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おさだとの生活  作者: とみなが けい
11/11

おさだとの生活 14

※注意!

 このお話はフィクションです。

 登場する人物団体と実在の人物団体はあまり関係はありません。

 ただし、このお話に登場するチンパンジョーの戯言は実在する人物の言葉そのままに書きました。

 このアホウな戯言をほざく変な奴は現代日本に実在しています。

 …やれやれ(-_-;)



正月も開けたある日。

所用があって外出してマンションに帰って来るとおさだがダイニングに座って頭を抱えていた。


「ただいま~、おさだ、どうしたの?」


おさだがインターフォンを指差した。

どうやら俺が外出している間に来客があったようだ。

因みに俺の部屋のインターフォンは呼び出しボタンが押されると来客者の画像と音声が保存される。

オートロックでは無い俺のマンションでは必需品だ。

セキュリティは大事だからね。


俺は録画されたものを再生して苦い顔になった。


「なんだ?チンパンジョーが来たのか…去年の11月に縁を切った筈なんだがな…。」


チンパンジョー。

本名は『篠〇 譲』と言うのだが俺とおさだの間では74にもなって甘ったれた爺で昔、高校教師をしていたにもかかわらず、年金で食べて行けずに生活保護も申請して何故かそれが受理されて年金の他に毎月数万円の保護費を貰っている男をチンパンジョーと呼んでいるのだ。

馴染みの飲み屋でたまたま相席になり、そのソフトで上品な見た目に騙された俺だった。

三度ほど俺の家に遊びに来たが、話を聞いているうちに嫌気がさして、そして去年の11月に車の車検費用が出せないのでお金を貸して欲しいと言われて断り、付き合いも絶った男だ。


何故ならば、最初に俺の家に来た時、グダグダと長い自慢話を始めて、そしてやたらに生活が苦しいと言ってから今までに自分の人生を語り始め、それを聞いた俺は虫唾が走り、いわゆる『親の顔が見たい』と思った男だった。

本当は初めに来たその時にもう家に来ないでくれと言いたくなったが、俺は優しい男なので食べ物くらいなら上げても良いなと思ったのが運の尽きだった。


生活が厳しく食べるものが無いと言うので仕方なく店屋物を頼んで夕食を食べさせるとそれに味を占めたのかその後も俺の家に来ては何か食べ物をせびられた。

一度離婚してその後再婚、3年前に奥さんが亡くなり、一人暮らしをしているとの事だった。


それ以来俺とおさだの間でチンパンジョーと呼んでいる。

おさだが特に奴を嫌っていた。

まぁ、俺も大嫌いになったけど。

俺は人を見る目がまだまだ甘いなと反省したものだった。


二度目に来た時になぜそんなに生活が苦しいのか尋ねたら、どうも自炊とかを見下しているようで、家には包丁もまな板も無いと言った。

おまけにガスも止められているので、チンパンジョーの家には電子レンジがあるだけだと言う。


俺はそれでは生活が苦しくなるのは当たり前だから一〇〇円ショップで包丁とまな板でも買って自炊したらどうかと言った。

そして、俺はキャンプに行く時のカセットコンロと予備のボンベ5本、そしてジャガイモと人参とタマネギを台所から出して渡そうとした。


「いや、私は自炊とかしない主義なので『そんなもの』を貰っても使いませんから。」


一瞬絶句した俺。

…ああ、こいつの親の顔が見たい。

気を取り直して俺は奴に話しかけた。


「それでも、外で出来合いのものを毎食買って食べるなら絶対に生活が苦しくなるのは当たり前だと思いますけど。

 今からでも遅くないので自炊を始めたらどうですか?」

「そんな事を勧められると私は精神的に穏やかにいられなくなりますので、それ以上言わないでください。

 たかが何百円を節約するのに、自炊なんかする気は無いです。

 私には私の生活のスタイルがあるんですから。」


又絶句した俺。

…ああ本当にこいつの親の顔が見てみたい。

こいつは剣道7段で高校の体育教師だったのだが…そして教師の頃は学校でも不良どもに一目置かれて他の教師たちからも頼りにされていたとこの前、俺の家に来た時に言っていたのだ。

俺はこんな奴に教えられる生徒が本当に可哀想に思った。

その時、テレビからおさだが出て来た。

奴はどうも『見える』奴らしく、おさだを見て悲鳴を上げた。


「うわぁああああ!

 なんかテレビからぁ!」


チンパンジョーに気が付いたおさだが直ぐにテレビに引っ込んだ。


俺はとぼけた声を出した。


「どうしました?

 私には何も見えませんでしたけど?」

「あ、いや…どうもなにかと見間違えたようです。」


チンパンジョーは気のせいと思ったらしく俺は胸を撫で下ろした。


奴が帰った後でおさだはテレビからその後の話も聞いていたらしく、チンパンジョーがほざいた言葉にイライラして頭を掻きむしった。

そして身振り手振りで奴を呪い殺しに行くと俺に伝えた。


「よせよせ、おさだ。

 あんなつまらない奴を呪い殺してもおまえの評判が落ちるだけだぞ。」


おさだはまだむしゃくしゃしているようだった。

俺も気分が悪かった。


そして、チンパンジョーが3度目に俺の家に来た時、奴は所有している自動車の車検費用が出せないので必ず返すからお金を貸してくれと言いやがった。


はっきり言う。

こういうメンタルの奴にお金を貸しても戻って来ない。

大体俺の助言も甘ったれた言葉で反論したし、それに、こいつに食べ物を上げても一言もありがとうを言わなかったのだ。

こういう奴は借金を平気で踏み倒すタイプだ。

そしてお金を貸して助けた事にひとかけらも感謝しないタイプなのだ。

日頃、ありがとうと言わない奴には絶対にお金を貸してはいけない。

俺は全然貸す気がしなかったので丁重にお断りをして、以後お付き合いをやめると宣言したのだ。


その後、チンパンジョーは家に来なくなった。

ホッとした俺は初めてチンパンジョ―と会った飲み屋に正月に飲みに行った。

奴がいるのではないかと少しびくびくしたが、どうやら奴はあちこちで金銭トラブル、たかり行為をしていたので出入り禁止にしたとママに言われてホッとしたものだった。


そうしたら今日いきなり来た。

何度も俺の名前を呼び、チャイムを何度も廻し、ドアをがんがんと叩いて、あまつさえ、ドアノブを何度もガチャガチャと廻して数分間居た末に去っていった。

凄く薄気味悪かった。

万が一、ドアの鍵を掛けずに出かけていたらどうなったかと、ぞっとした。

翌日、俺は凄く凄く凄く気が進まないが奴に電話をかけてもう家に来ないはずだったと確認した。

案の定、奴は何か変な事をほざいた後でお金の無心をしてきた。


「あなた、昨日車で来たでしょ?

 車検費用も片がついたんじゃないですか?

 何故今、お金に困っているんですか?」

「まぁ、そう言わずに、とみきさん、いくらでも利息を払います。

 十日に一割でも利息を払いますからお金を貸してください。」


あ~お金に困って前後の見極めも無くなっている奴のセリフだ。


「あなた、自炊でも始めて節約しましたか?

 大体去年の12月に年金が2か月分入ったんじゃないですか?

 それに生活保護で毎月数万円振り込まれるんでしょ?

 それに去年、奥さんの命日が、3周忌が済んだら心を入れ替えて、少なくとも今年から自立した生活するとか言っていましたよね?

 全然節約も何もしていないじゃ無いじゃですか?」

「いや、とみきさん、あなたは私が元教師なのを知らないからそう言うんですよ。

 私の様に何十年も教師をしている者には年の始めは4月からなんですよ。

 私が来年から生活を見直すと言うのは今年の4月からという意味なんですよ。

 教師をしている人は全員来年初めと言えば来年の4月からなんですよ!」


若干切れ気味にチンパンジョーが言った。

俺は頭が白くなった。

…本当のこいつの親の顔が見たい。

こいつは74歳で元高校教師で剣道5段(最初に来た時は7段だと言っていたが)


「あのね、篠〇さん、私なんかよりあなたの兄弟や、ああ、離婚した奥さんや子供に先に頼むべきじゃないですか?

 あなた、離婚した時に円満離婚で住んでいた家も奥さんや子供にあげて、そして、奥さんと子供2人と、飼っていた犬にまで100万円ずつ上げて家を出たんでしょう?」


そう、チンパンジョーは最初の離婚をした時の事をそう自慢げに言っていたのだ。


「それがね、去年の暮れに行きましたよ。

 離婚して15年振りにね!

 そしたら妻は出て来なくて代わりに二人の息子が出てきて家に入れてもくれずに玄関先で『この家に父親とかはいませんから!』と言われたんですよ!」

「…じゃあ、あなたのお兄さんが隣の蕨市に住んでいるんでしょ?」

「私の兄も去年に一切の縁を切ると言われました!

 もうね!手元に数十円しか無いんですよ!」

「それじゃ、そんなに生活が苦しいなら、生活保護の所に行って窮状を訴えたら良いじゃないんですか?」


俺がそう言うとチンパンジョーはますます切れた。


「市役所の保護課にもゆきましたよ!

 そしたらあいつら、アルファなんとかとか言う変なコメを上げる位ならとか言うんですよ!

 難民や子供じゃないんだから!

 そんな変なもので食べて行けるはず無いじゃないですか!」

「確か亡くなった奥さんが幸吹けの科学とかに入っていて、あなたも懇意にしていたとか…幸吹けの科学にでも行って窮状を訴えたらいかが?」

「もうね!幸吹けの科学でも誰かが言ったんだろうけど、私に一切お金を貸してはいけないと通達が出ているんですよ!」

「それじゃ、尚更、車を手放せば良いんじゃないですか?

 毎月12000円も駐車場代払っているんでしょ?

 この辺りは田舎と違ってバスも電車も近くを走っているんだから…。」

「ああああ!それは言わないでくださいと言ったじゃないですか! 

 車が無いと私は精神的におかしくなるんですよ!」


なにこの偉そうな豆腐メンタル…。

なるほど、どこからも相手にされていないんだな…まぁ、凄く判るけど…その原因が判らないのは唯一このチンパンジョーだけなんだろうな…。

俺は一息吸ってから話した。


「失礼ですけど、そんな事になった原因判りますか?」

「知りませんよそんな事!

 周り中が私を苛めているんですよ!

 意地が悪い奴らばかりなんだから!」

「申し訳ないけど、俺は『一円でも』あなたにお貸しする気がありません。

 あなた、自業自得という言葉知っていますか?

 少し自分を見つめ直すべきだと思いますよ。

 もう二度と俺の家に来ないでください。

 電話もメールもお断りです。」


電話の向こうでチンパンジョーが、俺を見捨てる気かぁあああああ!と喚き叫ぶ声が聞こえてブチっと電話が切れた。


やれやれ、困ったものだ。

その晩、俺は久しぶりに今日、おさだがヘルプで入っているあの、すっかり更生した巨大淡谷のり子もどきハサミでおちんちん縦に先っちょから根本まで切り裂き魔のママがやっている霊界の飲み屋『霊界カラオケ居酒屋淡谷』に飲みに行った。


店内はそこそこ混んでいておさだが忙しく立ち働き、俺はカウンターでチンパンジョーの愚痴をすっかり更生した巨大淡谷のり子もどきハサミでおちんちん縦に先っちょから根本まで切り裂き魔のママに話していた。


すっかり更生した巨大淡谷のり子もどきハサミでおちんちん縦に先っちょから根本まで切り裂き魔のママが見事なハサミ捌きで霊界サバをさばきながら苦笑いを浮かべた。


「なによ~そんな変な奴がいるんだ~!

 おお、いやだいやだ、とみきさん災難だったわね~!」

「本当だよすっかり更生した巨大淡谷のり子もどきハサミでおちんちん縦に先っちょから根本まで切り裂き魔のママ。

 奴のちんぽこをハサミで縦に先っちょから根本まで切り裂いて欲しいぐらいだよ~!」「ほほほ、私はすっかり更生したしね~!

 それに74歳の爺なんでしょ?

 私はフレッシュなおちんちんしか興味無いからね~!」

「ああ、そうか~残念だよ~!」


その時、同じカウンターで並んでいた、この前おさだを送って来てくれた四郎とリリーが声を掛けて来た。


「うむ、とみきさん、横で話を聞いていたが少し気になる事を感じたぞ。」


と四郎。


「そうよね~そのチンパンジョー?奴はしっかり去年の車検を通したのかしら?」


とリリー。


そうか成る程、どうも話を聞いた限りでは奴は車検切の車を乗り回しているかも知れない。


「そうですね、四郎さん、リリーさん、奴はひょっとして車検が切れたままの車を今も乗り回しているかも知れないですね。」

「あら~とみきさん、いや、とみき、水臭いからお互いに呼び捨てにしましょうよ。

 でも、確かにその、チンパンジョー?が今も車検切の車に乗っていたとしたら、凄く危ないじゃないの。

 もしも誰かを怪我させたり死なせたりしても自賠責も加入していない状態よ。」

「う~ん、リリーさん、あ、リリー確かにそれは非常に危険な状態ですね。

 確かめた方が良いかも…。」


俺は一度だけチンパンジョーが運転するピンクの!軽自動車に乗った事がある。

奴はハンドルを握ると人格がすこぶる変わるような奴で、前を走る車や歩行者に文句を付けながらいささか乱暴で不注意な運転をしていた。

もしも奴が車検も自賠責さえも無い状態の車を運転するのは危険極まりない。


「でも、もうあのチンパンジョーに近づきたくないのが本当の所なんですよね~。」


俺がため息をつくと四郎とリリーがニヤリとして顔を見合わせた。

 

四郎が言った。


「とみき、われとリリーで何とかしてやろうか?

 この世界でアナザー討伐も無くて暇なんでな。」

「え、そうしてくれると助かりますが、あのチンパンジョーはどうやら見える奴らしいし、お礼もどうすれば良いか…。」


リリーが笑顔で言った。


「あら、私と四郎は気配を消せるから大丈夫。

 お礼はここでボトル一本で手を打つわよ~!」

「あ、それじゃあ、お願いしても良いですか?

 何でも好きなボトルを…あまり高くない奴で。」


「よし!それで手を打とう!」


四郎とリリーは俺に握手して何のボトルを入れるか相談し始めた。

結局、『暴れ牛鬼』か『怨念女郎』のどちらの焼酎にするか悩んだ末に『怨念女郎』のボトルに決めたらしい。


俺は四郎とリリーの為にボトルを入れて店が終わるまで楽しく飲んで、飲み過ぎてペシャンコになったおさだを肩に担いで部屋に戻った。


四郎とリリーの仕事は早かった。

翌日の午後に四郎とリリーがテレビから出て来た。


「とみき、やはり奴は車検切の車に乗っていたぞ。」

「そうよ、チンパンジョーはプッ、ピンクの軽自動車なんか乗っているのね~!」

「それで、どうしましょうか?

 車検切だとヤバいですよね?」


俺が尋ねると四郎とリリーがおかしくてたまらないというふうに笑った。


「しっかり処理して置いたわよ!

 あのチンパンジョーが交番の前を通る時に私がハンドルを捻ってやってね!

 奴は旨い事交番の真ん前で縁石に乗り上げたわ!」

「もちろんわれとリリーで周りの安全を確かめたからな。

 交番から警官が出て来たらあのチンパンジョーの野郎が慌てて逃げようとアクセルを踏んだのだが、われは思い切りブレーキを踏んでいたので奴は逃げられなかったぞ。

 そして、警官達に奴が車検切の車に乗っている事が判ってな、奴は必死に『違うんです!これは違うんです!』と叫んでいてな、まぁ、面白い見ものだったな。」


そう言って四郎とリリーが笑った。

俺は奴の下手くそな運転の軽自動車に乗っていた時に交番の前を通った時にあのチンパンジョーが言っていた戯言を思い出した。

チンパンジョーはこう言っていた。


「私の父親は警察の偉い人だったんですよ。

 だから交番の前を通る時は巡査達がしっかり仕事をしているかチェックする癖があるんですわ、うはは!」


成る程、巡査達はしっかり仕事をして、面を拝みたいと思っていたあのチンパンジョーの警察のお偉い父親は不出来な息子を見ながら天国か地獄で血の涙を流しているだろうな。


続く



※念の為もう一度注意!

 このお話はフィクションです。

 登場する人物団体と実在の人物団体はあまり関係はありません。

 ただし、このお話に登場するチンパンジョーの戯言は実在する人物の言葉そのままに書きました。

 このアホウな戯言をほざく変な奴は現代日本に実在しています。

 …やれやれ(-_-;)





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