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最後のピース



「……わかった、手伝おう。最短かつ安全なルートも案内する。もっとも、道路の見える範囲での安全ではあるが」


「いいよもちろん、屋内で奇襲を受けるっていうのも危険だしね。外を使えるなら一番だよ」


「具体的なサトリ襲撃計画については、黒い女の件が終わってからだな」


「そうだね。その時は軽食でも摘みながら話そうか?」


「こちらにその時間があれば、な」



 軽く返すと、燕は目を細めてから翼を広げ、割れた窓から空へと飛び出していった。

 思ったよりも先を見据えた話ができる相手だったので、ひとまず安心しセナは胸をなで下ろす。



「……んじゃあ、俺の出番か」


「ああ。流石にタイマンじゃなきゃ嫌なんて言わないよね?」


「馬鹿言うな、オフモードは終わりだって言っただろ? ボスの指示に従うさ」



 どこかバツが悪そうに苦笑する大鼠。

 対して幸はノートを広げて何かを書き記していた。



「幸、それは?」


「ん? えっとね、スケアクロウさんのこと、メモしておかなきゃなって」


「作戦が終わってからでもいいんじゃない?」


「だーめ! こういうのはすぐ書かなきゃなんだから……」



 もしかして、ファントムの一件を気にしているのだろうか。

 それで解決できることかはわからないまでも、やる気があるなら止めることはないだろう。



「なら、続きはエレベーターの中でね。行くよ」


「おっけー!」



 ピースは揃った。

 神はまだセナを見捨ててはいない。


 登ってきたばかりのエレベーターへと戻り、戦場へと降りていく。



(情報屋、黒い女、ミスラ一派、サトリたちの狙い、大樹への集合……そして、推測できるノウンの能力の正体)



 この戦場に散らばるピースをかき集めれば、例え最悪のケースに陥っても勝利できる筋道はあるはずだ。



(ミスラとかいう無視できない脅威が現れた以上、敵が増える前に決着を狙うしかない)



 作戦目標は二つ。

 サトリ・ノウンの抹殺、そしてクックの確保。

 最後のピースが揃う予感を感じながら、セナは僅かに口角を持ち上げた。



(サトリ、お前との因縁もここまでだ)



~~~~~~~~~~



 空を舞う燕を捕捉し続けるのは、なるほど確かに難しい。

 よくよく考えてみれば、今までもどこかで目に入っていたのかもしれないが、違和感を覚えることはできなかった。

 人間以外の動物と今まで出会ったことがない、ということを差し引いてもだ。


 空のナビゲートは思っていたより親切で、ビル群の上を巡回後、地上すれすれまで降りてきて誘導してくれる。

 元が人間だとは思えない飛行練度の高さと言えた。



「走るより、はぁ、飛ぶ方が、楽そう……はぁ!」


「ふっ、ふっ、文句は、言わないの。あれだって、疲れない訳じゃ、ないん、だろうし」


「おーい女子二人、息上がってるぞ大丈夫か?」


「よくは、ないけど、ふっ、走って、急げる、チャンスなんて、ないから、ね!」


「わき腹、いたく、なってきたー!」



 セナの「走るよ」の一言と共に始まった中距離走。

 情報屋は直線距離二百メートルと言い、確かにそれは嘘ではないのだろうが、立ち並ぶビル群が迂回を余儀なくさせてくる。

 燕の軽やかさに羨望を抱きつつも、妬みは飲み込んでその背を追うことに集中するしかない。


 大型電気量販店の角まで来たところで、燕が地面に降り立つ。

 急ブレーキをかけるかたちで先頭の幸が停止し、後続がそれに倣った。



「ここで息を整えろ」


「はぁ、はぁ……この先に……?」


「ああ。見てみるがいい」



 ひぃひぃ言いながら膝で体を支えている幸の隣を抜け、大通りへと顔を覗かせる。



「ハハハハハ……アハハハハハッ」



 そこには確かに、黒い女──ブラックが居た。

 倒れ伏した男性プレイヤーに向かって、遠心力をかけた蹴りをたたき込み、その悶絶具合に狂笑をあげている。

 男性プレイヤーはもう死んでいるのか、それとも痛みを感じていないのか、くの字の態勢でされるがままに転がっては薄いうめき声を上げていた。



「あれ、もう動かないんですか? これだけ屈強そうな見た目して、虚仮(こけ)(おど)しもいいところですね」



 吐き捨てるような罵倒と共に、女の顔から感情が一気に抜けていく。

 吹きかけられる唾の一滴。

 無表情の無感情へと戻ると、もう男には目もくれずに、ゆっくりと徒歩での移動を開始した。



「見ての通りの凶暴性だ、あの女は狂っている。話が通じる相手じゃないぞ」


「確かにそうだね……()()()()


「?」


「話は後。僕が解除してもいいんだけど、音はない方が良いからね。大鼠、頼んだ」


「よくわからねえが、了解!」



 余裕の表情で待機していた大男が、一歩前に出てセナの上から顔を出した。

 しっかりと目視し、そのスーツの背に向かいイデオを使用する。



「能力無効化、発動だ」



 すると、同時に女がその場に倒れた。



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