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対の五人



「……うぅ、油断、したつもりは無かったんだけどねぇ」


「教授さん!? 大丈夫ですか!」



 頭を押さえながら体を起こした教授は、それまでに見たことがないほど顔を青ざめさせていた。

 


「とりあえず、能力の影響は消えたはずだがァ」


「ああ、助かったよ。流石の私も、あと五分も放置されてたら耐え切れたかわからないからね」


「敵の能力の詳細は?」



 サトリからの一言で体を起こした教授は、笑みを消し真面目な顔になる。

 いや、焦燥感に駆られた顔かもしれない。



「あれはだね、五感を消し去る能力だ」


「……五感を?」


「ああ。視覚に聴覚、触覚、味覚なんかまでぜーんぶ消されたよ。人によっては数分と持たずに狂うだろうね」



 どこか他人事のように語っているが、彼女の手足は僅かに震えている。

 表情にはおくびにも出していなくても、相当な恐怖がのしかかったと推察できた。

 五感が消えた世界なんて想像したくもない。



「ともかく、あの黒い女性の能力は私にも防げない! ドレッド君、見かけたらすぐに頼んだよ?」


「任せろよォ。そのためにここにいるんだからなァ」



 体勢は完全に立て直された。

 だが一方で、ドレッドの能力も敵に知られてしまっている。

 時間はそう多くない。


 セナは静かに一人、腰から下げたトランシーバーを睨みつけていた。



(頼りたい場面だが、間に合わないか……?)



 北部に到着次第すぐに来るはずの通信への、期待だけが空回りする。



「セナさんが作ってくれた小火と、私の大気が合わされば、とりあえず敵は入って来れませんね!」


「……投げ込まれる爆弾もまとめて吹き飛ばして貰うとして、ひとまず第一段階は完了、かな?」


「そうだとも諸君! では、ここまでで判明した情報を元に──本命に動いて貰おうか!」



 その声の意図を察したセナは、ちょうど見つめていたトランシーバーを教授へ渡す。

 二度咳払いをした後に、科学の使徒は胸を張りながら通信をオンにした。




~~~~~~~~~~




『こちら教授、どうかねジャンヌ君、準備の方は?』


「そうですね、問題なく。そちらが派手にやってくださっているおかげで、こちらは手薄になっています」



 教授らが突入した入り口とは正反対の場所にある、レインボーモール北東入り口付近。

 それまで姿を見せていなかった不死狩りメンバーが、立体駐車場の影に身を隠していた。


 『ジャンヌ』を班長とし、予知の『ノウン』、液体操作の『ジーニアス』、消音の『ベートーヴェン』、そして能力無効化の『大鼠』の五名チームだ。



『敵はやはり基本的には不死能力者だが、『ものを爆弾に変える』能力者がいる。敵が投げてくる物品、そして不死能力者そのものも爆弾だ! 気を付けて進んでほしい!』


「……なるほど。ですが幸運にも、こちらの戦闘メンバーはおおよそが対処可能です。圧縮してもよし、液体で包んでもよし」


『それは心強い! だがもう一人、恐るべき能力者がいる。『五感を封印する』能力者だ。遠距離から相手の全ての感覚を消し去ってくる、無効化能力者でしか対処はできない』


「それはやっかい極まりないですね。つまり、大鼠さんの目標は──」


「──俺の仕事は、そのやばい奴を叩くことってわけだな!」



 ついに肉弾戦の時が来たと言わんばかりに、喜色満面の筋肉だるまは一人だけ楽観的だ。



「では、我々の目標はその黒い女、でよろしいでしょうか」


『ああ、頼むよ暗殺チーム。そいつの対処が終わったなら、私たちが爆弾魔をしばきにいこう!』


「ええ、そちらは任せます」


『そうそう、道中で監視カメラは破壊していくんだ。進入こそバレるだろうが、おそらく敵の起爆は手動。目を潰した方がずっと危険が減るだろうからね!』


「方針提案、感謝しますわ。それでは、ご武運を」


『こちらの台詞だとも。美味しいところ、頼んだよ!』



 教授との連絡はつつがなく終了した。


 正面突入チームと対をなす、暗殺チーム。

 音を消し、能力を消し、水の刃と遠距離からの圧縮で敵を消す。

 しかも予知能力で、敵の居場所も推測可能だ。

 これ以上に暗殺向きの班分けはないだろう。



「お聞きになったとおりです。敵は不死能力者、爆弾能力者、そして五感を奪う黒い女。優先目標をはき違えず、危険だと判断したらすぐさま引くこと。いいですね?」


「おう!」


「任せてよ」


「了解しました」


「足を引っ張らぬよう努力いたしましょう」



 意思の統一が完了し、大鼠を先頭にして行動を開始した。

 南西一階とは真逆の、北東四階からの進入を目指す。


 立体駐車場には複数の監視カメラが設置されている。

 それがどれほど活かされているかも囮チームが調べてくれたおかげで、悩むことなく破壊を選択できていた。



「次はあそこだね」

「かしこまりました……消音」



 指定したポイントから一定範囲の音を消す消音と、攻撃が見えづらい液体カッターは相性が良い。

 進入の邪魔になる二台を根本から切断するが、落下音は一切響かなかった。



「うん、進入経路を確保したよ」

「わかりました。ですが、付近のカメラはなるべく全て壊すようにしましょう。最低限しか壊さないと、『そこから逃げます』と敵に教えているようなものです」

「わかった。それじゃあ次はあっちね」

「かしこまりました、ジーニアス殿」



 二人が連携してカメラを破壊する最中、それまで黙していたノウンが顔を上げた。



「敵の位置が見えました」


「報告をお願いします」


「はい、十五分後の予知です。黒い女は南西側メインストリートの三階通路、吹き抜けの上に居ます。随伴している人数は二名です」


「結局、囮チームのところまで移動する必要はありそうですね。それ以外の敵の位置と数は?」


「メインストリートに三名……囮班の裏に回り込もうとしているのが二名……巡回しているのも何人か居ますね」


「そこまでわかれば十分でしょう。私も前に出ます。さあ、移動しますよ」


 号令に従い、暗殺チームが動き出す。

 戦局の打破に至るか、それは予知でもわからない。



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