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賽は投げられた



 ムードメーカーが離れたことで、室内の空気が僅かに淀む。



「……ところで、なんですけどノウンさん」


「なんでしょうか?」


「他の不死狩りの生き残り……例えば小町さんとかの安否は調べたんですか?」


「まあ、やってはみました。この場に居ない不死狩りで今も生き残っていそうなのは、小町、アルモアダ、天下一、大鼠、セナ、幸……あとは軍曹班だけですね」


「小町さんたちとの合流もしましょうよ。戦力は多い方がいいんでしょ?」


「余裕があれば、ですよ。まずは軍曹班からです。それに、動き回って探すよりここで待つ方が合流できる確率も高いというのはわかるでしょう?」


「……そうですね」



 野薔薇はどこかそわついていように見える。

 まだ割り切れていないのか、不安でも感じているのか。

 少なくとも無策で散っていった野良プレイヤーよりは万倍良いポジションに収まっているはずなのだが。



「それに、合流したい相手より先に、合流したくない相手が現れるかもしれませんよ」


「はい?」


「……セナ君たちが居るのかい?」



 ここまで口を挟まず黙っていたクックが、すぐに立ち上がり窓際へと移動する。

 この場の面々の視線が鋭く細まった。



「ここからはそれなりに離れている、ビルの屋上付近です。セナ、大鼠、天下一、そして幸。揃ってじっとしていますよ」



 さきほどのサーチに引っかかったのは、軍曹班だけではない。

 この集合場所が見える位置、すなわち北東方面のビルにセナたち四名が。

 それとは別に、北西の空には変身能力者が飛んでおり、透明能力者が南東方面にある隣のビルに陣取っていた。

 到着前に取ったサーチでも変身能力者はセナたちの近くに居たようだし、おおかたセナたちを尾行しているといったところか。



「方角は? 警戒した方がいいのかい?」


「予知頼りの不確定なものではありますが、方角は北東ですね」


「そっち方面はだいたい倒壊してるから……この部屋って丸見えってことじゃないか!」


「落ち着いてくださいクックさん。彼らのビルとはゆうに三十メートルほどの距離の開きがあります。顔を出して見られるくらいなら、私は見張る必要など無いと思いますよ」


「……どうしてですか? セナたちだって合流するために向かっているだけかもしれないじゃないですか!」


「私の予知では、ビルの上から双眼鏡でこの場所を監視するセナが見えました。もちろん、ここが別のプレイヤーに確保されている可能性を考えて、と考えることもできますが、これだけで楽観的な判断はできない。でしょう?」


「それは……」


「すでにこちらを敵視していると考えた方がいい。どちらにせよ、次に肉薄したら倒す相手なことに変わりはないのですから」



 そういうことにしておいた。

 サトリと大鼠の交渉が決裂した時点で、あちらは敵対を決めた腹積もりだろう。

 とはいえこちらだって、教授と野薔薇は引き込み済み。

 直接戦闘では分があり、さらに言えばクックのおかげで無限の籠城も可能だ。

 唯一の懸念点は、洗脳を使用されたときに対処できないというものだが……。



(偵察まがいの事をしているのは、もちろん軍曹班の無効化能力者が合流しているかを見極めるためでしょう。彼らが到着しているのならあちらの勝ち目は無くなる。定期的に無効化を使用するだけで完封です)



 もう一度、イデオを使用する。

 調査はセナらの今の行動について以外に、セナのイデオの使用状況も調べておくことにする。

 四名は現状、屋上から動く気配がない。

 ならば、軍曹班との合流後に粛々と囲んで潰すまでだ。


 どちらかと言えば、南東……隣のビル付近でうろちょろしている透明能力者の方が気になる。

 距離も近く、いつの間にか同じ高さの三階まで登ってきていた。



(窓からこちらを監視するつもり、でしょうね。捕まらないギリギリを測っているのでしょうか?)

 


 痛い目には遭わせたから、下手に暗殺しにくることはないはずだが。



「軽く予知してみました。どうも、()()()()()()()()()()()ようですね」


「ほう、そこに使ってきたか」


「そのようです。フルコピーは警戒すべき能力ですから、やはり先に戦力を補強したいのですが……」



 部屋中の視線が白衣の少女の背中へと向かった。

 ちょうど話も終わったようで、教授がスイッチを切る。



「──よし、彼らはすぐこちらに合流すると言っている。この距離なら十五分程度で到着するだろうねぇ!」


「ああ、それは良いですね。再会を祝して今晩はごちそうなどいかがでしょうクックさん」


「いいね。まあ、一人で厨房は怖いから合流後に準備かな。少し待たせることにはなっちゃうけど」



 軽快な反応を見せるクックに対し、サトリは沈黙したきりだ。



「どうしましたサトリさん?」


「いやなに、ヌルいなと思っただけだ」


「……私達が浮かれすぎだと?」


「それもあるが、気になったのはセナの方だ。あいつのヌルさに違和感を感じている」


「というと?」


「少なくとも、軍曹班と合流されたら勝ち目が無くなるのは火を見るよりも明らかだ。となれば、私があいつの立場なら──」



 パリィン!



 突如、何かが割れる音。

 その場の全員が見渡すが、この部屋ではない。

 おそらくは隣室の窓──。



「──今が最後のチャンスということだ。警戒しろ、攻撃を受けているぞ!」



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