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ジャンヌ班の顔合わせ①


「えぇー……いったい何かなこの豪華な料理達は!?」



 戻ってきた教授の開口一番は素の驚愕となった。

 

 広場の中央には折りたたみ式の長テーブルが並べられ、和洋折衷さまざまな料理が所狭しと並んでいる。

 料理を取り分けたプレートを手に、六つ用意された円卓へと持ち帰っての立食形式だ。



「ああ、決起集会みたいなものだからね。腹が減っては戦ができぬというし。一時間じゃたいしたものはできなかったけど、よければ食べていってね」



 肥満体型のプレイヤー『クック』は、どこから引っ張り出してきたのか白い調理着とコック帽を身につけて料理を並べていた。

 素直に考えれば、彼の持つ『ゴミを食材に変える能力』を活用しての調理ということだろう。

 もしかしたら現実ではプロの料理人なのかもしれない。



「さあ、冷める前にどうぞ。待機組はもう食べ始めているよー」


「いやいや早いな!? 主役を待とうという気持ちはないのかね諸君!」


「遅れてきた主賓に合わせていたら料理が冷めちゃうよ」


「はーっはっはっはっは! 全くもってその通り!」



 すでに班分けは周知されているようで、食事も自然とメンバーで分かれていた。

 匂いに喧噪にと周囲に目立って仕方ないが、かといってこれだけの人数に喧嘩を売る外野というのもそうはいないだろう。

 教授の最初の演説を聞いていればなおさらだ。



「それでは、私は自分の班の元へ向かいますので」


「了解したよシスタージャンヌ! それではまた後でだ!」



 高笑いしながら去っていく白衣の少女を見送ると、ジャンヌもまた己が指揮する班メンバーの元へと向かった。

 余所を見れば表面上は誰しもが笑顔で、満足げに舌鼓を打っている。



「こちらが私の班のテーブル、でよろしいですか?」



 他班と比べると、ジャンヌが率いることになる者達は談笑とまではいかず、物静かだ。


 まず真っ先に、タキシード姿の老紳士が深々と会釈をしてみせた。

 食事中のためか山高帽は邪魔にならないテーブル端に置かれている。



「お待ちしておりました、聖女殿。私は『ベートーヴェン』と申します。二度目の自己紹介となりますが、お見知り置きを」


「はい、ジャンヌでございます。貴方の音を消す力は敵の虚を突き、味方の隙を無くすことでしょう。頼りにさせて貰いますね」


「そう言っていただけると、私も力の振るいがいがあるというもの。精一杯努めましょう」



 どこまでも慇懃な紳士『ベートーヴェン』。

 物腰柔らかで礼儀を尊ぶ言動は、腹の内を読みづらい。

 能力共有の時もだが、細い糸目は見開かれず常時薄い笑顔が張り付いている。



「では次は私だな」



 ベートーヴェンの奥にいた黒いスーツの男は、赤と黄色のストライプネクタイを直しながら一礼する。



「図らずも同じ能力と判明した、『圧縮』使いの『サトリ』だ。捕縛担当として動きを封じ、確実に無効化能力への布石を用意しよう」


「……不死や無効化と違い、圧縮が被るというのは珍しく、運命的な何かを感じます。共に不死能力者への対処を行っていきましょう」



 会釈で返すジャンヌに対し、紳士然とした態度で返す。

 サトリは握手を求めるかのように右手を差し出すので、聖女は一瞬の間をおいてから両手で応えた。



「次は、僕かな」



 サトリの向かいに居たのは、黒のロングパンツに千鳥柄のシャツ、空色と白のストライプショートタイを身に着けた中性的な見た目のプレイヤー。



「プレイヤーネームは『セナ』。『小火』のイデオを使える。遠距離への牽制が主な役目になるかな。できる限りは頑張るからよろしく」


「圧縮能力が二人居ますので、セナさんには後詰めを担当して貰うことになるかと思われます。都市部なのでガス引火などに気をつけつつ、時にはそれを敵の排除にも使っていってください」


「ん、了解」



 素っ気ない態度のセナに微笑みかけるジャンヌ。


 最後に、セナの隣で大量の料理を一心不乱に食べる男へと視線を向けた。

 青デニムに黒いシャツというありふれたファッションを、盛り上がった筋肉がパンパンに膨らませている。

 筋骨隆々という言葉が似合いすぎる肉体に、無精髭と三白眼という組み合わせがどうしても見た目の印象を鋭くしていた。



「んぐ、んが、もご……お? おえふぁ?」


「の、飲み込んでからでいいですから」


「んぐごごご……ぶふぁ! あーすまんな! 汚ねぇところ見せたわ!」



 ナプキンで豪快に口まわりをぬぐい取り、男は笑顔を見せる。

 見た目の雰囲気が一変し、どこか人懐っこく犬歯を露わにした。



「俺はプレイヤーNo.1、名前は『大鼠』だ! よろしくな聖女サマ」


「……自己紹介のときから疑問だったのですが、タイソとはどう書くのですか?」


「ああ、大きなネズミで大鼠だ」



 なぜそんな名前にしたのかとジャンヌはわずかに首を傾げるが、すぐに気を取り直して笑顔を湛える。



「貴方の無効化能力が全ての鍵です。その時が来たら能力での援護を──」


「あー、悪いがちょっと待て。先に言っておきたいことがある」



 言葉を遮り首を振るその様子に、メンバーの視線が自然と大鼠へ集中した。


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