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密談は雑踏に溶けて



「セナの中で、どうするかは決まってるの?」


「ある程度は決まっている。幸にも手伝って欲しい」


「……アタシは何をすればいい?」



 こういうとき、幸は話が早い。

 認識の統一さえすれば、あとは全て従ってくれる。



「僕はこれから、隙を見てサトリを殺す」


「うん」


「殺した後のことはこっちで考えてある。問題は、なるだけ目撃者がいないタイミングを作らなきゃならないってことだ。あとは、サトリの読心を封じないといけない」


「……感づかれると、仲間に伝えられちゃうから?」


「正解。だから、これからサトリを僕のイデオで洗脳する」


「うんうん」


「ただ、問題が一つ。サトリは僕に洗脳されることをずっと警戒してた。なにも対策がないとは思えないんだよね」



 今までセナがサトリに手も足も出なかったのは、ジャンヌの洗脳を解除するわけにはいかなかったからに他ならない。

 最初から始末する前提ならば、ものの十分もあれば死体処理まで含めて片がつくだろう。

 ジャンヌ死亡の一報を聞いた後から、サトリ一派は間違いなく注意を払っているはずだ。


 相手方が警戒すべきはサトリ本人への洗脳だけではない。

 野薔薇を洗脳して突然空中に投げ出させるとか、大鼠を洗脳してチームジャンヌを四面楚歌にするとか、本当ならばやり方は色々ある。

 残念ながら、そこは読心で看破されてしまうのだが。



「例えば、この不死狩りメンバーの中にサトリの仲間が居て、ジャンヌ死亡後からずっと洗脳を警戒している。なんて状況ならば、イデオの使用がすぐにバレてもおかしくはない」


「……考え過ぎ、じゃない? そんなにすぐバレちゃうかなぁ」


「バレると考えておいたほうが良いんだ。常に最悪を想定して動かなきゃ、逆に僕がやられる。サトリは僕の手札を覗きながら戦えるんだから、隙を見せたらそこを突かれるよ」



 つくづく、心を読める相手とは面倒くさいものだ。



「流石に不死能力者は放っておけないから、この戦後処理が終わるまでは動けない。けど、一段落したら間違いなく、今後の不死狩りはどうするかってミーティングが開かれるはずだ」


「うん」


「ジャンヌが死んだことで班長が入れ替わる。僕か、サトリか、大鼠か。きっと幸もジャンヌ班に加えられる。注目が僕たちに注がれる、そのタイミングで一騒動起こしてほしいんだ」


「一騒動って?」


「現実的なのは放火による小火騒ぎを起こすとかかな。敵襲だと思わせられれば一番いい。なんなら火炎瓶を一個渡すし、時限式にできるような仕掛けも教えるよ」


「ならセナがやればよくない?」


「言ったろ? こうしている今も、僕は警戒されているかもしれない。メモを渡して幸にやってもらうほうがバレにくくなるんだよ」


「……理屈はわかるよ。でもそれだって、アタシが犯人って読心でバレるよね?」


「表向き、サトリのイデオは圧縮ってことになってる。心を読んで得た情報を、ミーティング中に言い出せるわけがない。とにかく場が混乱して一斉に動き出したどさくさが勝負だ」



 要は、サトリが洗脳されたことが仲間にバレなければいい。

 敵襲を装って注意を引き、その瞬間を狙う。

 ジャンヌを手駒にした時に近い状況を意図して作り出すわけだ。


 サトリは、欲しい情報を会話によって引き出そうとする節があるため、作戦まで会話は厳禁。

 なんなら実行までは近付かないのがベストとなる。


 洗脳後は敵襲に備えるフリをして、誰が仲間なのかをメモか何かに残させてから身投げさせる。

 サトリの仲間が不死狩りの外にいるのならば、少し苦しいが敵の離間工作だということにしてしまえばいい。

 逆に中にいるのならば、次はその相手を洗脳だ。



「急ごしらえの作戦だし、穴だって多い。でも、今後のことを考えたら今ここでやるしかない」


「……流れは、理解できたと思うよ。他には注意点とかある?」


「何か、武器のようなものを確保しておいて欲しい。それと、サトリが通信機を使う素振りを見せたらすぐに連絡して」


「わかった」



 小声の密談は誰に聞かれることもなく、室内のざわめきにかき消されていた。

 幸の目が似つかわしくない鋭さを持つ。



「諸君、お待たせしたねぇ!」



 丁度、教授がサトリを伴って階上から降りてきた。

 スーツ男は虫の居所が悪いのか、眉間にシワを寄せている。


 こちらを気にしている様子はないが、油断する訳にはいかない。

 念のためにグルリと室内を見回しこちらを監視している者を探してみたが、みな教授の方を見ていた。



(まあ、確かに戦後処理が終わるまでは動くつもりはないけどさ) 



 教授は全員の注目を集めやすい壁際中央に陣取ると、室内をぐるりと見回してから口を開いた。



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現在、第5章を執筆中。 投稿日は毎週4日で日曜、火曜、木曜、土曜になります。

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