそのことを僕の方から聞きたかったんです。

僕の取得したのは『間接テイム』というスキルなんです。テイム体を通じて別のテイム体を従えることが出来ると出ているんですけれど、分かりますか?」


「ん? サリナ君は100体を従えているんだろう? そういうことじゃないのか?」


「いいえ、違うと思います。サリナの従者達は僕が指示を出せません。全てサリナを通じてなんです」


「ふむ」


ジュオンさんは顎に手をやり考えはじめた。


「テイム体を通じてか…。ひょっとして指示系統の違いなのかもしれないな。

今まで君はサリナ君に指示を出し、サリナ君の指示に従って従者がという形だった訳だ。それを今度はサリナ君を通さずに指示が出せるということなのではないか?」


「なるほど。とは言っても分かったような分からないような気がします」

「明確に答えられずにすまん」


そう言って頭を下げたがかえって気を使わせてというか頭を使わせてしまったような気がする。気にしないで下さいと答えておいた。そうして僕はギルドを後にした。

あっ。ビントルの魔石と毒針は少しだけ(魔石4つと毒針4本)手元に残して、残りはギルドに買い取って貰った。銀貨5枚の大きな額だった。


そうなると間接テイムをどうやるのか分からなくなってしまった。テイム体を通じてということはサリナを通じてということだ。


「ねえ、サリナ。サリナを通じてだと思うんだけど、サリナはもし間接的にだけれども僕のテイムとしてふさわしい者を知らない?」


まずはサリナに聞いてみた。方法は分からないけれども、いい者がいるなら知っておきたい。


「そうですね。私の部下達はみな知性もあり、勤勉でそれなりに資格があるでしょう。ユリアス様から名付けて頂いたらさらに力がつきますし」


テイム体は名付けてやると少し能力がアップするのだそうだ。

誰がよいかサリナは考えていたようだが、「そうね、そうだわ」となにやら納得顔になり改めて口を開いた。


「あのユリアス様。よろしければ私の娘はいかがでしょうか?」

「えっ?サリナって娘さんがいたの?」

「はい、おりますよ。私は群れを構築しておりますから、跡継ぎを残さねばなりませんから。アントラーの女王としての教育をしております。それも大分形になり、そろそろ巣立ち、我々の場合は巣別れとなりますが、その時期かなと思っておりました」


なるほど、やはり種族の習性や行動規範は元のアリに似ているんだな。集団社会性ってことか。


「なるほど。じゃあ、娘さんに話をしてみてくれないか」

「はい。お任せください」


翌日、サリナは1人の女性を連れてきた。


「ユリアス様、昨日お話した娘になります」


「はじめまして。サリナの娘になります。よろしくお願いいたします」


見るとインセクタルの特徴である触覚がピョンと出ている。可愛らしい娘だ。人間で言うと10代後半に見える。ちなみにサリナは妖艶な感じで30代前半の見た目だ。


「こちらこそよろしくね。名前は?」


「母にはアントーラミルフィーユと呼ばれておりますが、ユリアス様にお決め頂くと嬉しく存じます」


ちょっと名前が長い。


「それじゃあ、『アンフィ』でとう?」


彼女はにっこりと笑うと「ぜひその名でお願いいたします」と言ってくれた。

どのように*間接*テイムするかなんだけれど、とても簡単だった。サリナとアンフィの前に立ち手をかざしてスキルを発動すると僕の手から一筋の光がサリナへ、サリナからアンフィへと伝わった。光が収まった時には間接テイムできていた。


***

間接テイム体(主テイム体『サリナ』)

『アンフィ』

種族:インセクタル魔物アリ族アントラー Lv.5


スキル1:女王の支配(女王固有スキル) Lv.1…同種のアントラー20体を従属させる

***


間接テイムがテイムと何が違うのか、できることできないこと等分からないことも多いけれど、それも徐々に分かって来ると思う。

ともあれ、僕は『アンフィ』を間接テイムした。


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