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カロリー・オフ



「まずは今回の作戦、本当にお疲れさまだ。我々不死狩りはその本分に則り、実に十名近い不死のプレイヤーを倒した。間違いのない大勝利となる」



 普段とは違い、その表情には笑みの欠片もない。



「我々は対策を練り、圧倒的有利な状態で挑んだ戦いだったのにも関わらず、三名もの犠牲者が出てしまった。攻城戦は守る側が三倍有利だとしても、これは私の甘さが招いた結果だ」



 長い袖口をまくり、手がしっかりと見えるようにしてから沈痛な面持ちでそう語る。



「特に、シスタージャンヌは不死に対して並々ならぬ因縁があった。幸君に指示を出しての最後の一撃も彼女の指示だ。彼女にこそ生き残って、栄誉に浴して欲しかった」



 本心かはわからない。

 ただ、ひとつの区切りとして、あるいは確認として重要ではある。

 不死狩りの旗頭の一つ、ジャンヌは間違いなく脱落したのだと。



「私の想いは変わらない。我々の中から優勝者が出ることが最も望ましい。プレイヤーが何名生き残っているかは不明だが、少なく見積もってもそろそろ半分かそこらだろう」



 わかっている範囲では、大樹の根で倒されたプレイヤーや不死の数、今回の戦闘での脱落者数、そしてクック班とクロックマスター班。

 合わせれば25名ほどになる。

 最初のロボや怪獣を含め、関わっていない戦闘での死者も換算すると、戦いが折り返しに来ていることは容易に予想ができた。



「クロックマスター班、クック班が壊滅。軍曹班とはまだ連絡が取れない。我々の残り人数は、この場にいるだけで14名。軍曹班が無傷ならば18名であり、依然として最大勢力なのは間違いないだろう! 今後も密な協力を前提に、他に不死能力者やそれに準ずるプレイヤーが居ないかを探り、生存戦略を立てていこう!」



 この場で倒した十数名で、不死能力者が根絶されたかはわからない。

 無効化能力者も、他に存在するか不明だ。

 


(もしかしたら……同盟外のプレイヤーが全滅するまで同盟の解消は起こらないかもしれないな。だとしたら猶更、イデオがバレるわけにはいかないか)


「さて、次の話だ。瓦礫の下の不死をこれから順々に処分していくわけだが、その前に共有しておくべき事実があるので聞いて欲しい! とても大事なことだ!」



 少し前の重苦しい態度から一転、無い胸を張って笑顔が形作られた。

 重大発表ともあって、室内にざわめきが生まれていく。



「うむ、よろしい! では早速本題だ。クック君、いいかね!」


「……僕かい?」



 いきなり声をかけられ、クックは首を傾げた。

 話は通っていないらしい。



「そうだとも。ちょいとリンゴでもミカンでもいい、果物を一つ作ってくれたまえ!」


「そりゃあお安いご用だけれども」



 立ち上がったクックは、廃ビルの隅に落ちていたガラス片を拾い上げる。

 それは瞬く間に色づいたミカンへと姿を変え、教授に手渡された。



「協力ありがとう! さて、小町班の救援および活躍によって、敵は完全に沈黙。見張りをしてくれている野薔薇くんとも逐一連絡を取っているが、瓦礫から這い出す不死は今のところ皆無だ」



 慮外の一撃に、モール内に残っていたプレイヤーは全員が生き埋めになっているはずだ。

 おそらく、不死を束ねていた黒い女もすでに脱落しているだろう。



「さて。囮チームは戦闘中にある事実に気づいた。諸君らの中に、腹ぺこで居ても立ってもいられないという者は何人いるかね?」



 室内はざわつきが堰を切ったように増加していく。

 質問の意図が掴みきれないからだろう。



「たとえば私なんかはもう、お腹ぺこぺこだよ諸君! はっはっはっは!」


「……恥ずかしながら、私もです」



 まず手を挙げたのはノウンだ。

 それに続くように、ドレッドも手を挙げる。



「俺もだなァ。野薔薇の奴もそう言ってたぞ」


「……私もだ」


「僕も、だね」


「あ、アタシも!」



 ジャンヌ班から挙手したのはサトリとセナの二名。

 そして番外となるが幸も続く。

 小町班からは誰の声もあがらなかった。



「よろしい! さて、諸君等は思ったことだろう。お腹が減ったからなんだよと! 食い意地張ってるだけ、あるいは戦闘でカロリーを消費しただけではないのかと! その通りではあるのだが、問題はそのカロリーについてだ!」



 おもむろにミカンを剥くと、教授は遠慮なく口に放り込む。

 咀嚼音こそしないが、飲み込むまでに数秒の沈黙が支配した。



「……うん、旨い!」


「おいちんちくりん、さっさと進めろよなァ」


「あっはっはっは! もちろんだとも。結論から言おう。我々のイデオは、カロリーを消費して発動している!」



 その場のプレイヤーはそろって首を傾げる。

 反応は芳しくない者が多かった。


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現在、第5章を執筆中。 投稿日は毎週4日で日曜、火曜、木曜、土曜になります。

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