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戦後処理は戦いの始まり



「ふ……フッフッフッフ! オイラァその気になりゃ、小町の姐さんの拳骨ですらご褒美なんだが!?」


「そうかい」


「すでに社会的に抹殺されたオイラに怖いものなんてありゃしないぞ!」


「大鼠、ちょいと来ておくれ」


「大鼠、is、誰?」



 きょとん顔のナッツの前に、呼ばれて現れた大鼠。

 その表情は、彼には珍しく真顔そのものだ。



「呼んだか?」


「このバカに一発、キツいのを頼むよ」


「俺がシメていいんならそうさせてもらうぞ。うちのメンバーのことも悪く言ってたしな」


「悪く言ってない! なーんにも悪く言ってない! ていうかこの流れさっきも見た! ちょっと前にも見たー!」


「いーや、悪く言ってただろ。俺は同族嫌悪しがちだぜ」



 振り上げられた筋肉質の拳が、馬鹿の頭に振り下ろされる。

 本日二度目の拳骨に、よく回る舌もついに黙った。



「……っ! …………っっ!!」


「くはははは! ざまぁないのぉ」



 痛みで悶え声も出ないナッツの姿を大納言が嘲笑していた。

 その末路を見て、ようやくセナはその場に座る。

 大鼠が一瞬だけ視線を向けてきた気がしたが、気付かない振りをしておいた。



「うわぁ、痛そうだねぇ……」


「自業自得でしょ」


「そうかもだけど。あんなの貰ったら身長縮んじゃうよ」



 見当違いの心配をする幸に、セナは視線を向ける。



「あんな馬鹿はどうでもいいんだ。それより幸」


「ん? どしたのセナ?」


「いや、その……えっと」


「?」



 自分から振っておいて、聞き返されたら言い淀んでしまう。

 疑問符がとめどない幸は、自分からはそれ以上尋ねてくれない。



「あー……今回は、お疲れさま?」


「お互いにお疲れさまだね! なんで疑問形なの?」


「あ、いや、うん。そのぅ……ともかく助かった。こんな最北端が戦場になるとは予想してなかったから、間に合わないかと思ったよ」


「そこは、すぐ動いてくれた小町さんに感謝だよねぇ。でも、ここまで先読みして天下一さんを連れてくるように指示してたってことでしょ? やっぱりセナはすごいよ!」


「……」



 一度、室内を見回す。

 まだサトリはこの部屋に戻ってきていない。


 奴が教授に呼び出されて二階に上がってから、かれこれ十分。

 話をするなら今かもしれない。


 セナは、誰にも聞かれない距離であることをもう一度確認してから口を開いた。



「別に、今回の不死狩りの作戦で必要だったから天下一や小町班を呼びに行かせたわけじゃないよ」


「そうなの? だって、あの手紙には索敵のために必要だって。それって北にいた敵を倒すための協力要請、じゃないの?」


「結果的に今回の解決に役立ったってだけで、間に合うかもわからない小町班の到着は勘定に入れてなかったよ。敵が思ったよりずっと強くて厄介だったから、本当に助かったのは間違いないけど」


「……じゃあ、何のために呼んだの?」



 この場で全てを伝えることの是非を考える。

 今後は欠員の補充という形で幸も同行するだろうし、意志は共有しておきたいのが本音だ。

 これまではこちらの動きが気取られていなかったから質問されなかっただけで、一段落したら間違いなくサトリに問いつめられるだろう。

 どうして小町班を救援に呼んだのか、と。

 そして、その言葉から深層心理を読まれてしまう。

 戦後処理のごたごたの間にサトリを処分しなければならないところまで来ているのだ。

 となれば、味方は多い方が良い。



「一言で答えるのは難しいんだ。ただ、天下一はサトリを倒すために欲しい人材だった」


「え、サトリさんを?」


「いい機会だから教えておくよ。あいつ、サトリは……明確に僕の敵だ」



 幸がフロアを見回す。

 最後に二階への階段を見たあたり、サトリの姿を探していたのだろう。



「敵なの?」


「そうだ。あいつのイデオは心を読む力。僕の本当の能力を読みとって、バラされたくなかったら協力しろと脅してきた」


「そんな……。え、ってことは、大樹近くのビルでアタシが初めて会ったときにはもう、脅迫されてたの?」


「そうなんだ。幸に詳しい作戦を話すと、奴は伝えた事実を読みとって対処してくる。だから一人で抜け出した時にメモにして、別れてから読んで貰う必要があったんだ」



 班として行動開始すれば、特別な理由が無い限りは幸とサトリは出会わずに済むとは考えていた。

 指示を読むタイミングさえこちらが指定すれば、サトリに情報が漏れづらくなる。

 もちろん、本当に感づかれていないのかは不明なのだが。



「あいつのイデオは僕と相性が悪すぎる。また班行動になれば、次はいつ読みとられるかわかったもんじゃない」


「……なら、すぐに倒さなきゃ、いけないよね?」


「そう。だけど簡単じゃない。十中八九、サトリには仲間がいる。サトリが死んだことがバレたら、僕の能力の詳細は全て不死狩りに言い触らされるかもしれない。そうなったら終わりだ」



 脳裏によぎるのは、謀殺されたクロックマスター班の面々だ。

 あれと同じことをされかねない。

 『洗脳』はそれだけ危険視されやすい能力だとセナは考えていた。



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現在、第5章を執筆中。 投稿日は毎週4日で日曜、火曜、木曜、土曜になります。

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