表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/148

射程距離∞:side小黒



「3、2、1」


「投擲ー!」



 小黒の姿は、変わらず吹き抜けの三階にあった。

 投擲タイミングをカウントダウンで示し、控えていた側近が号令に変え、階下の戦闘部隊が何度目かの攻撃を行う。



(いい感じに追いつめていますね。映像映えしていればいいのですが)



 プレイヤーキラーにとって、己の勝ち負けは無価値だ。

 役割は波乱を生み、見せ場のある映像を提供することのみ。



(残念なのは、あのように引きこもられると、五感を失い絶望する絶叫が聞けないことですね。特にあのジャージの娘などは良い声で泣くでしょうに)



 もちろん、仕事中に己の嗜好を満たすのは余裕があるときだけ。

 例のターゲットだけでも倒してしまおうと思ったものの、外から回り込ませた手勢は音信不通となり、決定打に欠ける。



(まあ、ともあれ攻撃を続けましょうか)



 小黒はイメージを固める。

 脳内で、階下から己を見上げていた羽虫の顔を想起する。

 あの生意気な白衣の少女のその顔を。


 そして、イデオが発動し──教授の五感は絶たれた。



(申請の仕方一つで、どんな能力でも射程や対象を広げることができる。ここに気づかない愚鈍は、安易に『相手のイデオを無効化する能力』などと限定し、一人しか対象にできない能力にしてしまう)



 運営として九十九の戦いに介入してきた小黒は、この戦いを熟知していた。

 


(今回は射程に特化して、『思い描いた対象の五感を操作する能力』としましたが、もうちょっと盛っても良かったかもしれませんね)



 そう、目視する必要はない。

 どこにいるかを知る必要すらない。


 相手の顔を知ってさえいれば、フィールドの端からでも使用できる五感簒奪能力。

 これがあるからこそ、カメラを介さずの断続的な攻撃を可能としていた。



(相手なんてものは()()()()()()()()()()()()。それが原因で、ほぼ全ての能力には射程距離や、目視が条件に含まれてしまう。それに気付くプレイヤーのなんと少ないこと)



 無論、初見のゲームでそこまで頭を回せる者などごく一握りだ。

 小黒はただ、自分の持ち得る情報の上からプレイヤーを見下し、悦に入っているだけだった。


 そのとき、トランシーバーを通してヒューズからの連絡が入る。



『──報告だ。敵は爆弾を誘導してカメラを破壊しやがった。直前まで、屋外への撤退を続けていたぞ。どうぞ』


「了解しました。追加の爆弾は? どうぞ」


『巡回要員に持たせた。すぐ着くだろうぜ。カメラの不備があったが、俺はそっち行った方がいいか? どうぞ』


「ご心配なく。外に出ようとも私のイデオからは逃れられません。とはいえ、追い出しさえすればひとまず戦略的勝利と言えます。追撃計画についてはまた連絡をします。他に何かあれば、どうぞ」


『了解だ……いや、ダメだな、伝えておく』


「?」


『背後の北東部分のカメラ映像が次々に途切れている。別働隊がオレたちを狙っているぞ。どうぞ』


「……なるほど。これで終わりならばつまらないと思っていたところです。私は迎え撃つことにしましょう。ヒューズさんは基本的には現状維持ですが、カメラ無しでは起爆操作も難しいでしょう。独自判断でそこを出ての戦闘を許可します。その場合、私と合流するように。どうぞ」


『了解! ずっと窓のない部屋にいて鈍ってたところだ。暴れさせてもらうぜ。通信終了!』


「ええ、盛大にお願いします。通信終了」



 ヒューズは元から爆発ジャンキーだ。

 遠目に見ているだけという現状にフラストレーションが貯まっているのは声色で察せられた。



(まあ、派手さは十分。不死者にもそろそろ攻勢にでて貰わないと、VIPたちから『ただの臆病者集団』だと思われかねない。ここらが攻め時なのですが……もう一部隊いるとは。今回は随分と結託者が多い)



 映えの面から考えても、少なくとも三名くらいは脱落させておきたいのは変わらない。

 ベストはヒューズと合流し、不死者複数を引き連れての一群となっての攻勢だ。

 安全圏からの爆破は確かに便利だが、現状でも防ぎ切られているのだから方針変更は必須でもある。



(さて、裏から来る襲撃者の中にも、赤さんの言う最重要ターゲットが混じっていればいいのですが)



 などと、思考を巡らしながらも襲撃者を思い描くことは忘れない。

 この能力を使い続け、扱いにこなれている小黒には、マルチタスクでの能力発動も造作のないことだ。



 盛り上がる反撃をしてほしい。

 この場では異常でしかない欲求を抱きながら、小黒は待つ。


 次に甘美な音色を奏でてくれる、オルゴールの到着を。



↓広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、投稿のモチベーションに繋がります!

さらに『ブックマーク』、『いいね』、『感想』などの応援も、是非よろしくお願いします!

現在、第5章を執筆中。 投稿日は毎週4日で日曜、火曜、木曜、土曜になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ