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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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誕生と妊娠

挿絵(By みてみん) クロム領のことは置いておいて、今はスイレンと産まれてくる子供のことで頭の中がいっぱいになる。


既にクロム領に赴いているツキシロには連絡がいき、急いでこちらに向かっているはずだ。


元からの僕の領地の者達は仕事の手を止めて、スイレンを見守る体制だ。




「テノーラ、コゾウ、分かっているとは思うが儂らがユリアス達の代わりに警戒せねばならんぞ」(テッテラ)

「「そうですね」」


彼らは度々ユリアス領を訪れ、住み着いたりして縁は濃い。主要な者達のことも良く理解している。


「さすがのエリナもこういう時は気がまわらぬだろう」(テノーラ)

「あるいは何かあっても、スイレンが無事に産んだ後に手酷く対処するつもりなのかもしれませんけれどね」(コゾウ)


どちらの意見も有り得ることだ。

例え、外部に目の向かないこの機に乗じて良からぬことをしたとしても、後から存分に対処出来る力がユリアス領にはある。

それは3人も分かっているが、諍いは未然に防げた方が好ましいのである。

それぞれの配下の者達は他領であるユリアス領内の警戒をするのであった。




スイレンが産気づいたとの連絡を受けたツキシロはクロム領を飛び出して走る。足の速いニーナが迎えに来てくれると言うが、じっと待つことなどできずに飛び出したのだ。

雪煙を出しつつ駆けていると、前方からやはり雪煙が近ずく。


「ツキシローッ!」

「おおっ!ニーナか!」


すぐさまニーナに飛び乗ると、ニーナも踵を返してスイレンの元へ駆ける。


「様子はどうなのだ?」

「大丈夫だ!専門の婆さんなんかが診てくれている」

「間に合うか?」

「間に合うさ!」


 ニーナは奔る。飛ぶように走る。


『バタンッ!』

「スイレン!」


 二人はツキシロの屋敷に駆け込んだ。


「おぎゃーっ!おぎゃー!」


 ツキシロを待っていたかのように、産声が屋敷に響いた。


「おめでとう!」

「ありがとうございます。ユリアス様。皆様」


 屋敷は歓声に包まれ、その中を産婆に抱えられた赤子が姿を現す。


「スイレン様は頑張られましたよ。女の子です」


 スイレンは可愛い女の子を産んだのであった。

それから三日三晩、お祭り騒ぎであった。


その子は『イヴァ』と名付けられた。慈愛に満ちているという雪の精霊からいただいた名だ。


イヴァの誕生のお祭り騒ぎが収まった頃、クロムが自領へと旅立った。


「寂しくなりますが、直に私も参りますからね。また、会いましょう」(アンフィ)


「はい。お義母さま。お待ちしております」(クロム)


新たな者が産まれ、ある者はこの地を離れるのだ。


クロム達一行は案外と大所帯だ。ゲン達建設部隊にクロムの補佐をするユーラシドリ元伯爵とその家臣達。クロム領隣のクレバス森林を前調査する者、荷を運ぶ運搬部隊。総勢20名程になる。


一行は紋章旗を掲げている。ユリアス家とクロム領の2枚の旗だ。2つの紋章旗はよく似ている。ユリアス家の紋章に銀の玉を加えたのだから当然で、2つの領の親密さが嫌でも分かる。

独特の意匠でデザインされた紋章旗は目を引き、2つの領の存在を十分に知らしめていた。







「やはり、居た者がいなくなったのは寂しいね」


思わず呟いてしまう。アンフィは寂しそうには見えないな。


「私は直に会いに行きますから」


なるほど、すぐに会えるからな。


「うふふ。ああ、言っておりますけれど、森林調査の準備をしたり、忙しくして気を紛らわせているのですよ」(サリナ)


そういうことか。一番クロムを可愛がっていたのだから、寂しくないはずはないか。


「旦那様。ご報告がございます」(サリナ)


「なあに?」


「私、懐妊いたしました」


「ええーっ!」


サリナが誇らしげに、それでいて少し照れた顔をして告げた。


とても嬉しいじゃないか!

僕の、僕の子供……。

なんか、ドキドキする。僕はどうしたらいいのだろう。公表しても良いのだろうか。


まずは夕食時に姉さんに相談した。


「そうね。慶事だし公表しようかしら。ただし、安定期に入っからね」


「うん。姉さんにお任せするよ」


姉さんなら安心してお願いできる。


「あのさ。アタシも子供出来たみたいだよ」


「「「えーっ!」」」


なんと、マーベラにも!?

一気に2人か!


マーベラとの子の事も姉さんに一任だ。


「あのー」(アンフィ)


まさか!!まさか、だよね?


「私も赤ちゃんいるみたいです」


やっぱり!?


こうして、いきなり僕の奥さんズの懐妊が判明した。


アンフィはクロム領に行く準備を進めているけれど、止めた方がよいのではないだろうか。


「大丈夫です!向こうで産婆を含めて手配しますから、どうか行かせてくださいまし」


そう懇願されたら困る。

アンフィにとっては研究は大事なのだ。

僕と姉さんは予定日が近くなったら、僕が行くか、アンフィが戻ってくるか、それを了承させて認めることになった。


「しかしまあ、一気に周りに子供が増えるわねー。養育担当の者を増やさなくちゃね」


ぶつぶつと言いつつ今後の体制を考えてくれている。



僕も本当の父親となるんだ。

子供たちに胸を張れるように、もっともっと頑張ろうと思う。


「私も結婚しようかしら」


姉さんの小さな呟きが聞こえた。

登場人物説明

ニーナ……ワイルドキャッスル。ワイルドキャッスルのNo.2。足は誰よりも早い。氏名はパドキャスル。

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