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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
テイマー初級編
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ムワット石の採取(5) アイーダ草原(2)

僕らはアイーダ草原で魔法の練習をしたりして結構疲れた。夜の帳が落ちる頃には眠くなる。

サリナとツキシロが夜営の準備をそつなくこなし、早々にチョコレッタが眠りについた。本来ならばこういうパーティの場合、周囲を警戒する者を立てる。順番にその役割を担っていくのだ。皆が平等に。


「寝てしまわれましたね。いかが致しましょう。起こして見張りの順番を決め直されますか?」

「いや、いいよ。疲れているんだよ。森では緊張しっぱなしだっただろうし、草原では火球の練習していたからね」

「うふふ。そう、仰ると思っていましたわ。相変わらずお優しいこと」

「そんなことないよ」


なんか照れる。


「それではユリアス様もお休み下さい」

「いいよ。これから先にさ。依頼の中には眠れない案件もあるかもしれないでしょ?そういった時のために眠らない訓練も必要だと思うんだ」

「はあ。仰ることは分かりますけれど……」


僕に対しては過保護気味なサリナは心配そうに視線を送ってくるが受け流しておく。


『キュキュッ』『キュキュッ』


草原の中のあちこちで何やら鳴き声がする。小さな生き物のようだ。


「これって『アルミラージ』だよね。結構数がいるみたいだね」

「ええ。『アルミラージ』でしょう。近年は数が減ったと聞いておりましたけれど、持ち直してきたようですね」

「そうだね」


『アルミラージ』はラビット型の魔物で頭部に1本の長い角を持つ。別名、一角ウサギなんて言われたりもする。絶滅に瀕しているという。


「僕は出会ったことはないけれど、サリナは?」

「私はございます。小さな体ですがやはり一本角のフォルムは美しいというか可愛らしかったですよ」


思い起こせば、そう思ったらしい。当時は美しいとか醜いとか可愛いなんていう感情で物事を見なかったという。僕と出会って変わったんだと礼を言われる。


「可愛らしいけれど、割と凶暴なんだよね?突っ込んで来るんでしょ?」

「ええ。角を刺して魔力を奪いに来ます」

「へえ。見てみたいな」

「夜行性ですから難しいかも知れませんよ」

「うん。出会えたらな、くらいの願望でそんなに強く願っている訳でもないさ」


話をしながらサリナは空を見上げた。少々、顔色が険しい。


「ユリアス様。失念しておりましたが、明日は青の月の日です。明日の夜は警戒が必要ですわ」

「あっ!青の月か!」


この世にある二つの月の内、青い光を放つ月は半年に一度昇る。

その夜は魔物が活発に行動するのである。稀に街に魔物がやって来るのも『青い月』の日の夜に集中しているのだ。


「やばいな。明日の夜は。昼間にできるだけ手を打っておこう」

「はい。そうしましょう」


僕らはツキシロを交えて明日の打ち合わせをはじめる。横ではチョコレッタが気持ち良さそうに寝息を立てていた。


--翌朝--


日の出とともにサリナとツキシロは動きだす。ツキシロは森へ、サリナは草原を東へ。

ほどなくして、すっきりした顔でチョコレッタが起きてきた。事態を説明する。

チョコレッタも『青い月』の夜のことは知っていて青ざめている。


「ど、どうすればいい?街の人に頼み込んで入れてもらう?」


現実的ではない。おそらく入街を断られるだろう。魔物に襲われているならばともかく危険があるというだけで、気絶しそうなほど臭くて周囲に迷惑をかけそうな人を入れてはくれまい。


「なんとか乗り切れるように準備するのさ」

「わ、分かった。わたしは何をすればいいの?」

「ええとね……」


チョコレッタにできることは少ないけれど、パーティメンバーとしてできることはしてもらわなければならない。それが今後の彼女のためでもあるはずだ。


夜には野営地をできるだけ明るくしたい。夜行性の魔物は光を避けるものが多くいる。もちろん、そんなの関係ないものも、インセクタル魔物の一部のように寄って来てしまうものもいるが、総じて光を嫌う傾向があるのだ。

そのためにツキシロはランタンの台として、真っ直ぐな木を伐採しに行っている。

サリナは水辺に生える光る魔植物を取りに向かっている。東の方に川があるのでそこに。ランタンは一基しかないから、代わりとしてできるだけ光を発するものが欲しい。


「チョコレッタはね。根っこがよく燃えて長時間持つ魔草を集めて欲しい。魔草の識別できる?」

「ごめん。できない……」

「そうだよね。気にしないでいいよ。教えるから」

「うん。教えて」

「じゃあ、探してみようか」


チョコレッタに探してもらうのは魔油の原料となる『モエーネ』。葉っぱが無く、茎だけひょろひょろと伸びている。特徴的なので分かりやすい。


「わあ、覚えやすいね。

ユリアス君はこういうのどうやって覚えたの?」


えいっとモエーネを引き抜きながら聞いてくる。


「昔からそういう本とか図鑑とか好きでね。今のギルドにもそういう本はたくさんあるんだよ」

「へえ。私は頭悪いから本とか苦手ー。でも、今度、勉強してみよっかな」

「僕らみたいな職業には必要な知識だと思うよ。こんどギルマス(エリナ姉さん)に頼んでみな」

「うん。そうするー」

「あっ。この草は気をつけてね。抜くと魔物出てくるから」

「げっ!?ほんと?」


僕が見つけたのは『ビークイン』。テイマーとなって最初の依頼の植物だ。球根の採取依頼だった。


「ほんとだよ!ほらっ!」


僕が引っこ抜くと、ブーンと『ビントル』が現れる。


「わ!わ、わ、わ!」


「大丈夫だよ、それっ!」


僕はすぐに斬り落とす。もちろん魔石は回収だ。

2時間ほどで結構な量のモエーネ(の根)があつまった。あまりこんを詰めても能率が良くないので一休みしていると、ツキシロが、やや遅れてサリナも帰ってきた。


「首尾はどう?」


「私はこれですわ」


サリナは麻袋いっぱいの『ツキノシズク』をとってきた。


「こちらは10本切ってきました」


ツキシロは言った通りの真っ直ぐな木を持ってきてくれた。一本が手首ほどの細さの木とはいえ、10本ともなると結構な重さだし、長さもあるので運び辛かったに違いない。

僕とチョコレッタは二人を労った。


「さて、材料は揃ったね」


木を野営地の真ん中…僕らの焚き火をする近くに1本、野営地を丸く囲むように残りの9本を立てる。


「中心の木にはランタンを乗せて。周りの木にはモエーネの根を等分して乗せるんだ」

「「「わかった(分かりました).」」」


これでよし!

次はツキノシズクを9本の木の間に植えてゆく。日が落ちれば光り出すはずだ。

それぞれの光は弱いけれど、数があればそれなりの明るさになるだろう。

サリナがランタンの明かりはさほど明るくないと言い出した。ランタンの仕組みはガラスの筒の中にガラス玉が置かれていて、下部に魔石を入れることで光るのだ。多分、ガラス玉に魔法陣が組み込まれていて、魔石の魔力を利用するんだろう。光量が少ないということは魔石の魔力が少ないのか、魔石は使い捨てのようなので魔石自体の質が低いのかもしれない。

僕は下部を取り外し、昨日のオークの魔石の上に置いてみた。すると、結構な明るさで光る。日中なので分かりづらいけれども、十分な明るさだ。


「明るくできそうだけど、あとは?」


これだけ?という顔をしてチョコレッタが尋ねてくる。


「夜になったら魔力探索のスキルを使うよ。500mの範囲なら感知できるから。だけど2時間半くらいしか持たないんだ。なので日没までは暗くなってきてもスキルは使わない。サリナとツキシロの持ち合わせている察知能力も重要になるよ」


「はい。ユリアス様ほどの感知能力はございませんけれど、神経を尖らせておきますわ。ツキシロもそうなさい」

「はい。そういたします」

「うんうん」


明かりと魔物の魔力感知、ひとまずはこれでいいだろう。


あとは実際に魔物が出てきた時のことを考えなくては……。


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