届かない彼女
彼女の歓喜
彼女のほほえみ
それはずっと彼女だけのもの
決して僕は手を伸ばさない
過去に彼女のほほえみを手にしたい、と望んだこともあった
だが手を伸ばさなかった
彼女も僕に心を本当に許すことがあっただろうか
彼女はあくまで仕事上で向き合う知り合いだった
再会したのは、銀座
またしても、彼女は僕に向き合う人だった
だから、余命が尽きることを知っても
微笑みのみを僕によこす
再会して間もなく僕は連れ合いと死別
再び彼女を見つめてもよいのだろうか
余命短い彼女に手を伸ばしていいのだろうか
余命短い彼女の心を乱していいのだろうか
思慮が必要なことなのだが
僕の思慮は膨大な時間を要している。
既に、古希を過ぎようとしているのに
僕は思慮を完了できずにいる。