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小町班の皆さん:side幸



「というわけで、ジャンヌ班の新入りちゃんが伝令に来てくれたッスよ!」


「はい! ジャンヌ班から来た『幸』です! えっと、セ……じゃなくて、ジャンヌさんからの伝言を持ってきました!」



 小町班が根城にしているのは、雑居ビル中層にあるオフィスの一室だ。

 なにやら書き込まれている書類、コピー用紙、閉じられた分厚いファイルなどが社員用デスクに積み上がっていて、とてもじゃないが綺麗な印象はない。

 奥のパーテーションで区切られた応接区画で、ソファに座っているメンバーに幸は頭を下げた。



「見たこと無か女なんやが、信用しきるとか? 嘘言うてくる可能性もありそうなもんだが」


「えっ?」



 開口一番に『大納言』の鋭い方言が突き刺さり、



「それに、女は誰しも見えない刃を隠し持っているモノだしねぇ」


「えっえっ」



 同姓の『小町』からは同姓を理由に訝しがられ、



「んーふふふふ。VRに適応し2.5次元が解禁されたオイラは無条件に信じてもいいYo! オイラとデートをスタートしてヒートなんていかが? エスコートしちゃうぜデザートガール!?」


「ひえっ……」



 謎の価値観を持つ小柄な男、『ナッツ』には意味不明なリズムで返された。



「なんでぇ~……? アタシは伝言しにきただけなのにぃ~!」


「いやいやおいおい、俺がちゃーんとイデオ使って確認しましたって! ていうかナッツさんに至っては完全に口説いてるだけじゃないッスか最低ッスよ!」


「最低とか言われても、オイラってば自分に正直なだけだし~? あ、オイラの隣空いてるよウッヘッヘ!」


「キモいから! いい加減にするッスよ!」



 右往左往する幸を中央に、左右から言い合う班員。

 姦しい騒ぎに混じり、大納言の舌打ちが響いた。



「やかましかばい! もうちょっと静かにできんのか?」


「そうそう、まだ幸ちゃんのお返事ラブコールをオイラ受け取っていないんだぜ!」


「うるさくしてんのもだいたいナッツさんのせいでしょうが!」


「あたし、で、伝言んん~~……」


「はぁ、しょうがないわねぇ」



 ため息混じりに頬杖ついて、小町は扇子を開く。



「とりあえず聞いてから判断するから。お嬢ちゃんも、今にもベソかきそうな顔していないでシャンとしな? 女でしょ?」


「え、う、ぐ……は、はい……」



 首を振り、頬を張り、目を見開いて幸はメンツを見回した。

 ポケットからメモ帳を取り出すと、書かれている内容を読み上げる。



「ゴホン……ジャンヌ班は北東方面を捜索中に、北方面担当のクロックマスター班からのSOSを受信しました。えー、現場に急行しましたが、その時にはすでにクロックマスター班は壊滅。えー、現場に一名の不死能力者が残っていたのでこれを撃破しました」


「いや、ちょっと待て。あん班が壊滅やと?」


「大納言さん、話は最後まで聞いてから」



 扇子で口元を隠す小町の雰囲気の圧は強く、大納言は何か言いたそうに口をもごもごさせていたが、すぐに押し黙った。

 見届けてから、小町は続きを促すように頷いてみせる。



「えっと、クロックマスター班を壊滅させた相手の情報は不明ですが、不死能力者が居たことから仮想敵である不死のチームが北方に居る可能性が高いです。あとは、クロックマスター班は無効化能力者こそ居ないもののメンバーの質が最も高い班であったことから考えて、増援の必要があります」


「……ならなんで南ん小町班なんや。南東担当の軍曹班でもよかやろ」



 再びジロリと小町の睨みに晒されるが、口を閉じることが出来ない性分らしい。



「それは……能力のバランスが良いことと、あとは天下一さんの能力が必要とのことです!」


「そこで俺ッスか~。いやー参っちゃうな!」



 などと言いつつ笑顔の天下一に、大納言が苛立たしそうに顔を歪めた。



「もしも、不死ではない未知の強敵にクロックマスター班が敗れていた場合、その能力を確認する必要が出てきます。そうなったとき、一番客観的な情報源になってくれるのが天下一さんだから……らしいです! あ、報告は以上です!」



 報告の終わりにきちっと頭を下げた幸に、小町は扇子を閉じて笑みを浮かべる。

 幸の隣に立っていた天下一が、引き継ぐように話を続けた。



「……ってことらしいッスよ。俺としては力になりたいッスけどね。ここで張ってても見つけられなきゃ無駄骨だし」


「ふーん? オイラ的にはどっちでもいいなー! ここで見張って探すのもアリだけどさー。小町の姐さんくらいしか女っ気ないしー? 小町の姐さんは人としちゃ頼りになるけど好みじゃないしー!」


「次に女の前でそういうこと言ったら引っこ抜くからね」


「何を!?」



 顎が外れかねない驚愕顔を披露するナッツは捨て置かれ、視線は大納言へ移った。



「確か教授斑にも予知能力者がおったはず。そいつはどげんした」


「え? あっちょっと待って……」



 一度閉じたノートを開き直し、幸は該当個所を指でなぞりながら舌を回す。



「えー、教授斑は北西、ジャンヌ班が北東を担当することで話は纏まっています。そういった能力がないジャンヌ班にこそ、天下一さんのイデオが必要、です!」


「……なるほどな。そげなことなら反対する理由は無かね。虱潰しに捜索やら疲れそうやったしな」



 大納言は腕を組んで目を閉じたが、賛成の意に幸は一段階笑顔になった。



「わぁ。あ、じゃあ……小町、班長は?」


「呼びやすいようにして構わないよ」



 報告を終えた幸は優しげな声色に反応してはにかむ。

 小町は立ち上がると、威勢良く声を張り上げた。



「北に向かうのは私も賛成だね。班長として、北へ向かいジャンヌ班と合流する方針で決定するよ」


「そう来なくちゃ! 流石は小町さんッスね!」


「次の出会いこそ最高のモノになるってオイラは信じてるわけよ」


「黙っとけ、気持ち悪かっちゃん変態野郎」


「クックさんもそれでいいね?」



 班員の総意が固まったタイミングで、少し離れた席に座り傍観していたクックへと声がかけられる。



「これは小町班の会議だけれど、他班の意見を入れていいのかな?」


「んなこたぁ気にすることねえッスよ! クックさんだって不死狩りの仲間──」


「天下一君は少し静かにしてて」


「え!? う、はい……」



 仲間やら結束やらへと話を持って行く天下一は黙らされ、小町はクックへ鋭い視線を向けた。



 

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