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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
123/147

名付けの日

昨晩からまた吹雪いている。こういう日は屋敷で引きこもりだ。


皆がまったりしている。


僕を除いて!


僕の所領の領民は離地であるイケイリヤの街を含めて6千人。もっと離れたナデージダ学園都市、オアシス宿場街には続々と人も集まって来ている。

そういう他領から移住してくる人達はいいんだ。身上はしっかりしているし。


問題は僕の周りの者達だ。


アントラー、ムネアカアントラー、ツムギアントラー、デーアビントル達。名前の無い者の数は300以上だ。


「382名ですわ」(サリナ)


そうらしい。400に近いじゃないか。


その者達に名付けするのが僕の仕事。はっきり言うと、そんなに思い浮かばない。

かと言って、他者からも認識されるようになり、ずっと使用する名前だ。いい加減には付けられない。


鉱山に赴くことが多い者達には鉱石名を由来として、デーアビントルやムネアカアントラーは花の名を…といった具合に、決して適当に付けたりはしていないつもり。


「あのさ。ツムギアントラーはサリナが付けてあげるべきじゃない!?」


ツムギアントラーのアルセはサリナのテイムモンスターだ。


「えっ? 考えてもみませんでした」


表情を見るに本当にそのようだ。

そして、ツムギアントラーの名付けはサリナがすることに。


「むう。名を付けるって大変なのですねぇ」


サリナが付けるのは40名ほどだ。それでもアイディアが出てこないと頭を抱えている。


そうなんだよ!大変でしょ!?


「難しく考えるからだよ!アタシは……」


「マーベラの名付けは参考になりません!」(サリナ)


確かに参考にならない。番号とか色あいとかで安易につけるからね。


名が決まると(うじ)なのだが、こちらも大変だ。家名となると子孫が永年使用することになる。


テノーラさんやテッテラさんに頼んで断絶してしまった家名で使用しても良さそうな氏を見繕ってもらうことにする。

ただ、家名の場合は個人全てに違う氏を付ける必要はない。「ヴィアラクテ」のようなものだ。ヴィアラクテの(うじ)は今のところ10名が名乗っている。ある程度のグループで同じ氏でも問題はないだろう。





「ふうーっ!終わったあ!」

「終わりましたねー」(サリナ)


鉱物、星、花、神話、精霊、偉人、物語の登場人物、ありとあらゆるものを参考にして丸3日かけて名付けを終えた。



「ところでさ。サリナのテイマーランクは?」


「Dですね。体感ですけれど、テイムモンスター…私の場合はアルセですが… 魔力を与える頻度が多かったり、共に行動する機会が多ければ上がるような気がします」


なるほど、マーベラもEランクのようだしな。アンフィは未だにFランクだ。与魔力と行動を共感する時間が関係しそうだ。


「おそらくだけど、Cランクになったらテイムできるのが2人になると思うよ」


「……ちなみに新たにテイム契約したとして、その者の名は……」


「もちろん、サリナが名付けさ」


「……仮にランクが上がっても、新たに契約するのは控えたいと思います」


ふふふ。よほど名付けが大変だったとみえる。




「あのさ。この間、サンナがワイルドキャッスルを5人ほど従わせたんだけれど、どうする?」(マーベラ)


「チェンジャー団に入れるんでしょ!?

問題ないよ。イーナに名前付けてもらいなよ」


「ん? アタシが付けてもいいんだけど?」


「いや、今はイーナが団長だからさ。彼女に任せてみようよ」


イーナの名付けの方が良いと思う。常識人だからね、イーナは。


こうして400名弱が市民権を得た。


僕のスキルの影響からか、名付けた者達の能力が上がるらしい。もちろん個人差はあって、全体的に上がる者もいれば、ひとつの能力が上がる者もいるそうだ。


デーアビントルの者達は総じて飛翔能力と持続力が上がった。


「ユリアス様。私たちデーアビントル一族はある仕事でお役に立ちたいと思うのですがいかがでしょうか?」


プティラーナがそう言ってきた。

どういうことだろうと詳しく聞く。


プティラーナ曰く、デーアビントルは領の役に立っていないと感じていたそうだ。

そんなことはない。「飛べる」というのは凄い能力だし、その能力で離れた地同士の連絡や軽貨物の運搬をしてくれているじゃないか。

それに彼女達の生産するハチミツはとても美味くて、「高級ハチミツ」として人気がある。それを領の特産として販売もしている。

決して役に立っていない訳ではないのだ。


プティラーナは特性を活かして「通信」の仕事を担えないかとの事だ。


エリナ姉さんに相談し、行政関係担当のガディアナも含めて話し合いが行われたそうだ。「そうだ」というのは、その場に僕は参加していないから。結果だけ知っていれば良いと外されたのだ。




『ビントリア通信社』ができた。

コルメイス、ブカス(の森)、ナデージダ、オアシス、イケイリヤの間で定期的に手紙等を届ける会社だ。




「コゾウ殿。これは画期的なシステムだぞ」(テノーラ)

「ええ。久しぶりに来てみたら、驚きましたよ。定期的な連絡網として有効ですな」(コゾウ)

「生の情報を得られるのう。しかも届くまでの時間が速い」(テッテラ)


今までは一般人の連絡手段というと、そこに赴く者に依頼する方法だった。依頼された者もついでに届けるのだ。都合によって時間もかかるし、何らかの事情で届かないことも多い。

それを「定期的」に、空を飛んで「最速」で届けてくれるのだ。

まさに画期的である。


「本当にここは面白い」


コゾウは他地でも可能かどうか思案するのだった。

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