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シムオールへの帰り道

人数も多いけれど、荷の量もとても多い。荷馬車に換算すると3台にもなるだろうか。


「ふえー。凄い量だね」


それぞれの私的な着替えや装備などの荷物もまとめると結構な量だ。一番嵩張っているのは魔植物で一荷台はある。そこにダンゴムシやら魔法薬で姿を固定したカラカラとか他の魔物達。


荷の振り分けをしようとしていると、マーベラが『アタシに任せな!』という。


一匹のワイルドキャッスルを手招きして、何かを命じた。


『ぶおっ』


音とともにそのワイルドキャッスルはふたまわりほど大きくなった。それこそ荷馬車ほどの大きさに。


「こいつに載せるといいよ」


「おお、助かるよ」


次々と荷を載せていくがそれでも半分ほどは載らなそうだ。

するとまた一匹を呼んで大きくした。

そうして二匹のワイルドキャッスルの背に全ての荷は載せられて落ちないようにシートで固定された。


「ありがと、マーベラ」


マーベラは得意気な顔をして笑顔だ。


こうして僕らは街へ向かい歩きだした。


「なあ、『マンマル』なんて持っていってどうするんだ?」

「マンマル?」

「お前達がダンゴムシとか言ってるやつだよ」


ダンゴムシは『マンマル』という魔物名らしい。確かにまんまるだけど捻りのない名前だな。

今まで見たり聞いたりした事がないから人に知られていないかもしれないから持っていくんだと話をした。その時に広口のガラス瓶に入れてある卵らしきものも見せてやる。


「うん。これは卵だな。どうするんだ?」

「孵ったらいいなと思ってさ」

「孵してどうする?」

「マーベラの治癒にも使ったポーションが採れるかもしれないじゃん」

「ふむ、なるほどな。でも、このままじゃ孵らないよ」

「えっ?」

「だって魔力を入れてないじゃないか」


卵を孵すには魔力がいるらしい。そういえばアントラーの孵化(?)にも魔力を与えるっていっていたな。

いいことを聞いたと早速に魔力を与えようと手に魔力を集め出したら慌ててサリナに止められた。


「ダメですよ。ユリアス様の魔力を与えるとどのような変化が起こるか分かりません」


サリナの言葉にみんながうんうんと首を縦に振る。そんなことはないと思うんだけどなぁ。結局、カラカラの魔石を1個入れておくことにした。

荷台役のワイルドキャッスル達を後方にして僕達は歩く。いつの間にか打ち解けたのかサリナやアンフィとマーベラは談笑すらしている。仲が良くなったのはいいことだ。


「ねえ。マーベラ。こんなにワイルドキャッスルが街に入ったら大騒ぎになりますわよ」


サリナが言うがその通りだろう。


「大丈夫さ。街に近づいたら『変化』して人型にするから」

「そんなことできますの?」


興味深い話に僕も加わった。


「それはスキルなのかい?」

「そうだよ。『変化』スキルさ。サリナ達もそうなんだろ?」

「いや。私達はそういうスキルは持っていませんよ!?」

「そうだよね」

「よく分かんないっ」


んーと、『変化』か……。あれ?ひょっとすると……。


「マーベラ。変化ってことは他のものにも変われるのかな?」

「そりゃそうだよ。変化だもん」

「えっ!た、例えば?」

「四足の動物だったら大体変われるよ。びみょーに少し違うけど」


これって凄いことなんじゃなかろうか?

色々聞いてみると生き物(動物)に限定されていて小さな昆虫や鳥には変化出来ないらしい。それでも凄いと思う。


「でも人間はそれを知ってるでしょ? 昔からアタシ達の仲間を『化け猫』って失礼な呼び方してるじゃん」

「あー化け猫ってそういうことか!」


休憩しつつワイルドキャッスル達に変化してもらった。人型はそれぞれ個性があったし面白い。


「みんな名前はあるの?」


彼・彼女らに名前を付けてあげたかったけれど、あるって言われた。残念だ。

イーナ、ニーナ、サンナ、シーナ、ゴーナ、ムツナ、ナナナ、タカラナの8人だ。

数字で1.2.3.って名付けられてるのが分かりやすいっていえば分かりやすい。

ムツナとナナナが男で他は女性。荷台役をしてくれているのはイーナとニーナ。子供がタカラナ。よし、覚えた。


「ねえ。どうしてこの子だけハチナとかヤーナとか数字由来ではないのですの?」

「ん?アンフィ、それはさ群れで久しぶりに授かった子供だからさ。アタシ達の宝物ってことでね」


なるほどね。タカラナは大事にされているらしい。確かに可愛いもんな。

途中で昼食を済ませて一休みしていると、マーベラが『僕の魔石』をくれと頼んできた。飴玉のように舐めるらしい。


「喉を通った時、すごく美味しかったんだよ。お願い!」


仕方なく小さな魔石を染めてあげた。すぐに口に含んでニコニコして小躍りしている。周りのみんなはちょっと引いている。


「ど、どんな味ですの?」

「んっとね。甘くて、しょっぱくて、酸っぱくて、辛いの!」


よく分からない!喜んでいるならいいか。


「「あのう……」」


「どうした?サリナ、アンフィ」


「「私達にも魔石くださいませ」」


「はあ?」


結局、サリナとアンフィも僕の魔石を飴玉にした。

帰りの道中は話題が尽きない。サリナ、アンフィもレベルアップしてスキルも獲得していたし、ルドフランもレベルアップしてるらしい。


「そういえばお部屋どうしましょうか?」


サリナが少し困った顔でいう。ルドフランとラトレルの部屋は用意してきたらしいが、マーベラの部屋がないという。


「アタシはユリアスの部屋にいるからいいよ」

「「それはダメです!!」」

「やだ!ユリアスと一緒がいい!」


サリナ達とマーベラが揉めていたけれど、ルドフランとラトレルが一室を使い、マーベラに一室をあてがうことにきまった。


「ルドフラン、ラトレル、すぐに家を建てるからしばらく我慢してくれな」

「とんでもない。元々、我らは雑魚寝ですから問題ありません」


そういうがそういう訳にもいかない。彼らは家族なのだから。


最後のベースを出て半日で新たな仲間を加えてシムオールへ戻ってきた。


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