Lesson1 魔法と魔術
魔法と魔術の違いを教えて欲しい……?いや別にいいですけど知ってどうするんすか。知的好奇心?はぁ……。
で、両者の違いですか。そうですね、簡単にいうと手段です。魔法も魔術もどちらも「魔力に接続して実行する」ことを指しますが、手段が全く違います。魔術は触媒を必要としますが、魔法はそれが要りません。井戸に例えるとわかりやすいと思います。
貴方は水が飲みたいとします。目の前には井戸があります。どうやって水を汲みますか?
滑車と桶を使う?実際に降りて潜る?長い管を突っ込んで吸い上げる?誰かに取ってもらう?
魔術はこれらの「自分の体以外を使って」水を得る手段を指します。自分の体だけでは叶えられないから他の力を利用する。妖精魔術の場合、宝石が滑車と桶なわけです。
一方魔法は「水が欲しい」と思うだけで目の前に器に入った状態で水が現れます。井戸に対し何か行動する必要すらありません。
この違いって本当に大きくて、僕らが必死に術式を練り上げてる間に魔法は段違い上の状態で完結してしまうしお釣りが来ます。最初の魔術が編み出されて千年近く歴史は立っていますが、いまだに魔法の域には追いついていません。
ちなみに、なぜ魔法に魔術が追いついていないことがわかるかというとすぐそばにいるからですよ、魔法を使う存在が。そう、オルヴェンの魔女です。彼女は本当に強い魔法使いで、僕らがどんなに魔術の速度を上げようが彼女には追いつきません。長い歴史でル・ティーヴァは何度も彼女に挑戦しそのたびに敗れ……いえ、この話はまたいずれ。
まぁ前提である魔力に接続がまた魔術師にとって厄介なんですけどね……。
どういうことかって?あー……魔力って湧き出る場所が決まっててそこらじゅうに無尽蔵に浮いてるわけじゃないんですよ。僕らはそれを竜脈と呼んでいますが、それは地中深くに流れています。水脈と一緒になっていることが多いですね。
魔術は一度竜脈に接続してからやりたいことを実行します。井戸に例えると必ず縁に触るみたいなイメージです。なので方法や場所にも制限が出てきます。
魔法は接続する必要がありません。よって制限もありません。縁に触る必要もなんなら井戸である必要もないんです。ほんと恐ろしいですよね……。まぁ場所に依らない発明は僕らもしてはいるんですけど……。
ちなみに竜脈はル・ティーヴァであればそこらじゅうに流れているんですが、オルヴェンには太いのが一本流れているだけなんですよね。なのでオルヴェンで魔術を行使するのはル・ティーヴァ内で行使するよりも過程や課題が非常に多くなります。なので基本的にオルヴェンに魔術師はいません。そもそも出来ないんです。
とはいえオルヴェンの竜脈は質も量もいいのでその昔ル・ティーヴァはこの国を侵略しようとしました。当時の騎士と魔女に阻まれてかないませんでしたが。……僕ら魔術師の方が強いと驕るわけではありませんが、魔女の加護を得ていたとしても身一つで魔術に対抗できる騎士団って……怖……。
また脱線しましたね。失礼しました。
まぁ、方法が違うだけで本質的には同じものです。ただ魔法の方が圧倒的に幅が広くて早くって、魔術は後追い技術ってだけで。
まぁ、いつか追い越してやりますよ。なんてったって僕は天才魔術師ですからね。




