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検討会



「ああくそ、話の途中だったってのによぉぉお」


「はい手を動かす。邪魔ならそこのサービスワゴンでも使って調理場へ持って行ってください」


「とりあえず歩けるようになりゃいいだろ今は……」



 席を立ち、ぶつくさと作業を始めた赤羽を後目に、青城は両手で抱えていた資料を自分のデスクにドサリと置いた。



「ところで、何の話をしていたのですか?」


「ああ。クックから不可抗力で情報が漏れそうな展開になってきてしまってね」


「……別に、中で漏れたからと言ってどうという事もないのでは? アレがある限りゲーム外への情報漏洩は基本的にあり得ません」



 青城は肩を竦めながら興味薄だ。

 仮に外部に秘密が漏れるとすれば、それはVIP客の口から以外はあり得ない。

 もちろん、相互利益が確保されており口を割らない者だけにしかVIPの地位は与えていないが、人の口に戸は立てられないという言葉もある。



「言いたいことは当然わかるよ。ただ、中で知られるというイレギュラー自体が初のケースだ。それに赤羽は、情報を得たプレイヤーが優勝することを危惧しているみたいだからね」


「優勝者だろうが消してしまえば良いことなのでは?」


「優勝商品でそれ自体を妨害されるかも知れないだろ? そもそも、優勝者だろうと消す、なんて最後の手段じゃないか」


「……そうですね。今回はVIPからも参加者が出ている以上、そこの透明性は維持しないと信用問題になりますか」


「まあ、その辺はまだ危惧の段階だよ。それより萌黄の仕事は終わったのかい?」



 この場には居ない幹部の名前がまろびでた。

 ゲームが始まってから彼女の負担は倍々に増え続けるばかりであり、緑野の言う仕事が落ち着けば仮眠タイムが予定されている。



「ええ、作戦は無事に成功しました。ホワイトハッカーだろうがなんだろうが、政府の犬ごときに萌黄の壁は破れませんよ」


「つまり?」


「ハッキングは完全にシャットアウト。証拠の一つも漏らしていない、とのことです」


「よろしい。これでMr.ホワイトにも良い報告が上げられそうだ」


「そういえば、参加者に潜り込んでいるネズミは放っておいていいのか、との確認もプログラミングチームから上がってきています。そのあたりはどのようにお考えですか?」


「現状はこのままでいい。まあ、他のプレイヤーなら抱き込む選択肢もあるけど、彼だけは難しいからね。本当に優勝されそうになったら、一回くらいゲームの()()()が起こることになる」


「……了解しました。萌黄にも通達しておきます」


「頼むよ」



 青城が萌黄へと通信を始めた頃になって、ようやく赤羽が着席する。

 掃除というにはあまりにもお粗末な、ただ瓶類を壁際にどかしただけの応急処置に過ぎなかったが。



「たーく、終わった後でいいだろうがよぉぉおお……」


「赤羽、また青城を怒らせるつもりかい?」


「やーーーだよ、んどくせぇ。それよりあれだ、今の不死狩り内紛についてだろぉ!? 結局どうしてサトリ……No.89が負けたのかの話だよぉ!」


「検討の途中だったね」



 緑野はモニターを切り替え、録画データを引っ張り出す。

 場面は奇襲が起こる直前。

 下の階の会議室に籠もっていたサトリたちと、距離のあるビルの屋上に陣取っていたセナたちが三次元的に表示される。



「この場面ではNo.27……数が多いしプレイヤー名にするか。プレイヤー『セナ』たちの最大の障害は、もちろん全知のイデオの使い手『ノウン』だった」


「敵の数からその状態、今何をしているか、どこにいるか、果てはイデオの詳細までなんでもわかるからなぁぁあ! そのうえ数の有利まで取られたら、今度は追われる側だぁ! 今回の戦いは、ノウンたちが軍曹班と合流するまでの時間稼ぎが出きるか、できないかの勝負だったわけだなぁ!」


「そこでセナは、ノウンに知られることを前提の作戦を二つ立てたんだろう。一つはもちろん、ノウンの危機感をあおって逃走経路へ追い立てること。もう一つはわかるかい?」


「ハッ! 俺らはステータス丸見えなんだぜぇぇえ? わかるに決まってるだろが! 天下一をわざと『洗脳』してたことだろぉぉおお!?」


「そう。ノウンの情報は()()()()()()()



 なんといっても全てを知れる力なのだから、誤情報なんて混じりようがない。

 その固定観念につけ込まれない限りは。



「だからサトリたちは、天下一が洗脳で無理矢理戦力にされているのだと思いこんでしまったわけだ。フルコピーという汎用性の高いイデオで殺しにきたのだと。事実、それでノウンは倒されてしまっているわけだしね」


「可愛げのねぇ戦略だがよぉぉお……。サトリには読心があったじゃねえかよぉ! となればあれだ、軍曹班と合流した後! セナはわざわざ挑発して注意を引きやがった。そのせいで読心を使われ、鷹による奇襲は叶わず終いじゃねえか!」


「あのあたりは一瞬だったから、ログを見れていないのはわかるけどね。あれが最後の決め手であり、王手だった。……セナ側には綱渡りでもあったんだけれどもね」



 緑野がデータを打ち込めば、立体図面も最終の場面へと置き換わる。

 上を取ったセナたちと、それを見上げるサトリたちが立体映像でずらりと並んだ。



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