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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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バンブータイガー(2)

控えの部屋の扉を開けて目に飛び込んできたのは……。


「な!? どうなっているのですか!?」


バンブータイガーの頭を踏みつけているマーベラ様。もう1頭もアンフィ様に踏みつけられている。

その踏まれたバンブータイガー達を交互に蹴飛ばしているのはサリナ様だ。


(かたわ)らでユリアス様がオロオロしている。


「もう、止めなさい!」


エリナ様が強く言う。

そして踏まれたまんまのバンブータイガー達に問う。


「逆らわないわね!?」


「はい。敵意はございません」


サリナ様の攻撃は止んだ。しかし、マーベラ様とアンフィ様は頭を踏みつけたままだ。


事の次第を伺うと、ユリアス様を使用人と勘違いして横柄な態度をとったらしい。

奥様方、重臣の方々はユリアス様のこととなると厳しい。

この地に関わるならば、第一に頭と心に叩き込まねばならぬことだ。


エリナ様の冷めた取り無しと、ユリアス様の「ところで誰なの?」という言葉で、事情を話すことが出来た。


その間もバンブータイガーは頭を踏まれたままだ。


「ふうん。そういうことね。

マーベラが扱えるなら好きにしていいんじゃない?」(エリナ)


結果、バンブータイガーは私達スネークタイガーの配下となった。

そして、今まで通りにメディシナルの竹林に棲み、竹と採取しに行く村民達を護らせることにする。


「彼女達はマーベラのところの所属ってことでいいんだね?」


「いいよ。序列はリグネーヌ、ニノトーラ。その指示に従う形でバンブー達だね」


彼女達はメスがマローラ、オスがグランと名付けられた。ユリアス様が読まれている物語の登場人物が由来という。


「竹林を守ってくれるんだよね。必要な物とか希望があったら言ってね」


二人を見ると、互いに視線を送りあっている。何かありそうだ。

こてんぱんにやられたのだから、言いたいことも言えないのかもしれない。


ここに連れてきた責任もあるし、配下となるのだから助け舟を出してあげよう。


「何かあるのならば、後で皆様のお手を煩わせるよりは早めに言った方が良いわよ」


「そ、それでしたら……。あのう、あの竹林の中に巣を作っても良いでしょうか?」


「今まで棲んでいたのでしょう?」


「はい。あそこには7年程居りますが特に巣は作っておりません。竹林の中をあちらこちらと動いておりましたので」


食料(餌)の関係で動き回っていたという。私もアルセイデスの森では似たようなものだったので理解できる。

本当は一箇所で暮らせれば良いことなのだ。


「それならば屋敷を造らせましょう」(アンフィ)


「そうね。屋敷があれば竹採取に行く者が貴女達を探し回らずに話が早いわね」(エリナ)


バンブータイガー達が喜んでいる。屋敷で村人などヒューマンを迎える時には人の姿でいさせることにした。

本人達も人の姿に不便や不都合はなく、すんなりと受け入れた。


私達の配下となったこと、竹林の守護という役割を与えられた、ということで人で言うところの報酬が必要となる。いわゆる貨幣でも良いし、物品でも良いのだが、食料がいいらしい。


そこからの難しい話は私には分からないので、皆様にお任せするしかない。




メディシナル西部の竹林。数箇所にパドレオン伯爵の旗印を掲げパドレオン・マーベラの管轄地となった。管理人はバンブータイガーの夫妻だ。

それに二人の補佐をする者も幾人か見繕うことになるが、サリナ様に従うアントラーの群れの1つが森にあるので、そこから派遣される。その者達も屋敷に住まう。

いずれ、バンブータイガー達が必要な人材を揃えるまでの繋ぎとしてだ。



こうして、私達は初めて単独で与えられた仕事を終えた。


「リグネーヌ様。とても、失礼なことを聞くがユリアス様はお強いのか?」


マローラがこっそりと尋ねてくる。


「貴女は傷を一つも負うことなくストライプベアを倒せる?」


「ベアの中でも上位のストライプベア?

……難しいですね。こちらが数頭いても中々倒せないでしょう」


「そうよね。それをできるのがユリアス様よ」


「えっ!? 」


「そういうこと。私達が束になっても敵わない方だと覚えておきなさい。

普段が大人しく柔和な方だけれども忘れてはいけないことよ」


「わ、分かりました」


今は実感がないかもしれないけれど、関わったからには、そのうちにユリアス様の偉大さが分かるでしょう。


「あのような御容姿なので、知らぬ者から軽く見られることも多いのよ。それを許さない方々が多いのは貴女達も身をもって知ったはずよね」


マローラとグランは先程まで踏まれていたこめかみ辺りを押さえて頷く。


「貴女達に竹林を任せるけれどね。サリナ妃の配下の方をお借りすることになったでしょう!? 早めに貴女達も人材を集めなさい。当てはある?」


それにはグランがあると言う。

ズンバラの北部のこじんまりとした森にいる『スモールタイガー』の群れが、グランの眷族とのこと。


「少し時間が掛かりますが、彼らを呼び寄せます」


どういう者達か分からないが、人材確保も何とか目処がつきそうね。


私は安堵するのだった。

メディシナルの森西部の竹林の所属は

【パトレオン伯爵家内マーベラ妃領】となり【メディシナル竹林】と名付けられた。

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