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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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パレト村奪還戦

私はクロム領への出兵を命じられてやってきた。一緒に来たのは私のテイムモンスターのシロクマくん、スイレンから預かったトレントさん、バテンカイトスと彼の家臣2名、ボタインと家臣2名。私も家臣を1人連れて来ているので合計10名だ。

今回連れてきたそれぞれの家臣は全てヒューマンだ。足でまといになるかもしれないが、「人間の家臣を連れていって。大きな経験になるはずだから。ただし、状況を見て大怪我しないように気をつけること」とユリアス様のご指示があったのだ。


「ご苦労様です、ツキシロ兄様」


表立って兄弟と呼び合うのはよろしくないが、シルビィユは普段はしっかりとわきまえている。この数日の疲れが出ているのだろう。あえて咎めることはしない。他人に聞かれても「信頼関係故の呼び方」で通そう。


「状況は『通信』でおおよそ聞いたが、シルビィユの口から改めて教えてくれ」


詳細を聞くが予め聞いていた事とさほど違いはないようだ。3日ほど前の中の様子はイラソルが教えてくれたが、多分作り替えられているだろう。

現地で頑張っていた者の顔に若干の疲れの色がみえる気がする。


「村人救出、ご苦労であった。明日一日は動かぬのでゆっくり休め」


砦のようになっているだろう村内には「敵」しかいない。焦る必要はないとユリアス様も仰っている。


「それから今回のパレト村奪還はユリアス様が指揮を執られるので、それぞれ励んで欲しい」


「「「おお」」」


ユリアス様の名が出るとやはり空気が変わるものだ。皆がやる気に満ちた顔となるのだ。



翌々日、我らは再びつどう。




……パドレオン伯爵領・ユリアスの執務室……


「マーベラ、この配置でどう?」


僕なりに考えた配置だ。人間の者達は後にして、一番前にシロクマくん、続いてツキシロ達だ。


「あのさ今のところ、中の敵はテイムモンスター以外は人間なんだよね? だったら、こんなに要らないかな。シルビィユ達はデンネンカルロ領境の警備に充てた方がいいね」


マーベラが模型のデンネンカルロ領との領境をとんとんと叩いた。

言われてみるとクロム領のことを面白く思っていないのはデンネンカルロ子爵だ。この機に乗じて何か仕掛けてきてもおかしくはない。


「じゃあ、そうしよう。他には何かある?」


「うん。情報では中の魔物はツバサバイソンとストーンドッグだよね。ツキシロ達なら大丈夫だと思うけれど、魔物の数を増やしているかもしれないよ!?」


イラソルが潜り込んで村人を助け出してから五日ほど経っている。その可能性もあるか。


それでもツキシロやシロクマくん達で十二分に対応できるだろう。懸念があるとすれば同行者に人間がいることだ。不足の事態が起こるかもしれない。


「固まっていなければ大丈夫だと思うよ」


突入場所に集中させないようにか……。


そういえば、中の魔物は外側の魔力にも反応すると言っていた。


「ユリアス」

「マーベラ」


互いに同時に名を呼びあった。


「マーベラからどうぞ」

「うん。誰かにこの辺で魔力を放出させようよ」


マーベラが指さしたのは突入予定の門から離れた地点だ。


「うん。僕もおんなじ事考えてたよ」


「なら、決まり! 誰にする?」


ツキシロは門正面は動かさない。中で反応するほどの魔力を出せるのはボタインかバテンカイトスだな。


「アタシはボタインがいいと思う」


反対する理由はない。僕よりも彼らのことを知っているはずだし、一歩引いたとはいえ軍部の実質的トップであるマーベラだ。


「そうしよう。突入時の指示だけして、後の指揮はツキシロに任せるってことでいい?」


「いいよ!」


「じゃあ、パレト村奪還戦開始!」


後は朗報を待とう。




……パレト村再び……


ユリアス様から作戦の開始が告げられた。


「良いか? ボタインがある程度の魔物を引き付けてくれたら、トレントさんがあの擁壁を下から崩す。崩れたらシロクマくんを先頭に突入する」


「「「はい!」」」


ユリアス様からのご指示はここまでだ。後の指揮権は任されている。

私は皆に【守護の膜】を掛ける。いつの間にかレベルMaxとなっているスキルだ。特にヒューマンの者達には怪我をして欲しくないからな。


「行きます」


トレントさんの言葉で開始だ。


『ごがっ!ゴロゴロゴロ!』


おお、凄い! トレントさんは隣にいるのに眼前の擁壁が太い根に突き上げられて崩れた。


「突入ーっ!」


真っ先にシロクマくんが飛び込む。大きな体だが素早い。バテンカイトスも続く。

私とトレントさんが入った時にはあらかた片付いていた。

ただし、シロクマくんと対峙して「フーッフーッ」と鼻息が荒いのはツバサバイソン。見た感じなかなか表皮は硬そうだ。体格も同じくらいだし、彼らの決着は長引くかもしれない。

ならば加勢しようとすると、トレントさんに止められる。


「ツキシロ様が仕留めてしまわれたら、シロクマくんが来た意味がありませんわ」


私は力でシロクマくんを従えた。実際にツバサバイソンくらいならば容易く倒せる。しかし、それでは意味がないという。


「分かった」


いざとなれば私が出ればよい。シロクマくんに任せることにしよう。


バテンカイトスは【挑発】スキルを発動しているのだろう。ストーンドッグが彼の周りに引き寄せられている。

驚いたのは、そのストーンドッグを打ちのめしているのは私達の家臣達だった。そう、人間のだ。

それぞれの家臣達は厳しい訓練を受けてきた。それでも、Dランクとはいえ魔物を倒せるほど強くなっていたとは嬉しい誤算だな。


気がつけばボタインが元村長屋敷に突っ込んで暴れていた。


「ツキシロ様ーっ!」


両手に気を失った敵兵をぶら下げて寄ってくる。死んでる?死んでないよな?


「うぅぅぅぅ…」


うん。生きているようだ。

直ぐにボタインの家臣が縛り上げた。


気がつくとシロクマくんの方も決着が着いたようだ。案外呆気なかった。

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