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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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捕虜達

お茶を飲み終えて、会議が再開される。


「寡兵して人数が揃ってもさ、役に立つかなあ」(マーベラ)


もっともだ。農夫や鉱夫だった者がいきなりいっぱしの兵とはならない。訓練が必要だ。


「イード。貴方が行きさいな」(姉さん)


「ふっ。珍しくこんな席に呼ばれたと思っていたが、そういうことか。

分かった。目処は?」


「とりあえず、ひと月ね」


イードさんは我が領の防衛部隊長だ。元シムオール都市軍の大将で軍卒については任せておける。


「それじゃあさ。捕虜はどうする?イードちゃんに預けるの?」(マーベラ)


その問題があった。

普通は相手と交渉して引渡したりする。

だが、今回は相手が誰か分からないのだ。交渉のしようがない。


「7名よね。その中でこちらに従属したいと願い出たのは?」


「4名とのこと。残りの3名の内、1人は迷っているそうですよ。あとの2人は今だに敵意を向けてきています」


「では、その2人は罪人として王都に連れて行きましょう」(コゾウ)


コゾウさんは王都にいるよりも、ここにいる方が多い気がする。気づけばいつもいる。


「4名はどうするのさ」(マーベラ)


「3名は魔術師、1名と態度を決めかねてるもう1人がテイマーなのよね!?」(姉さん)


「ええ。ツキシロの報告ではそうですわね」(アンフィ)


「2人のテイマーはそれぞれストーンドッグも共にいるそうです」(クロム)


「ツバサバイソンもいるよ。主のいなくなったストーンドッグも3頭って聞いたし」(マーベラ)


ちょっと整理してみる。態度保留の者を除くと。

・魔術師3名

・テイマー&ストーンドッグ 1組

・ツバサバイソン 1頭

・ストーンドッグ 3頭

ということになる。


「クロム。貴女の領で魔術師1人は抱えなさい」

「はい、それは構いませんが1人でいいのですか?」


姉さんが説明を加えた。


パレト村の村長をはじめ怪我した者にとって、原因となった魔物とテイマーに良い感情を持っていない。それは当然だ。

それ故に、テイマーもテイムモンスターであったツバサバイソン、ストーンドッグも、従属を誓ったとしても、感情的に受け入れずらい。……納得だ。


魔術師は別行動で擁壁造りをしていただけだというので、受け入れやすいだろう。

でも、3人のうち何故1人?


「従属を願い出たとはいえ、完全には信用出来ないでしょう? そういう者達を一緒に行動させると何やら良からぬことを考えるかもしれないじゃない」


なるほどね。じゃあ、残りの2人は?


「チョコレッタのところで1人面倒を見てちょうだいな」


先程のイードさんと同じような理由でチョコレッタも呼んだんだな。

チョコは今や騎士爵位だ。当然、領内の貴族としての責務も発生する。拒否権はない。


「はあ、そういうこと!? 分かったわ。

どうせなら、テイマーも預かるわよ」


なんか、チョコレッタも乗り気だ。

姉さんも「じゃあ、お願い」とあっさり決まった。


「あと魔術師1人なんだけれども、サリナ、学園で面倒見れないかしら」


「Eランクなのですよね? そのランクで講師といきませんけれど、講師の助手として受け入れますわ」


うん。受け入れ先が決まって良かったな。


「ねえ、貴方はなんでいつもいるのよ」


姉さんがテノーラさんをギロリと睨む。


「わ、私は身内のようなものだろう!?」


慌てるテノーラさんに「ふんっ」と鼻を鳴らしてあしらう姉さんだ。


「じゃあ、保留のテイマーとそのテイムモンスターを貴方が預かりなさいな」


「な!? それは難しいぞ!」


テノーラさんは難色を示したが、後ろに控えていたマジカルト・ダンダルさんが「よろしいですか」と発言の許可を求める。

ダンダルさんは士爵でテノーラさんの側近だ。


許可を得たダンダルさんが皆に一礼して口を開く。


「そのテイマーは私が預かりましょう。伯爵もご存知の通り私はテイマーです。配下として受け入れます。それと余っているストーンドッグも私のテイム枠が2つ余っており、2頭ならばテイムしても良いです」


そう、ダンダルさんはAランクのテイマーだ。従えているモンスターも『クリールキング』というBランクのモンスターだ。


「ふうん。ということだけど、テノーラはどう思って?」


「ふむ。ダンダルよ、おぬしが良ければ構わん」


ということで、行き先の決まってないのはツバサバイソン1頭とストーンドッグ1頭となる。


「じゃあ、残りは私が引き受けるわ」


姉さんが面倒を見ることで全ての処遇が決まったのである。おそらく、姉さんもAランクテイマーだ。テイム枠が空いているのだろう。



これですべての捕虜の処遇も決まった。

さあ、これで解散…と思った時、部屋の扉がノックされて、返事を待たずに1人の女性が入ってきた。


「スイレン様が産気づきました!」


「「「「!!」」」」


「ど、ど、ど、ど、どうしましょう」(姉さん)


「ご主人を早く呼んでくださいな」(乳母)


「分かったわ!」(アンフィ)


「お、お湯とかタオルとか必要なのですよね!?」(クロム)


「大丈夫です。既に準備は整っております。今は産婆も付き添っているので落ち着いておられますし」


「い、いつ産まれるの?」


それが一番気になるのだ。僕の問いに乳母は「神のみぞ知る」と答える。


「ですが、産婆の見立てでは今夜、おそらく5、6時間後ではないかと言うことです」


僕はスイレンの元へ走った。周りの者も。


「ツキシロ。早く戻ってくるんだ」


無事に生まれることをみなで祈るのであった。


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