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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
テイマー初級編
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サリナの任務

 敷地内の建物が建ち揃うと、さっそくギルド支社の業務が始まった。


「依頼は3件よ」


 1つは、西北にある鉱山跡でのミスリル採掘と、そこに巣食う魔物の討伐。

 2つ目は、東の郊外のゼル村に出没するシープキラーの退治。

 3つ目は、西隣のグラホップ市へ向かう商人の護衛だ。


「これはサリナね」


 1つ目の依頼は鉱山という特殊環境のため、サリナが適任らしい。


「2つ目はマーベラね。交渉が難航しそうだから、アンフィも一緒に行ってちょうだい」


 確かにマーベラだけでは心配だ。


「最後の護衛任務はユリアスね。随行メンバーの編成はお任せするわ」


「分かりました。でも、ギルドメンバーじゃないサリナやアンフィ、それにマーベラたちが単独で任務を受けても大丈夫なんですか?」


「うふふ、無問題よ!これは『チーム・ユリアス』への依頼なんだから。それに、サリナやアンフィはすでにギルド登録済みよ」


「えっ?いつの間にですか?本人たちの意思確認はしてないんじゃないですか?」


「まあ、いいじゃない」


 なんだか釈然としないけれど、サリナたちも乗り気のようだし、認めるしかないか。


「アタシは仲間外れか!?」


 マーベラがむくれている。


「ち、ちがうわよ!す、少し手続きが遅れてるだけ。任務が終わるころにはちゃんとメンバーよ!」


 エリナ姉さんは焦ったように言う。……これは単に忘れていたな。


 ともかく、3件の依頼を受けることになった。

 どれも案外報酬は良い。俺たち家族の収入は、栽培が始まった魔野菜の販売や、日々の素材採取による売却が主だ。それらもギルド経由で捌いている。なんとか暮らしていけそうな気がする。



●サリナの任務


 さすがエリナ。私にぴったりの任務ですわ。採掘自体は『採掘ギルド』の分野でしょうけれど、魔物が出る以上は私たちの仕事というわけですね。


 初任務で失敗はできません。ユリアス様の顔に泥を塗るわけにはまいりませんから。


 私は採掘班として10名、魔物討伐班として15名を選抜いたしました。



 半日ほどでノース鉱山跡に到着しました。「跡」と呼ばれているのは、魔物が棲みついて採掘ができなくなっているためのようです。


 少し緊張いたします。ポケットからユリアス様の魔石飴を取り出し、口に入れました。舌でコロコロと転がしていると、落ち着きますし、魔力も満ちてまいります。


「さあ、行きますよ」


 私は息子たちに声をかけ、坑内へ足を踏み入れました。途端に鼻をつく魔物の匂いがいたします。


 最初に現れたのは《バットラ》です。吸血性の魔物で、天井に無数に張りついておりました。


 私は跳躍し、次々にバットラを斬り払っていきます。私の手をすり抜けた個体は、息子たちが斬り捨ててくれました。数十分ほどで、すべてを駆逐することができました。さほど脅威ではない相手です。


「油断しないでください。まだ入口です。奥へ進みますよ」


「はいっ!」


 息子たちの声が坑内に響き渡ります。ユリアス様がおっしゃる「家族」とは不思議なものです。息子たちをそう認識してから、ますます彼らが愛おしく思えてまいります。



 その後、メナシヘビラやカビヘビラというスネーク型の魔物たちを討伐いたしました。カビヘビラは素早く、不規則に動くため、少々手こずりましたが、無事に退治することができました。いずれもDランクの魔物ですが、この環境では討伐が難しかったのかもしれません。


「母上様、奥に何かいます」


「分かっています。魔力量がかなり大きいですから」


 ゆっくりと警戒しながら進むと、そこにおりましたのは——


 《アルファーナ》。三つの頭と四つの尾を持つスネーク型の魔物です。Bランクの存在ですが、恐れる必要はございません。私もすでにBランクなのですから。


「あなたたちは援護に回りなさい!」


 私は飛び上がりました。アルファーナの尾が右から左からしなるように襲いかかってまいりますが、私の速度にはついて来られないようです。尾を避けつつ、攻撃の隙を探ります。時折、三つの頭が大きく口を開き、噛みつこうといたします。


 左右の尾の攻撃をかわしたその瞬間、正面から何かが吹き付けられました。


 油断いたしました。咄嗟に右手をかざしましたが、「シューッ」と音を立てて腕の表面が溶けました。強い酸のようです。


「母上様ーっ!」


「大丈夫です!落ち着きなさい!」


 私は痛みに耐えながら、地面へと降りました。息子の一人がすぐにヒールを施してくれます。完全ではございませんが、ずいぶん楽になりました。さらに別の息子が「守りの膜」を纏わせてくれます。彼は守護のスキルを持っていのです。


 息子たちに支えられながら、再びアルファーナに向かいます。先ほどよりも速く動き、的を絞らせないように剣を繰り出し、また距離を取る。それを何度も繰り返しました。


 するとアルファーナの攻撃パターンが変わりました。尾の連撃から、一転して大きく口を開いた頭が突進してまいります。しかも酸を吐きながら。


 私は辛うじてそれを避けましたが、続けて尾が上下から襲いかかってきました。空中で体勢を崩し、直撃されると思ったその瞬間——


「母上!」


 息子の叫び声が響きました。見ると、アルファーナの一本の尾に剣が突き刺さっております。先ほどの息子が投げたのでしょう。彼はすでに手に剣を持っておりませんでしたから。


 ほんの一瞬の出来事でしたが、私はその隙を逃しませんでした。尾を足場にして跳躍し、頭をめがけて剣を振り下ろしました。


 ザクリ、と鈍い感触とともに、一つの頭が地面へ落ちました。



 その後、どれほど戦っていたのか分かりませんが、ついに3つの頭すべてを斬り落とし、討伐を果たすことができました。


 胸の奥から、熱いものがこみ上げてまいります。息子たちと共に挑み、支え合い、勝利を掴み取れたことが、何よりも誇らしく思えました。


 これは私たち家族の勝利です。息子たちと抱き合い、互いに笑みを浮かべながら喜びを分かち合いました。心の中に、確かな手応えと充実感が広がっております。


 その後、ミスリルを依頼の麻袋2つ分ほど採掘し、作業を終えるころには、疲労の中にも満ち足りた気持ちがございました。


 私は剣を投げた者、ヒールを施してくれた者、守護の膜を張ってくれた者、三人の息子たちにユリアス様からお名前を頂こうと決めました。


「さあ、帰りましょう!」


 鉱山を出たときにはすでに夜になっておりましたが、私たちは夜目が利きますので問題ございません。意気揚々と帰途につきました。



 鉱山を後にした私たちは、夜の山道を静かに進んでおりました。頭上には満天の星が瞬き、木々の間からこぼれる月光が、道の上に淡い光の帯を落としております。涼やかな風が頬を撫で、先ほどの激闘が夢であったかのように感じられました。


 そのときです。前方で、細い糸のようなものがきらりと光りました。目を凝らしますと、《ゼブラスバイダル》というクモ型の魔物が、網で何かを捕らえているのが見えました。


 駆け寄ってみますと、その網の中にいたのは、小さな《マンティラ》(カマキリ型魔物)の子どもでございました。体に傷を負い、弱々しく身を震わせております。


 私はすぐに剣で糸を断ち切り、クモを一閃で倒しました。


「もう大丈夫ですよ」


 傷を癒してあげますと、マンティラの子どもはぱちぱちと大きな目を瞬かせた後、私の足元にぴたりと寄り添ってまいりました。困ったように頭を傾けてみせましたが、その姿があまりにいじらしく、思わず微笑んでしまいます。


 仕方がないので、連れて帰ることにいたしました。後ほどユリアス様にご相談しなければなりませんね。


 こうして、私の初任務は無事に終わりを迎えました。夜風に吹かれながら、私は胸の奥に、静かな達成感を抱きました。

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