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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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ウサギ狩り

皆が一斉に動き出して狩りが始まった。


「あれ? 魔法薬を掛ける暇なく魔石になっちゃたよ?」(マーベラ)


あ、そうだ。伝え忘れてた。


「頭を射ると即座に魔石になっちゃうからね。頭以外を狙って!」


そうなのだ。魔法薬を仕込んだ矢で仕留めても頭に当たると魔石になってしまうのだ。




「アンフィ様。ご存知でしたか?」(クロム、ひそひそ)

「いいえ。新たな知見ですね」(アンフィ、ひそひそ)




皆、それぞれが試行錯誤しながらやっている。


「当たりませんーー」


子供達は狩れていない。特に一番幼いマーは矢を(つが)えるのが間に合っていない。


「いいかい。予め準備しておくんだ。木片を放ってから5秒ある。その間に矢を絞る所までやっておこう。

それが出来たら後は矢を放つだけなんだから」


「「「はいっ!」」」


子供達は素直でよろしい。




「当たりませんわ!」


「マリア。君は近すぎるのだ。

木片の周囲に近づきすぎ、というか撒く場所をもっと遠くにするのだ」


「近い方が的が大きくなりませんか?」


「それは得物が槍や剣の場合だ。弓の場合は相手が動くとそれを追うだろう?

近くの時より遠間の方が弓を動かさずにすむのだ。

やってみると分かるだろう」


ルドフランはある程度の距離に木片を放る。マリアージュの矢が放たれて、仕留めた。


「本当ですね。さすがルド様です!

もっと教えてくださいませ!」


ルドフランはマリアージュの面倒をみていて微笑ましい。





「弓は苦手だなあ。よーしっ!」


マーベラは弓を放り出して、走った。そして、シュバッと跳躍すると空中のウサギをむんずと掴んで着地する。


見事だ。見事なんだけれど、弓の練習も兼ねていたんだけれどな。これでは、練習にはならないじゃないか。

まあ、それぞれの狩り方でもいいか。


子供達をみるとマーベラを見て目が輝いている。


「君たちには無理だからね! マーベラをお手本にしないように」


ちょっと牽制しておく。

ふふふ、やはり弓を放り出したイーナが慌てて拾い直している。「子供達の目の届かない所なら好きにしていいよ」と耳打ちしておいた。



テッテラさんはどうかな?

おっ。さほど時間も経っていないのに3羽仕留めたようだ。槍の名手だと聞いたことがあるけれど、弓の扱いも上手いんだな。


「儂くらいになると何でもこなせるものよ。ははははっ」


うん。中々のものです、ハイ。



「おじい様は昨日一日、森で練習していたんですよ」(マリア 、こっそり)


……聞かなかったことにしてあげよう。




アンフィとクロムは競い合いつつ、それなりに狩っているし、サリナは飛びながら仕留めている。

各々で効率的な狩り方を試行錯誤しているようだ。


一番見事なのはガディアナだ。元々、カシェの泉を弓を使って守護していたのだから、お手のものだ。時に2本の矢を一度に放って2羽を同時に仕留めている。


凄い!だけれど真似できる気がしない。


ユリーネ、イードさんがコツを聞いている。二人とも下手くそではない。向上心があるね。



4時間ほどしてはらはらと雪がふりはじめたので狩りを止めることにする。


それぞれの成果を聞いていると、以外にもファーファの数が多い。チョコレッタとファーファが同数の12羽も狩っていた。


「ファーファ、初めてにしては凄いじゃない。僕は1、2羽だろうと思ってたよ」


「インチキよ! 投網使うんだもの」(チョコレッタ)

「鍋のためです!」(ファーファ)


そういう事か。飛び出すタイミングで投網を投げたのか。それにしても何処から飛び出すのか分からないのに頑張ったと思うよ。



やっぱり、一番はガディアナの36羽だった。次に多かったのは、どこで狩っていたのか分からなかったけれど姉さんだ。

姉さんとツキシロは少し離れた所で狩っていたらしい。


全員の合計は魔石にしてしまったのが40、ウサギのまんまが187。227羽を狩ったことになる。大猟だ。


「それじゃあ。一番狩ったガディアナに、これをあげるよ」


ヤトノリュウさんの鱗を切り出して作った楕円形のピンバッチだ。それを胸に付けてあげた。


「わあ!ありがとうございます!光栄ですわ!」


ガディアナは喜んでくれた。




「聞いてませんでしたわ。そうであればもっと頑張りましたのに」(サリナ)

「いいなーいいなー。アタシも欲しかった!」(マーベラ)

「くっ! 今回は譲りましょう。次は私が……」(アンフィ)



「しかし、この辺りのウサギの個体密度が高いのよねぇ。ユリアス、何かしたでしょ!?」(エリナ)


僕しかしらない手を使ったからね。


「たまたまじゃないかなあ」


「「「………」」」


視線が突き刺さる。


「なになに? 顔に何か付いてる?」


皆に詰問された。

こうなったら誤魔化せない。僕は話すことにした。


実は魔石を置いて置くと、次の日には10倍ほどのウサギが出てくるんだ。

何回か試してみたから間違いない。

昨日、この雪原に魔石をばらまいておいたの。だから、今日は沢山のウサギが狩れたんだ。


「ちょっと待ちなさい。アンフィ。知っていた?」(エリナ)

「いいえ。驚きですわ。魔石で増える?」

「いいこと。ここにいる者はこのことは口外禁止です」


後で種明かしするつもりだったんだけれど、そんなに重要なことなの?


「ひょっとしたら、大変な発見かもしれないわ。アンフィ、検証してちょうだい」

「分かったわ」



うん。アンフィ、お願いね。良く分かんないけれど。

僕だけの秘密がなくなったのは、なんか寂しいんだけれどね。



こうして、ウサギ狩りの一日目を終えた。


捕ったウサギは100羽はみんなで分けて、残りの87羽を市場に流した。







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