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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
テイマー初級編
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ムワット石の採取(4) アイーダ草原(1)

森を出た僕らは(アイーダ)草原の中ほどまで進む。森に近くては魔物が出てくる可能性が大きいし、街に近いと夜営の篝火なんかが目立ってしまいそうだから。


「この辺りでいいかな。チョコレッタ、この辺りを僕達が寝泊まりできるくらいの範囲で焼いてよ」


「分かったわ。……でもユリアス君、貴方はわたしの魔法を便利に使おうとしてない?

まあ、いいけどー」


ちょっと文句を言いつつも「ファイヤー」の魔法で焼き払った。僕の想像よりも広かったけれども。


「焼いたけどさ。このまま座ったら煤けるよ?」

「大丈夫。シート敷くから」


腰の鞄から1cmくらいのキューブを取り出して見せる。


「それがシート?」


3人共首を傾げている。


「見ててごらんよ」


そのキューブを焼けた広場の真ん中に置いて魔力を流す。

すると、『パタパタパタ』と折りたたまれた紙が開かれるように広がって、あっという間にシートが敷かれたのだ。


「す、すごいね!何、これ? 私も欲しいーっ! ねね、これって売ってるの?」


「残念!非売品!僕の幼馴染が昔作ってくれたんだ」


ちょっと自慢した。

残念がっているチョコレッタを諦めさせつつ、みんなで腰を下ろす。椅子がないので足と腰が痛くなりそうだ。

そんなことを思っていると、「ちょっと離れます」と言ってツキシロが走って行った。十数分後丸太を担いで戻ってきた。


「これ、どうしたの?」

「はい。椅子にすればよかろうと思い、切ってきました」

「そ、そうなんだ。ありがとう」


丸太をサリナとツキシロが剣で切り、全員分の腰掛けとテーブル用の台を作りあげる。実に逞しい!


姿勢が楽になってサリナが出してくれたコルル茶を飲みながらチョコレッタに色々と話を聞く。


「なるほど。魔術師の属性って12もあるんだね。チョコレッタは『火属性』だけなの?」


「ううん。わたしは今のところ『火』『土』『風』の属性を持っているわ」


今のところってことは今後増える可能性もあるわけだ。


「へーっ。でも火球凄かったよ」


「ありがと。でも、普段はあんなに威力ないよ。ユリアス君のおかげだと思う。無詠唱もできるようになったし」


ふんすっと力こぶを作って見せてくる。


僕はチョコレッタを見ていて思うところがある。きっともっと力を伸ばせる気がしているんだ。色々とアドバイスしてあげたい。一期一会の関係だから、深く関わってはいけないのは分かっているので、あんまりお節介は焼かないけれど。


それから『火属性』の魔法についてや、魔法そのものについて色々と聞いていく。知らないことを知るのは楽しい。サリナもツキシロも「なるほど」と頷きながら興味ありげだ。


「ということは僕のようなテイマーと魔術師では魔力の使い方がちがうんだね。

魔術師は魔力を頭を通してイメージして、魔法陣で発動させる。

テイマーの使うスキルは体の中心に魔力を集めて発動させる」


「難しいことは分かんないけど、そう言うこと?」


その話をしているとツキシロがちょっと考え込んでいる。

あ、そういえば……。


「ねえ、ツキシロも『守護の膜』を使う時に魔法陣を浮かび上がらせるよね?」


「はい。そうです。覚えましたから」


隣でサリナは「うんうん」と首を縦に振っているので説明させてみた。


サリナは僕を守る為に『守護』のスキル持ちであるツキシロに、魔法の中から良さげな魔法陣を覚えさせたというのだ。

初めは魔法陣を出すことも出来なかったが何度もトライするうちに発動させることができるようになったらしい。

いくつかの魔法陣を覚えてはいるけれど、発動できるのは『守護の膜』だけだという。


「『守護の膜』は無属性の魔法よ。魔法陣を展開できるってことは、ツキシロさんは魔術師の素質あるんじゃない?」


「それは凄いね。ツキシロ、これからも他の魔法を試してみなよ。魔法陣おぼえているんだからさ」


「そうですね。ツキシロ、頑張りなさい」


「はい。精進いたします」


周りに魔法が使える者がいるのは、きっと良い事だと思う。


「あのう。私が『守護の膜』を発動させる時にチョコレッタさんが仰るように、一度頭部に魔力を流すのです」


「やっぱり、そうなんだね」

「でしょでしょ!」


サリナは会話に加わらず、なんかブツブツと小声で呟いている。そして何か納得がいったのか顔を上げた。


「……チョコレッタさん。今一度、火球の魔法陣お見せいただけませんか?」


「ん?サリナ姉さん?どうしたの?

まあ、いいけど」


サリナの願いにチョコレッタは魔法陣を浮かび上がらせた。サリナはそれをじっと凝視する。


「ありがとうございます。もう結構です」


何がしたかったのか理由はこの後で分かることになる。


サリナは少し深く息を吸い、精神を集中させている。


「たしかこんな文言だったかと……。

『火の精霊よ。我に力を与え燃え盛れ!』」


なんと!サリナの手に魔法陣が浮かびあがる。


「ファイヤーボール!」


とてつもなく大きな火球がサリナの手から発せられた。


『ドォン…』


数百mほど火球は飛び地面に激突したのか遠くで大きな音をたてる。


「す、すごっ! サ、サリナ姉さん、凄すぎる!」

「えげつないな!」

「さ、さすが母上!」


半ば皆、放心状態となった。


サリナは『火球撃ち』を習得したのであった。

それならばと僕も挑戦したけれど、キラキラ揺らめく魔法陣を覚えることがそもそも出来ずに断念だ。後できっちりと覚えて再挑戦してやる。


「魔力量が違うと威力もこんなに違うのね。ここまで差があると悔しくもないわ」


チョコレッタは割と冷静に受け止めているみたいだ。


「威力がないなら数を出せば?」


「簡単に言うわね、ユリアス君は」


思いついていることはあるのだけれど、チョコレッタ自身が学んでいくことなんだろうな。やはりアドバイスはしない方がいいかな。

そう思ってたら、サリナが耳元で


「導いてあげたらよろしいのでは?」


と囁く。

僕の心が見透かされたみたいな気がする。なんか背中を押された感じで、チョコレッタに向き直った。


「あのさ、チョコレッタ。たしかに数撃つのは大変だと思うよ。インターバルもゼロって訳にはいかないだろうしね」

「そうよ。わたしくらい(レベルが低い)だと余計に時間がかかるわよ」

「そうだよね。ところでさ、右手だけにしか魔法陣は出せないの?」


これは僕の誘導だ。


「出せるよ!ほらっ!」


左手ですぐに展開して見せた。今日、無詠唱で魔法陣を展開することを覚えたのに、もう完全に物にしている。チョコレッタには才能があると確信する。


「すごい!じゃあ、両手で同時には?」


「えーっ!?それは無理じゃん?

試して見るけどさ……」


上手い具合にチョコレッタが真剣にかつ集中してきた。ぶわっと両手が光りはじめる。


「左手の魔法陣が薄いようですわ」


「えっそう? もう一度!」


そうやって幾度も試して1時間後には両手に魔法陣を展開することができるようになる。


「それができたら発動すればいいんだけれど、魔力使うだろうからポーション飲んで」


僕はポーションをあげた。


そうこうして、チョコレッタは火球の両手撃ちをマスターしたのであった。


「凄い!ユリアス君、本当にありがと!」


チョコレッタは僕に抱きついてきてほっぺにキスをした。


『ピキンッ』


サリナの顔が引き攣り冷気を纏っている。

昔から僕が女の子と仲良くすると決していい顔はしない。急に不機嫌になったりする。

僕は慌ててチョコレッタを体から離した。


「ユリアス君はわたしの先生ね」


そう言われた時、僕に『指導』というスキルが加わったのだ。

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